25、不安
新生活のためバタバタしてました。申し訳ございません。
日常の崩壊、それは予兆さえも見せずやって来る。
崩れた日常の中で人は何を思うのか、そしてその感情は何処へ向かうのか…
◇
王立第一学園高等部、セツナはいつものようにアリシアとティア…とはおらず、一人で登校していた。
アリシアとティアは王城での用事が長引いているらしく、寮にも帰っていない。なので、セツナはルナと登校しているのだが…
「聞いたか?日本の方で戦争が終わったらしいぜ?」
「聞いた聞いた、和平だったっけ?外国はかなり被害が出てたらしいじゃん」
「日本に帰ることが出来るらしいけど、俺は異世界にしか興味ないな~」
異世界に避難していた日本人のほとんどが【日本の戦争の終結】について話しているのだ。
異世界を巡った戦争が終わり、日本に帰ることも出来るとのことであり、どちらを選ぶか話し合っているようなのだが、ほとんどの日本人(主に学生)は異世界にいることを決めたようであった。
『セツナはどっちに行くの?』
「まだ、決めてないんだ」
セツナは日本に戻るか、異世界に留まるか、決心がついていなかった。それには理由があった。
「日本で、母さんに会いに行きたい…」
『そうだね、ミライさんもセツナに会えたら喜ぶよ!』「でも」
「それ以上にルナ姉と、この世界を歩いてみたい」
その言葉はセツナの純粋な気持ちだった。特に意味は無く、純粋にルナといたいという気持の表れだった…のだが。
『セ、セツナ!? 私達まだ子供だし、そう言う話は』「もちろん、ティアやアリシアもな」
ルナがセツナの言葉に勘違いをして慌てるが、セツナの何食わぬ顔での補足により自分の誤解だと気付き顔を真っ赤にして俯いてしまう。
「どうしたんだ? ルナ姉」
『……なんでも、ない』
それからしばらく、セツナの顔を見ることが出来なかったルナだった。
◇
時を同じくして王城ではとある会議が行われていた。その会議は一夜明けても一向に収まりが着かず、貴族たちも頭を悩ませていた。そして今現在も―――
「ですから! それは何度も言っていますように!」
「五月蠅い! 国王の僕が言っているんだぞ!? お前は臣下だろうが! 従えよな!」
「臣下だからこそ、王の間違いを正すのです! どうか考えを改めください!」
「五月蠅い五月蠅い!」
話は国王―――オーグと貴族たちの平行線となっていた。オーグは何を言っても五月蠅いと喚き散らし自分の意見を通そうとする。
それに反発するように貴族たちはオーグを説得しようと試みる、普段はオーグがそんなに馬鹿なことを言わない限り貴族たちは黙っているのだが今回の議題ではそうはいかなかった。
「魔族と戦争など、意味がないでしょう!」
そう、オーグは貴族たちを王城に集めると突然「魔族と戦争する」と言い出したのだ。魔族は強いが平和的、絶対に手を出してはいけない存在、それは国政に携わっている者ならば誰でも知っている暗黙の了解だった。
そんな魔族相手に戦争など、阿呆の言うことだった。しかし国王であるオーグにそんなことを言えば首が飛びかねない。現在は一夜明け話がヒートアップしていることもあり貴族も苛立ちを隠すことを忘れるほどだ。その証拠にオーグに向かってかなり強気な発言をしている。
「魔王が現れたのだぞ!」
「その魔王だって本当に現れたかすら確認できていません!」
そんな会話を繰り返していく中、ティアとアリシアは遠目からその会話を見て溜息を吐く。
「……ティア、どうしよう」
「大丈夫よ、本当に魔王が出ない限りは、何も起きたりしないわ」
「そう、だよね」
余裕そうなティアとは反面、アリシアは納得しつつも不安げな表情を見せる。
「魔物が活性化しているではないか! ユニーク個体も出ていたのだぞ!?」
「ですからそれは偶然で……」
「報告では他にもユニーク個体が確認されたところがあったそうじゃないか!」
「…………」
貴族は珍しくまともなことを言うオーグについに反論できなくなる、確かにユニーク個体は十年に一度しか現れないと言われるぐらいの存在、それが各地で確認されるとなると流石に偶然より必然を疑わなくてはならなくなるのだ。
「しかし……魔王の居場所は分かるのですか?」
「魔族量に向かえば済む話であろうが」
「そうですが……友好関係が何もない国に使者を向かわせても、警戒されるだけかと……」
「警戒などさせておけ、こちらは魔王がいるかを知りたいだけなのだからな」
「…………」
「よし、魔族領に暗部の者を送れ」
「……ですが」
「それ以上、無駄口を叩けばお前から爵位を剥奪する」
「っ!」
オーグからその言葉が出てしまうと、もう何も出来なくなる。そのため貴族は従うしかなかった。
「…………魔王、か」
「……本当にどうなるのかな」
ティアとアリシアは不安そうに呟いた、この先に何が起きるか全く予想が着かない。そんな解決しようのない悩みを胸にしまって……
この後、二人は後悔することになるとは……微塵も考えずに不安を飲み込んでしまったのだった。




