27、戦争へ
「それは……本当なのか」
「……はい、確かに聞きました」
そこは王城の謁見の間、両端の貴族は騎士二名の報告を聞いて顔を真っ青にしている。報告と言うのは善神の神殿、最深部での出来事である。
貴族たちの中では騎士が「予言など無かった」と、言ってオーグを納得させるつもりだったのだが、実際に受けた報告は「魔王が存在する」という予想を大きく裏切るものだった。
向かわせた騎士達はオーグの息が全くかかっていない、言わば『貴族側の人間』だったので貴族たちが困るような嘘の報告をするはずもない。
「そうか! やはり魔王がいるんだぶ!」
騎士の報告を聞いて唯一、喜びの声を上げるオーグ。ここで「魔王は本当は居なくて、騎士が嘘を付いている」と言っても馬の耳に念仏だろう、と察し今度、どう対策をするかに思考を切り替える。
「そうなれば、魔族領に向かう準備を整えるんだぶ! 魔王を匿えば戦争をすると宣戦布告する!」
魔王は魔族と違い、平和主義ではない。魔王とは邪神に選ばれた生物が加護により進化したものだ。邪神は人族を嫌っており、幾度となく戦争を仕掛けてきた。
それと同時に魔王には『魔族を服従させる能力』が必ず備え付けられている。平和主義な魔族を洗脳し操ることも出来るという話なのだ。
そのため、魔王が存在してるのならば本当に戦争を仕掛けられる前に仕掛けたほうが有利な状況を作り出せるかもしれないのだ。魔族は強い、しかし戦争の準備が出来ていない状況ならばもしかしたら勝てるかも……そう思っている貴族も少なからずいた。
貴族たちはすぐにその考えに至る。しかしその時だった―――
「皆の者!」
突然、謁見の間の扉が開かれ、ロイドが現れる。
「ぶひ? ロイドよ、どうした」
「父上、話は聞きました。 魔王討伐をなさるそうで」
ロイドは明らかに止めるなら今だぞ、と威圧を出しながら問いかける。
「そうぶひよ、なんだ? 参加したいのぶ?」
そんな威圧など気付かずオーグはロイドに魔王討伐に参加するのか問いかける、傍から見ればオーグがロイドをおちょくっているようにしか見えないだろう。
仮にも王族の一人であるロイドを危険な魔王討伐に参加させるなど、まともな考え方ではない。けれど普段のオーグを知っているロイドは本気で言っていると分かっている。
「いえ、そうではありません。 ですが魔王は何もしていない所か、表舞台にすら出てきていません。 もしかすると魔族と同じように平和主義なのかもしれませんよ?」
確かに魔王だからと言って必ず人類の敵を言う訳ではない。中には平和主義の魔王もいるかもしれないのだ。
もし平和主義なのだとしたら、戦争もする必要が無く理にかなっているのだ。
「……ロイド」
「はい」
謁見の間に数秒の沈黙に支配される。けれどその数秒は貴族たちからしたら重く長い時間だった。
何故ならここでオーグが納得しなければ、貴族たちにもう抑えることは出来ない。女王が死んだ時から貴族たちにとってこういう状況ではロイドが最後の頼みの綱だったのだ。
そして短くも長く感じた時間が過ぎ、オーグが口を開く。貴族たちの視線はオーグの口元に自然と寄せられる。
そしてオーグが放った言葉は―――
「お前、魔王に心を売ったのか! ひっ捕らえろ! この者は反逆者だ!」
貴族たち、いや、人類を絶望へ追い込む言葉だった。ロイドは半分予想していたのか、抵抗せずに騎士と共に牢屋へと向かった……
―――数日後、ロイドは牢屋から姿を消していた。どこに消えたかは貴族たちには見当もつかなかった。そして王城に努めている騎士や使用人が全員ロイドの協力者だということも、知ることは無い……
これで三章は終わりかな……?




