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20、ゴブリン

セツナが森に入り既に数分が経っておりセツナは森の魔物がいつ出てもおかしくないエリアまで来ていた。情報では騎士団は奥地で戦闘を繰り広げているためまだ発見できていない。


『セツナ、来たよ』

「そうだな」


セツナは待ち望んでいた気配があることに狂気の笑みを浮かべる。そう、魔物だ。

セツナは人間との戦闘経験はあるが、魔物との戦闘経験は一切ない。ミライから渡されてきた触手の合成獣も魔物なのだろうが、あくまで食事としてだった。


『数は…四、前方に45メートル』


ルナの指示を聞くと同時にセツナは魔物のいる方角へ向かった。向かった方角にいたのは緑色の小鬼のような魔物がいた。手には棍棒が握られており腰の布切れ一枚の格好だった。


「ゴブリンか」


その魔物はセツナも資料で見たことがあった。人間の子供ほどの背丈しかないがずる賢く、ある程度の数いると連携を取られる。

その魔物の名はゴブリン。

長く生きている個体は知能が高くなり罠や毒矢などを使うこともある、人間の女性を攫い繁殖する。その繁殖力は高いため大群になり襲われた村は数知れない。殺せば国から少ないが報酬が貰える。


「グギッ?」


セツナが向かってくることに反応するゴブリン、しかしその時には三体のゴブリンの首が落とされていた。


「!?」


何が起きたかまるで理解が追い付かないゴブリン、しかし何かが起こったことだけは理解し、そして底知れない恐怖が彼の本能を引き起こし戦闘態勢を取らせた。


「こんなものか」

「グ!?」


そして突然背後から聞こえる声、ゴブリンは即座に振り向き仲間を殺したであろう男―――セツナを警戒と怒りの眼差しで見ている。


「どうした?来ないのか?」


セツナが挑発するように話す。言葉は分からなくともゴブリンには何を話しているか話し方で理解が出来た。

しかしゴブリンは分かっていた。コイツには勝てない…と、だからと言って仲間を一瞬で殺した男が逃がしてくれるわけもない。


ピィィィィィィィィィ!!


「ん?」


そこでゴブリンは首に掛けていた角笛を吹く。セツナは何をしているのかと考えると同時にある予想をしていた。

そしてゴブリンは次の瞬間、手に持っていた棍棒でセツナに立ち向かう。


「まぁ、いいか」


ザシュッ


ゴブリンが襲い掛かってきたのでセツナはいつも通り首を切り落とす。そう、いつも通りに…


「何だったんだ?さっきの角笛…」


いつも通りに簡単に殺せてしまったのだ。角笛で何か仕掛けがあるのではないかと予想していたセツナは裏切られた気持ちになる。しかしその時だった―――


『セツナ!色んなところから魔物が押し寄せて来てる!』

「なに?」

『ここに一直線に魔物が向かってきてるの!』

「………」


そんなルナの言葉を聞いてセツナはニィっと口元を歪めて笑みを浮かべる。


「そういうことか」

『え?何が?』

「さっきの笛は魔物を呼び寄せるために使ったわけだな」


そう、先ほどゴブリンが使った笛は魔物を誘き寄せ仲間の仇を討ってほしいという合図だったのだ。ゴブリンはそんな考えは普通は持たない。基本は本能で生きる。長く生きた個体には知性が宿る、程度の認識が当たり前なのだ。

今のゴブリンは明らかに状況判断が出来ていた。そう、それは普通ではありえないことだ。

学園の座学でそれを習っていたセツナはすぐに何かが起きていると感づく、活性化なんて生温いものではない何かが………


「まぁ、考えるのは後にするか…とりあえずは―――」


セツナは周囲に闇玉(霧)をばら撒き、背後から襲ってくるゴブリンにアイアンクローをするとそのまま握力で握り潰す。


「こいつらだな」


その時セツナは、戦場にいた頃と同じ顔をしていた。

誰もが恐れ、戦場で幾度となく血の雨を降らせた死神の顔に………


♢♢♢


「魔物がいないな…」


生徒を連れて森に入り始めたガイルがそう呟く。ガイル達が森に入ってから一度も魔物に遭遇していないのだ…いや、遭遇はしている。


「先生!またありました!」

「またか……」


そう言う生徒の指さす先には首が切り落とされて死んでいる状態の魔物がいた。ガイルが森に入ってから十分ほどでこの状態の魔物を軽く五十体は発見しているのだ。しかも全てが鋭い刃物で切り落とされている状態、鋭い刃を持つ魔物は森には生息していない。つまり魔物ではない【何か】がこれをしたことになる。


「もしや……魔族がいるとでもいうのか?」


ガイルの頭の中には人間という発想は無かった。人間なら魔物を倒した報酬を貰うために証として指定された部位をを切って持って行く。


 けれど見付けた魔物は首が斬られてるだけで持ち去られた部位は無いのだ。そして何より、全ての魔物の傷が真新しいのだ、短時間に弱いとはいえこれほどの数の魔物を倒すのは人間と呼べるか怪しい。


「先生!向こうに魔物が積んであります!」

「……魔族、か」


魔族とは魔王と呼ばれる存在の眷属とされた魔物のこと、魔族となった時に人型に擬態できるようになる。人型になれば武器を使うこともある。

人間の姿でも魔物の身体能力は残っているため、ガイルは完全に魔族がいると考えていた。

自分の担当している生徒がそんなことをしているとは考えずに―――


「ねぇ、ギン…」

『あぁ、セツナ殿じゃろうな』

「やっぱりね…」


そんな中、ティアはセツナがしたのだと悟る。理由はセツナの上司から聞いていたセツナの戦い方の話によるものだった。

一瞬にして敵の首を刈り取る、それしか聞かされていなかったがこの状況を見てそう判断するのにそう時間はかからなかった。


『今のところ、死者はいないみたいじゃのう』

「……セツナ君が」

『セツナ殿がどう思ってるかは分からぬが、結果としてそうなっておるな』

「………」


そこでセツナの上司の話を更に思い出す。

そして学園でセツナに苛立ちを覚えていた自分を恥じた。セツナの上司は戦い方以外にも色んなを話していたのだ。


セツナの五年間で感情が疎くなっていったこと、

同僚と話す機会が無く常に一人だったこと、

そして…セツナの行動で日本にほとんど被害が出ていないこと。


今まさに、セツナの行動で被害が抑えられているのだ。そして最後にセツナが見せた寂しそうな表情を思い出し軽い罪悪感に胸が締め付けられる。


『む、森の中心部に強力な魔物がいるのう…これはユニーク個体か?』

「っ!」


ユニーク個体、十年に一体ほど発見される魔物、小さな国なら滅ぼせるとも言われている天災。

ティアもその存在は何度か見たことがあった。人族の、それも子供が一人で勝てる相手ではなかった。

セツナは確かにティアに勝った。けれどユニーク個体の場合は違う。大規模な軍隊を用意して討伐できるかどうかの問題なのだ。

もしかしたらセツナが死ぬかもしれない、ティアはそんな不安と恐怖に駆られながら一人森の中心部へ向かった。

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