表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
バイオレンス魔法少女  作者: 川澄
1/5

001.新生 

-登場人物-


  主人公。法律を学ぶ大学生。まじめだが不器用なひきこもり女子。


子犬

  "私"に拾われた元・捨て犬。不思議とかつての親友の面影を持つ。


春歌はるか

  私の妹。


冬木ふゆき

  私の高校時代の友人。はつらつとしたクラスメイト。

(今回のお話は3分で読むことができます)


私は二十三歳の大学生。いちおう、法学部。四回生だが、訳あってまだ卒業は少し先になる予定だ。

大学生になってまるで友達の出来なかった私だが、捨てられていた小犬を拾ってアパートで飼っている。 まるで親友の生き写しのようなこの小犬に、私は"あの子"と同じ名前をつけている。

最近アパートにひきこもりすぎて、とうとうアタマがおかしくなったのだろうか。私が飼っている元捨て犬が突然人間の言葉をしゃべりだしたのだ。

「ウヒィ! 犬がしゃべってる・・・」

「んやー、驚かないで聞いて欲しいわん。悪の組織の魔の手が迫っているんだわん。君はこれから魔法少女に変身し、悪の野望を打ち滅ぼすんだわん。これはこのあたりの大学生で最も孤立しているぼっち、つまり君にしか出来ない任務なんだわん」

「誰がぼっちよ!」

「大学では誰とも会話せず授業そっちのけでラノベを読み、飲み会に誘われたのは入学当初の二回だけ、お昼休みは大学の人たちから独りでいると思われるのが怖くていつも便所飯の君には、スペシャルぼっちパワーが宿っているわん。そのカでどうか・・・ぐぇっ」

私は犬の口元を抑えて黙らせようと試みる。

「このっ、このっ・・・」

「ちょ、ちょっと待って・・・とりあえず話を聞くんだわん・・・っていうか、聞いて下さい。 世界的悪の秘密結社その名もXXXX団、やつらはこの町を侵略しようと狙っているんだわん」

「この町を・・・!!?って、えらくピンポイントな世界的悪の組織ね・・・」

犬はモバイルパソコンを取り出し、説明を始めた。見覚えのない端末だった。犬の分際で彼の私物ではないかと思われた。

「現在やつらは日本の地方都市から徐々に勢力を拡大しつつあるんだわん。既に函館、金沢、倉敷、別府はやつらの手に落ちてしまったわん・・・このままでは地球が大ピンチだわん」

なんという事だろう。犬の名前をつけた"あの子"と、いつか行ってみたいところばかりだ。

「でもあたし、もう魔法少女なんてトシじゃないし・・・」

私の年齢は今年で二十三歳だ。

「ダイジョーブ!そういうニーズもあるんだわん!」

犬はまるで人間がその動作をとるかのように、まかせよとばかりに、ポンっと自分の胸を叩いた。

「この魔法のステッキ"らき☆すたーりんぐいんふぇるの"を使えば、のスペシャルぼっちパワーを∞(インフィニット)に開放し、魔法少女にマジカルに大変身だわん!なのはちゃんみたいになれるわんよ!!?」

愛犬は適当な魔法少女アニメをユーチューブで再生をしている。私は動揺した。

百万歩ゆずって仮にこの話を信用するにしても、自分などに悪の組織とたった一人で立ち向かえるわけがない。

どう考えてみても不可能だ。私は服のそでをまくって、包帯が巻かれている左腕を見せた。

「あのね、あたしは今、大ケガしてるの!だから、そんなステッキなんか振れるわけないわ。見てよ、この利き腕の左手首の傷を・・・」

手首の傷は、リストカットと呼べるものではない。引っ掻いた程度の傷である。常習的にリスカの経験者のブログなどを読んだことがある私はこの行為に恐れこそするが、本気で痛みに依存するつもりは全くなかった。

「ね? あたしにはムリなのよ、わかった?これからあたしは避難も兼ねてアキバまでCDを買いに行くから、お留守番しててね」

その時だった。

凄まじい爆発音と共に重たい衝撃が全身を襲い、部屋が揺れた。

慌てて窓を開けると市街地から火の手が上がったのが見えた。敵だ!敵の侵略が始まったのだ。

「ああっ!! もう話をしている時間なんて無いわん・・・。君が今ここで闘わないと、この街は、死の街となり果てることになる・・・・」

「うっ・・・わかったわよ。やればいいんでしょ、やれば」

ボールペンサイズのステッキを振り回すと私の身体を光のロープが纏い、またたく間にヒラヒラ衣装の魔法少女へと変化を遂げた。

「これからどうしたらいいの?」

「まずは敵の死をイメージするんだわん。怒りのままにエネルギーを放つイメージを。ささ、やってみて」

ちょうど黒装束の敵が数百メートル向こうで空き店舗に放火を行っているのが見えた。私には悪の意思がどこにどれだけいるのか手に取るようにわかった。

呪いを込めてステッキを向けると集中した敵が一斉に黒い炎に包まれ、悲鳴と共に焼け落ちる様が見えた。

数分もたずに私の魔法カは敵を圧倒した。やはり潜在的に強力なスペシャルぼっちパワーを秘めているのだろう。黒こげになった敵の戦闘員の死骸の山を築く度に一層魔力を駆り立てられた。赤黒い瘴気を帯びたエネルギーの弾丸を、いくらでも放つことができる。

「おのれこいつただものじゃないぞ」

「ちっ、今日はこのくらいにしといたるわっ」

「次に会うときまでにオマエの戒名を用意しとけ」

敵の下っぱ戦闘員が次々と捨て台詞を吐いて逃げ出していく。

私の放った魔砲はビルやマンションを貫き、住宅をことごとくなぎ払い、工場が何件か爆発した。街は、死の廃墟となり果てた。

「はぁっはぁ・・・さ、最高。暴れてスカッとしたわ!魔法って最高ね。決めた。あたし、これからも魔法少女になるわ。これからよろしくね!」

「それどころじゃないわん・・・街が大変な事に・・・あわわわ」

私は人類の命運を託された魔法少女。

世界の平和を守るため。悪との闘いは今、始まったばかりである。




つづきは近日公開。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ