夏へのいざない
君と出会ってあれから一年経つ。
新しく始めたバイト先で出会った君。
僕の日常に何十色もの彩りをもたらした君。
「初めまして。これからよろしくね。」
たった一言なんだけど、その声と人懐こそうな
笑顔、その溢れ出る優しさに魅了された。
それからは君に会うためだけにバイトに入った。
君が好きな音楽も聞いた、君のオススメした映画も見た。全ては君に振り向いてもらうため。
不純だと思ったけど、それどころじゃなかったんだ。
会うたび好きになっていくんだから。
「あの、私でよかったら付き合ってくれませんか?」
君から告白された時は平然を装うのに必死だった。
想いは叶った!!恋は実るんだ!!
泣き叫びたかった。走り出したかった。
それからは毎日が違って見えた。君が隣にいるだけで
幸せだって思えた。
「好き。」って何回だって伝えあった。
「夏になったら海へ行こうな」って約束。
ようやく叶うな。
セミの鳴き声が妙に心地よく聞こえるよ。
海には浮き輪がちらほら見えるんだ。
風鈴の音色が僕を夏へといざなう。
君のいない夏へと。