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21、上位種

「次はどこだ?」

『この森の中心部にいる魔物が最後かな?』

「距離は?」

『この先を真っ直ぐだよ!』


魔物を倒し続けたセツナはゴブリンなどの返り血を浴びており、人に見られたら十人中八人は恐れて逃げそうな格好となっていた。

綺麗だった制服の姿は見る影もない。この場所に来ている生徒は全員、学園の制服を着用している。

白と青の清潔感漂う制服にはいくつかの魔法が施されているため、戦闘服としての機能も持っている。


そして現在、セツナは森の中心部にいる魔物を討伐するため走っていた。何故そこまでするのか、セツナは十分すぎるほど貢献しているのだ。


(俺は、何がしたいんだろうな)


何故、こんなにも殺すことに執着しているのかセツナ自身にも分からなかった。

日本でも、異世界でも、何故ここまで敵を殺そうとするのか、それが分からなかった。

セツナは五年前のことを思い出す。


♢♢♢


それはまだ記憶を失って間もない頃、何も分からないセツナは軍の上司と初めて顔合わせをした時だった。


「その子は何ですか?ミライ博士」

「私の実験材料だ、こいつをお前らに貸してやる」

「貸す…とは?」

「…ふむ」


ミライはどこからか銃を取り出すとセツナの太ももを何の躊躇も無く撃ち抜く。

セツナは太ももを撃たれるとその場で座り込み「グッ…」と声を殺すように唸る。


「な、何をしている!」

「実験材料、起きろ」

「その子を殺す気ですか!」

「いいから見てろ」

「そんなこと―――え?」


上司がミライを止めようと動き出したところだった。セツナが何もなかったかのように立ち上がったのだ。太ももには血が付いているが傷は塞がれており、元通りになっていた。


「それじゃあ、この子を頼んだよ」


それだけ言うとミライはセツナを置いて部屋を退出する。上司は目の前の光景に数秒間、フリーズしたように止まる。

そしてセツナがその様子を不思議に思ったのか「どうした」と声をかけると同時に上司の意識が覚醒される。


「あ、いや…何でもない…それで君は、えっと…」

「セツナ」

「セツナ君は何をしろって言われたんだい?」


ミライが「貸す」と言っていたことをから上司はほぼ予想が出来ていたが、改めて再確認をした。


「敵を殺せと言われた」

「……そうか」


その予想は当たっており、上司の胸が痛む。子供を血が飛び交う戦場に向かわせるのが良心を傷つけていった。


「来る途中に泣いてる人間を見た」

「あぁ、あれは………仲間が死んだんだよ」

「そうか」


セツナは上司の解答に表情を曇らせる。


「敵が死ねば仲間は死なないのか?」

「ん?まぁ、そうだね」

「…わかった」


そう言ってセツナは部屋から出る。それからだった……毎日東京エリアに侵入した敵兵が全滅するようになったのは……


♢♢♢


「………」

『セツナ、あそこの洞窟だよ!』


ルナが指差した方角には大きな洞窟があり、入り口には鎧を着ている人間の死体が転がっていた。セツナは騎士のものだろうとすぐに悟ると同時に息を呑んだ。

森に出た魔物はそれほど強いものは存在しなかった。騎士でも簡単に対処できるぐらいのものだった。けれどその騎士が死体としてここにある、つまりこの先には騎士を殺すほどの存在がいるということなのだ。


「行くか」


セツナは魔物のいるであろう洞窟に足を踏み入れる。

セツナは常に戦場を走っていた。そのため何のために戦っているか、それさえも分からなくなっていた。

しかし今、セツナは明らかに確信していた。自分の戦う訳を、何のために戦うのかを…


♢♢♢


「これは酷いな…」


中には騎士の死体が大量に転がっていた。その死体の中にはゴブリンの死体も混じっている。

その死体から発せられる異臭が鼻につく。一般人がいれば即座に吐き気を催すだろう。


「……何か来るな」


セツナは洞窟の奥から聞こえる小さな足跡に警戒をしてナイフを構える、足音を立てずに近付いてくるということは不意打ちを狙っているのだろう、セツナはそう理解していた。


「……ゴブリンか?いや、少しでかいな」


セツナの目の前に現れたのは確かにゴブリンだった。しかしセツナが今まで戦ってきたゴブリンとは違い身体が一回り大きかった。そして手には棍棒ではなく騎士から奪ったのだろうと推測できる剣が握られていた。


「ギィ!」


ゴブリンが剣を握り斬りかかってくる。セツナはその剣をナイフで受け止める。

セツナはゴブリンの剣を受け止めた時、他のゴブリンと違うとすぐに悟った。

そして即座に剣を弾くと首を切り落とす。


「なるほどな、こいつはゴブリンの上位種ってわけか」


セツナが覚えた感覚は森にいるゴブリンより動きがまともだったこと、森にいたゴブリンは棍棒一本で警戒はするものの七割は本能で動いてるような感じだった。

けれど今セツナが殺したゴブリンはしっかりと剣を使っていた。そして身体が一回り大きい、この情報に該当する魔物をセツナはしっかり覚えていた。


それはゴブリンの上位種、ゴブリンソルジャー、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジの三種である、剣を使うところからゴブリンソルジャーなのがすぐに分かったが強さは騎士ほどではないのだ、そう考えているセツナは更なる敵の気配を感じとる。


『セツナ、五体くるよ……』

「……なるほど、騎士はこうやって殺されたんだな」


目の前にはゴブリンの上位種が五体いた。騎士一人で連携が取れているゴブリンの上位種を相手するのは困難だろう。


「まぁいい、殺すだけだ」


セツナはそう言い、ゴブリンの上位種の方へ向かっていく…しかしセツナは知らなかった。その先にユニーク個体がいるなんて…

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