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22、ユニーク個体

溜め書きが消えてきました…そろそろ不定期化します

(セツナ君…無事でいてっ!)


ティアが単独で森の中心部に向かい始めてかなりの時間が経った。ティアの中には様々な負の感情が渦巻いていた。


「見えたっ!」


ティアは目的の洞窟を発見し、立ち止まる。騎士の死体が転がっていることと、ゴブリンの上位種の死体が転がっていることからの警戒の動きだ。


「これは……」

『騎士はゴブリンに殺されたようじゃが、ゴブリンは皆、首が切断されてるのう…』


騎士はゴブリンに殺された、しかしティアは死んだ騎士よりも首が切断されているゴブリンを見て最悪の事態が起きたと感じ。洞窟に入る、ゴブリンの殺され方を見て既にセツナが洞窟に入っていると悟ったからである。


♢♢♢


「アイツが騎士を殺したみたいだな」

『そうっぽいね~』


その頃、洞窟を進んでいたセツナ達の目の前には…


「オマエ、ガ、我ガ、配下タチ、ヲ、コロシタノカ?」


皮膚が黒い巨大なゴブリンがいた。左手には頭を握り潰された騎士の死体が引きずられている。

そして今、明らかに目の前のゴブリンが言葉を発したのだ、片言で聴きづらい部分もあるのだが、ゴブリンが人の言葉を話す時点で少し頭が回るゴブリン程度とはレベルが違うのだ。

セツナはナイフを構えながら突然の強敵に息を呑む。


「あぁ、だとしたら俺を殺すか?」

「………ヤレ」


目の前の黒ゴブリンが指示を出すと後ろで控えていたゴブリンの上位種が黒ゴブリンの前に出る。推定でゴブリンソルジャー、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジがそれぞれ50体はいる。

そしてゴブリンアーチャーとゴブリンメイジが一斉に弓矢と魔法を放つ。


「ルナ姉」

『えいっ』


ルナはセツナの前に立つと茨が壁となり現れ攻撃を弾く。これは【黒薔薇】の能力の一つである。【黒薔薇の庭園】はルナを中心として支配領域にする能力、そして現在使った能力は意図した場所に黒薔薇を出現させる力である。


「グ?」

「死ね」


ゴブリンが突然現れた茨の壁に驚いている間にセツナは瞬間移動を使い、ゴブリン達の目の前に現れる。ゴブリンが何が起きたか理解しようとする頃にはもう時遅しである。


ザシュッ


一体のゴブリンの首が落ちたことを合図に一気に戦場と化す、ゴブリンアーチャーとゴブリンメイジが後方へ下がりゴブリンソルジャーが前に出ようとする。

しかしその過程でもセツナは逃さない。近距離戦が苦手なゴブリンアーチャーとゴブリンメイジを次々と屠っていく。

突然のこともあり、ゴブリン達は混乱しているため上手く動けていない様である。

結果、ゴブリンアーチャーとゴブリンメイジの数を半分以上を減らしていた。


「ようやく来たか」


ゴブリンソルジャーを屠り、周りのゴブリンが一斉に離れたところでセツナはそう言い捨てる。

セツナが振り返るとそこには先ほどの黒ゴブリンがいた。部下のゴブリンを殺されこの上なく怒っていた。


「キザマ、絶対、ゴロズ」

「やってみろ」


セツナの言葉に黒ゴブリンは片手を上げて騎士の死体を見せた。騎士の足を掴んでセツナに近付いてくる。


「人間、仲間、コロセナイ、オマエ、マケル」


黒ゴブリンは騎士を左手に、騎士から奪ったのであろう剣を右手に襲い掛かってきた。

セツナは黒玉(霧)を使い、体力回復と視界を悪くさせようとする。

視界が悪くなり、黒ゴブリンはその場で立ち止まる。セツナはそれを好機と思い、黒ゴブリンに向っていく。

セツナは黒ゴブリンの分厚い首の皮を切り落とすのは難しいと判断して腕から切り落とすことにした。しかし―――


キンッ


「なっ!」

「我ラ、ヲ、舐メテモラッテハ、困ル」


セツナは黒ゴブリンの腕を切り落としたはずだった。しかし黒ゴブリンは視界が悪い中で見えているかのようにセツナのナイフを剣で受け止めた。

セツナは瞬時に距離を取り、何故止められたかすぐに理解する。


「……特性か」


魔物には種族によって特性がある。物理的攻撃に耐性を持つ魔物、魔法の攻撃に耐性を持つ魔物、そしてゴブリンの特性は…


『暗視、だね』

「ルナ姉、雑魚を頼む」

『うん!お姉ちゃん、頑張るね!』


暗視があるということはゴブリンの上位種の不意打ちを受けることも考えられるのだ。


「暗闇がダメなら、アレが出来るかもしれないな」


セツナは黒ゴブリンを相手に一つ、実験をすることにした。本来、未知の魔物を相手に実験など正気の沙汰ではないのだが、セツナがそんなことを知る訳も無く、実行に移そうとしていた。


「ギギッ、人間、愚カ」


黒ゴブリンは下品な笑みを浮かべ完全に勝った気でいた。目の前の人間―――セツナは暗闇からの攻撃だけ、そしてそれも防ぐことが出来る。

そして黒ゴブリンには騎士の死体があり、黒ゴブリンの頭の中では『人間は人間を盾にされると何も出来ない』ということが常識になっていた。


配下のゴブリンが殺された時の怒りなどはすっきり消えており、どう嬲って殺すか、それしか考えていなかった。


「セツナ君!無事!?」


その時だった、セツナの背後から金髪の少女―――ティアの姿が黒ゴブリンから見えた。


「ティアか、少し待ってろ」


セツナは黒ゴブリンから目を離さず、そう言い放った。黒ゴブリンは息を切らしながらこの洞窟に入ってきたティアの姿を見て『セツナを心配して追ってきた』ということ即座に理解した。それと同時にティアの身体を見る。


豊潤な胸、エルフ特有の艶やかな金色の髪、そして見る者全てを魅了する美しい容姿、黒ゴブリンは下品な笑みを浮かべる。


「貴様ノ、女、犯ス、ギギッ」


黒ゴブリンはセツナを倒した後でティアを強姦すれば絶望を与えられる、そう考えた。しかしそう考えたことが一番の運の尽きであった。そう、セツナの目の前でその考えを口にしたことが……


「………」


次の瞬間、部屋に濃厚な殺気が漂う始める。息が詰まるほど濃厚で、身体が金縛りにあったかのように動かない。

動いても死ぬ、動かなくても死ぬ、そう直感が伝えていた。


「お前」

「グギ!?」


言葉の一つ一つに重い殺気が込められており、黒ゴブリンは生まれて初めて恐怖を体験する。


「今、なんつった?」


セツナは黒ゴブリンを真っ直ぐ見る。その瞳を見た黒ゴブリンは本能で平伏した。目の前の『化け物』には勝てない、勝てるわけがない。一瞬で殺される。しかし、セツナのその程度で殺気が収まる訳も無かった。


コツン、コツン


殺意で誰もが息を殺し静かになった洞窟をセツナが歩く度に大きな音が反響する。

そして黒ゴブリンの目の前に辿り着くと殺気の籠っている声で語り掛ける。


「ルナ姉を…犯すって言ったのか?」

「エ、ルナッテ誰?」


その言葉は明らかに勘違いととれる発言だったのだが、その誤解を解いたところでセツナの怒りが収まるはずがなかった。否、解く時間も無かった。


「お前は…殺す」


殺される、そう直感で悟った黒ゴブリンは立ち上がり剣を構える。勝てるはずがない、しかしもし運が良ければ逃げれるかもしれない…そんな希望を持って剣を構えるのだが―――


「グギ?」


右手が異常に軽いことに気付く。不思議に思った黒ゴブリンの一番初めに目に入ったのは剣を握っている自分の手であった。

しかし右手は自分の在るべきところには無く、自分の目の前…地面に転がっていた。


「グギィ!?」


左手の騎士を放し、右手の付いていた部分を触れる。しかし―――


「おい」

「!?」


前に立っていたはずのセツナに背後から声を掛けられ、黒ゴブリンは後ろを振り向く。

セツナは何かを持っていた。それは自分の手だとすぐに理解したが、右手ではなかったことに困惑する。

恐る恐る動かそうとしていた左手の付いていた場所に視線を寄せる。


「最後くらいは魔法で殺してやるよ、痛み無く…な」


セツナの周りから淡い光の玉が現れる。黒ゴブリンはあれに当たれば死ぬ、それだけを理解して洞窟の出口の方角にいるティアを人質に取ろうとする…が、その場で転ぶ。

黒ゴブリンは首を何とか動かし、自分に何が起こったかを確認する。


「ほら、お前の足だ。返してやるよ」


黒ゴブリンの目の前に自分の足が投げられる。そして…淡い光を発している魔法が直撃する。


「…まぁ、こんな状況じゃ、意味はないと思うが」


【月魔法】

熟練度2

1、月光

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