12、ティア
2/24修正しました。タイトルだけだけど………
『黒薔薇の庭園』
白い花は全て黒薔薇に飲み込まれるように消えていく。そして一瞬で部屋は黒薔薇の庭園と化す。
『ワ、ワシの能力が破られるとは…』
「あ、れ?何だか眠く…」
『ティア!?どうした!?』
ティアはその場で倒れる。ギンは突然倒れたティアを見て焦る。
「寝てるだけさ、黒薔薇の庭園では生物は全て眠る。ただ地面には寝かせないほうがいいかもな」
『…どういう意味じゃ』
「地面に寝かせれば三十分で全身が覆われる。まぁ俺かルナ姉が命じれば一秒も経たずに包まれる、さらに黒薔薇に触れていると少しずつ生命力が…ん?魔力も吸ってるのか?この黒薔薇」
セツナの言葉は最後まで続かなかったが、ギンはこのままではティアの生命力が尽きて死ぬという事は理解できた。
そうじゃなくとも黒い霧でかなり生命力を奪われていたため、表情に血の気がない。
『今までは魔力を持たない敵兵にしか使ってなかったから気付けなかったんだね』
ルナも魔力が回復してるのを感じているらしく、何故気付けなかったのかを冷静に判断する。
「それに死んでも大丈夫なんだろう?」
『………』
「この部屋は学園長室ではなく別の空間。明らかに収まらない部屋の広さ、明らかに危機的状況なのに全く焦らない、そして…蹴り飛ばした時の実感の無さ」
そう、セツナは蹴り飛ばした時に違和感を覚えたのだ。骨を破壊した実感はあった。その後の平然と立ち上がったのも魔法でも使ったのだろうとセツナは思っていた。しかし魔法では説明できないものがあったのだ。
「その女には体温がなかった、どうせ本物じゃないんだろ?」
そう、ティアの身体には体温がなかった。つまりこの身体は本体ではなく偽物の身体だとセツナは考えている。
『………ティアの意識がこの人形から離れれば現実に戻される。もしくはティアが結界を解けば…』
「そうか」
セツナは眠ったティアを黒薔薇の茨で包ませると生命力を全て吸い取る。吸い取り終わると周りの景色が変わってゆく。
「やぁ!セツナ君は超強いね!」
「………」
景色が変わるとそこは高級そうな家具が置かれている部屋だった。先ほど戦ったティアが高そうな椅子に座りながらそう言ってきた。
「でも、あの人形はコピーした力を半減させるから私も本気じゃなかったんだよね~」
『え?あの人形にそんな効果なかったと思うん』「ギン黙れ」
ギンが何か言おうとしたらティアが殺意を放つ。
「私はこの王都第一学園の管理を任されてるティア・シルフィード・ワイズマンよ、こっちは竜種の神位精霊のギン」
『よろしく頼む』
「名前が長いな」
セツナは素朴な疑問を投げかける。
「ティアが名前でシルフィードはエルフの女性は全員付けられるの、そしてワイズマンはその国で一番の魔法使いに与えられる家名よ、どう?凄いでしょ!」
「あー、うん。そうだね」
『凄い!国で一番の魔法使い!あ、ルナです。こっちは私の可愛い弟のセツナ』
セツナは自分から質問しておいて興味なさげに自己紹介を済ませる。
「ルナちゃんありがと~」
『わわっ!』
褒められたのが嬉しかったのかティアはルナを抱きしめる。ティアの胸がルナの顔の部分に丁度当たり、ルナは息が出来ていない。
『く、苦しいです』
「あ、ごめんなさい」
ルナが息が出来ていないことに気付くとようやく離す。離されたルナは何故か「負けた…」と泣きそうな顔をしているがセツナは何のことか理解できなかった。
「それで?攻撃してきた理由を聞こうか」
「いや~、君の上司に人類最強だって聞かされてたから実力が知りたくて~」
『まさかワシらより強いとは思わなかったが…』
『でもティアさんは力が半減されてたんですよね?』
「『………』」
「ルナ姉…マジで信じてたのか…」
ルナはティアとギンに勝ったが、それは本気ではないと思っているようだ。
もちろんそんなことは全然無く、ティアは全力で戦っていた。力が半減というのは苦しすぎる言い訳だとティア自身も感じていた。
もちろんギンとセツナもそれが嘘だと分かっている…が、ルナだけはそう思わなかったらしい。
『セツナ!国で一番の魔法使いだよ?セツナと私が勝てる訳ないでしょ?』
「「『………』」」
その時、二人と一匹はアイコンタクトで会話をしていた。
「(どうすんだこれ!ルナ姉が本気で信じてるぞ!)」
「(ごめんなさい…マジで信じるとは思わなかった…)」
『(正直言うしかないかの?)』
「(お願い!私の威厳を保つためにそれだけは!)」
『(どうする、セツナ殿)』
「(面倒くさいからもうそれでいいよ…)」
「(ありがとうございます!セツナ様!)」
「(ギン、お前大変だな…)」
『(そんな憐みの眼でこっちを見るな!)』
そんな無言の会話でルナは勘違いしたまま放置ということになった。
「あ、ギン。あなたを圧倒した精霊ならあの資格あるんじゃない?」
『む?あぁ、確かにこの強さなら可能じゃ…しかしルナ殿は属性加護を決めておらんぞ?』
「え!?本当!?加護無しであの強さ!?」
「何の話だ?」
資格、属性加護、加護無し、何の話かセツナとルナには理解できなかった。
「あぁ、ごめんなさい。一から説明するわね」
「頼む」
「まず資格っていうのは神位精霊になることが出来るってこと、ルナちゃんは王位精霊よね?」
『その辺の物なら魔力消費無しで持てるよ!』
「なら大丈夫よ、でももう一つ条件があるの」
「属性加護…か?」
さっきの会話を聞いてセツナは意味は分からずとも、何となく理解していた。
「そう、属性加護は人間からしたら魔法適性みたいなものね。ルナちゃんは王位精霊だから属性を創る権利があるんだけど…何か思い付く?」
『んー、何でもいいんですか?』
「えぇ、その属性が存在していても少し面倒だけど何とかなるわ」
その理由はティアによると属性の頂点の精霊に仲間にしてもらう必要があるのだ。ルナの場合はほぼ入れてもらえるだろうが、まず精霊の頂点を探す必要があるのだという。そんな話をセツナが聞いている内にルナは思い付いたようだった。
『思い付きました!』
「言ってみて」
『月属性!』
『ほぅ、良く分かってるじゃないか』
ルナの言葉にギンは笑みを隠しきれていないようだった。ルナとセツナにその理由はもちろん分からない。
『月属性ってありますか?』
「…あるわよ」
『はぁ…じゃあダメですか…他に思い付くかな…』
『そんな事はない』
「ルナちゃん、月属性になんでなりたいの?」
ティアはギンのにやけている顔を見て面倒くさそうな顔をしている。
『昔から月が綺麗な日には家のベランダでセツナと見てたんです、それでしょっちゅうお義母さんに怒られましたけど。それと…私の名前が別の国の言葉で月って意味らしくて気に入ってるんです』
セツナは昔、夜遅くに起きてはルナと一緒に月をみていたのだ。月の下でコッソリ持ってきたお菓子を食べていた。お菓子が減っていることから毎回ミライに二人して怒られた。
「ギン、判定は?」
『月の綺麗さが分かってくれるどころか、名前が月とは…ワシは深く感動した!文句なしの合格じゃ!』
『えっと…?』
「ルナちゃん、実はね…ギンが月属性の頂点なのよ」
そこで初めてギンがにやけている理由が理解できた二人だった。自分より強い精霊が自分と同じ属性になりたいと言ったらそれは嬉しいだろう。それに年齢から考えてもギンからみるルナは孫娘のような感覚なのだろう。
『よし!ルナ殿、手を貸せい!月属性にしてやる!』
『あ、お願いします』
ギンは嬉しそうに差し出された手に触れる。すると手から眩いほどの光が発せられる。しばらくすると光は収まる。収まると同時にセツナとルナは違和感を覚えた。
「何だ…?力が強まってる…?」
『私も何か新しい魔法覚えたみたい…それと魔力量も凄い増えてる…』
セツナとルナが不自然そうにしているとギンとティアが説明する。
『それが属性の力じゃな。二人共、月魔法が使えるはずじゃ。ルナ殿は神位精霊になってる影響じゃろ』
「セツナ君は月精霊の加護を受けてるから身体能力が上がってるのよ、数分でコントロール可能になるわ」
ティアの言う通りセツナはすぐに化け物×2の身体能力から化け物並みの身体能力に戻すことが出来た。
『ルナ殿の魔力量は凄いのぅ…ワシの五倍はあるぞ…』
「え!?そんなに!?」
『なんで私の魔力量を…』
「神位精霊になると同じ属性の精霊の魔力の量が上乗せされるのよ、ルナちゃんはギンの魔力の量が上乗せされてるはずよ」
なるほど、とルナが頷く隣でセツナは疑問を抱えていた。同じ属性の精霊の魔力量…
「なぁ、他の月属性の精霊は?」
「『………』」
「い、いないのか…」
「だってギンが必要ないって!」
『当り前じゃ!だってあいつらワシの恩恵ばっか見て月の美しさなんて知らないって言うんじゃもん!』
「そんなんだから他の王位精霊達とギリギリの戦いになるのよ!」
『毎回勝ってるからいいじゃろ!それにルナ殿いるからもう余裕じゃし!』
セツナは一人と一匹のしょうもない喧嘩を見て、(めんどくせぇ…)と一人思うのであった。そしてキクチは消えたセツナを探しに向かい校内で迷子になっているのであった。
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