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2、一般人

「ひぃ!鮮血の死神!」

「お前で最後か」


ㇲッ


首が落ち、真っ赤な花が咲く。今殺した敵兵が最後の様で周りには誰もいない。セツナは残念そうに溜息をつく。


「…帰るか」

『セツナ!』


突然、脳内にルナの声が響く。何やら慌てている様子だ。


「どうした」

『二キロ北の方角で一般人が襲われてる!』

「一般人…?」


日本は現在戦場、日本人は全員異世界に避難している。一般人などいる訳がない。一般人に扮した敵兵かとセツナは思ったがその場合ルナが『一般人に扮した敵兵』という情報をくれるのでその可能性はありえない。

セツナは北の方角へ向かおうとする。


「二キロなら…」


ドォォォォンッ!!


セツナは踏み込んだ瞬間、地面を蹴っただけとは思えないほどの音が響き砂埃が宙を舞う。


「50秒で着く」


セツナはある実験を境に人間離れした力を手に入れた。鮮血の死神に会えば必ず死ぬといわれているのはそこにも理由がある。秒速四十メートルで走れるため車だろうと追い付くのだ。


♢♢♢


「はぁ…はぁ…はぁ…」

「クソッ!何で避けられるんだよ!ファイヤーボール!」


青年二人組のうち一人が手からテニスボールほどの火の玉を出現させた。


「行けっ!」


青年が命令をだすと火の玉は敵兵へ飛んでいく…が、その火の玉はすぐに避けられてしまう。


「…」


敵兵は銃口を青年二人に向ける。


「ひ、ひぃ!」


青年の顔が絶望に歪む。死ぬ…そう思い目を閉じた時だった。


「…あれ?」


青年は数秒経っても銃弾が放たれないことを不思議に思い目を開ける。すると…


スルッ


首が目の前で転がっていた…先程まで青年達を襲っていた兵士のものだ。そしてその近くには返り血まみれの少年が楽しそうに血が付いた黒いナイフの刃を舐めていた。


「し、し、死神ィィィィィィ!!」


青年は少年…セツナを見てそう叫ぶと気絶してしまった…


「…気絶するなよ、おいそっちの」

「は、はい!」


もう一人の青年は怯えながらセツナの声に応える。セツナには何故怯えられているのか理解が出来なかった。


「一般人がなぜこんなところにいる、答えろ」

「ひぃ!…え?」

「保護してやるから、ついてこい。そっちのやつも運んでこい」


青年は何を言っているかまるで理解できていない様子だった。当たり前だ、目の前には返り血まみれで血の付いたナイフを楽しそうに舐めているような存在なのだ。これで味方だと考える人間のほうが少ない。


「さっさとしろ!」

「は、はい!」


♢♢♢


「君が保護したのはどうやら異世界に避難していた一般人の様だ」


軍の施設に一般人を送ったあとで軍が二人に聞いたところだと、異世界の【魔法】という文明を覚えた彼らは魔法の使えない敵国の兵士を簡単に倒せると考えたようだ。けれど実弾には魔法は全く歯が立たず、そこでセツナに遭遇したのだという。


「彼らの話だとまだこちらに戻ってきている一般人がいるらしい…セツナ君、君も見つけたら保護してくれるかな?」

「了解しました」


敬礼をし、その部屋を出る。


『セツナ、どうするの?』

「探してやる義理がない」

『えぇ…サーチは済んでるよ?』

「戦場に勝手に来たのは奴らだ、死ぬのも奴らの自由だ」

『…』


ルナはこの時思った…


(このままでいいのかな…こんなじゃセツナはいつまでも戦闘狂のままだよね…私が…セツナを変えるように努力しなきゃ!)


『セツナ!』

「どうした」

『もしも捜索してくれたら、私がクッキー焼いて…』

「断る」

『まだ最後まで言ってないのに…』

「サプリがあれば食事など必要ないだろ」


そう、セツナは間食、食事、それらはサプリで済ませるのだ。食に関する欲は無く、食は生きるための手段の一つとしか見ていないのだ。それ故、ルナが【クッキーを焼く】という報酬の意義が理解できていない。


『うーん、じゃあハンバーグを作って…』

「断る」

『好きだったじゃん!』

「好き…?俺ははんばーぐ、とやらの存在すら知らないぞ」

『あ、そっか…昔の記憶は…』

「と言うか付喪神、精霊なのにやけに人間の知識が豊富だな」

『そんなことはどうでもいいでしょ!うーん、あ!じゃあプリン作るから…ね?』

「断る」

『じゃあ…』


♢閑話休題♢


『…何を作ったら行ってくれるの…?』


ルナは涙目で訴えかける。ルナは思い付く料理を一通り言ったのだが全て「断る」の一言で返されてしまったのだ。


「分かったよ…行けばいいんだろ」

『ほんとっ!?』

「このまま言い争ってる方が面倒だからな」

『うぅぅ…セツナ大好きー!』

「…やっぱり断ろうかな」

『さぁ!サーチは済んでるから今すぐ行こう!』

「………」


一度了承してしまった事を後悔しセツナは言われた場所に向かうのだった…


♢♦♢


「中々こねぇなー」

「敵兵が来れば俺の魔法でズバーンっとやっちまうのになー」

「だなー」


青年二人組はまだ敵兵には会っていない。それ故、彼らの頭の中は戦場で無双する自分たちの姿が映っていた。


「おい、お前たち」


背後から突然声がかかる


「うぉ!」

「だ、誰だ!」


青年二人組は突然の声に驚き、後ろを振り返る。するとそこには自分達より年下そうな黒いコートの男の子が一人だけいた。


「なんだ?君は…日本人…?」

「軍の者だ、お前たちを保護しに来た」

「保護ぉ?俺たちは日本を救いに来たんだぜ?」


少年…セツナの話に耳を傾けず、敵兵を倒しているイメージで頭がいっぱいの様だ。


「これは軍からの命令、従え」


セツナの威圧的な言動に青年たちは少し怒りを覚えた。もちろんセツナにそんな意図はなく、早く回収して帰りたいだけだった。


「おいおい、軍人さん、俺達は少なくとも軍人さんよりは役に立つぜ?」

「………」

「俺たちはな、魔法を使えるか…」


その瞬間だった…青年たちの目の前からセツナが消えたのは…


「ら?」

「き、消えた…?」

「こっちだ」


セツナの声が聞こえたのは青年たちの背後だった。青年たちはすぐに後ろを振り返るとそこには気絶している敵兵が引きずりながら近付いてくるセツナの姿があった。

そしてセツナは青年たちの前に気絶している敵兵を転がす。


「殺せ」

「…は?」

「役に立つんだろ?じゃあ殺せよ」

「な、何を言って…」


青年たちにはセツナの言葉の意味が理解できなかった。その様子を見てセツナは「はぁ…」とため息をついて敵兵の首を切り飛ばした。


「ひぃぃぃぃ!」

「な、なにを…」

「いいか?戦場では殺さなければ死ぬ、それが出来ないなら異世界で震えてな」


青年達は飛び散る血しぶきを見て遊び感覚で戦場に来ていた事を再認識する。それと同時に死神を見た…と、後に語ったという…


「さて、次は…向こうか」


セツナは青年たちを回収するように軍へ連絡を入れ、次の場所へ向かったのだった…


♢♢♢


「回収してくれるのは嬉しいが…全員が返り血まみれで『死神がくる』と呟きながら震えているのは何故だ?」

「わかりません」

「……もういい、帰ってよし」

「了解しました」

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