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第8話 ヒーロー

「もしかして美華は………」


「そうだ。我妻美華さんを連れ去ったのは政府もしくは政府の息のおかかった組織と言えるだろう」


政府。

それは国の主権を持ち,圧倒的な力を持つ。そんな圧倒的なもの俺にかなうはずがない。


「政府?政府がそんなことするわけがない。どうして政府がやったといえるんですか?」


 政府とは国民の合意のもとになり立っている存在だ。そんなことをしたら国民に批判を受けるに決まっている。そうなったとしたら政府の信用が崩れてしまう。


「あきらかに事件発生率が上がっていることに政府が気付かないわけはないだろう。その上に竹下が政府

のコンピュータにハッキングをしかけた結果,政府がやったことを裏付ける情報が出てきた」


「そんなことができるんですか?」


そう尋ねると竹下はどや顔でこちらを見てきて,


「はは驚いたでしょう。わたしにとってハッキング出来ないネットワークなどないのです。そんなわたしにとってすこしだけ………ほんのすこしだけ苦戦したがまあわたしにかかれば政府程度のコンピュータは崩すことが可能です。ほんの少し待ってください。」


そう言って何やらたたたたと竹下の目の前にあったパソコンをかなり早いスピードで動かしていく。


「ほらこの通り政府のネットワークにハッキングを掛けた結果がこの通りです。見てください。ほらこれみてください。『以上の通りあきらかに感情を飛躍的に昇華させるウイルスが存在していることが分かった。だがその生態はいまだ謎に包まれており,ほかにかなりの実験が必要である。その上で実験対象としていくらか事件を起こした被疑者の身柄が必要である。マウスなどの実験動物では実験の効果が薄いことが分かったためだ。これはおそらく動物には複雑な感情がないためだと考えられる。また,実験は失敗を起こす確率が非常に高くなっているため複数の被疑者を必要だ。』そう書いてあります。これはわたしが政府のネットワークから入手した資料の一部です。これは決定的な証拠と言えるでしょう」


竹下はそう長々と話しながらどや顔でこちらを向いてくる。長文ではあるためのせいなのかいかにも胡散臭い。


「本当にこれは政府のネットワークからの情報なんですか?」


そう尋ねると今度は四宮が,


「うむ,竹下は長々と話し胡散臭いかもしれないがハッキングの腕だけは確かだ」


「すごいですね」


この竹下という人は妙に早口で長話ばかりするので明らかな変人だと思っていたがハッキングの腕前だけは優れているようだ。


「この話をマスコミに売り込んだりはした。この資料だけでは信用してもらえなかった。おそらく偽造だとでも疑われていたのだろう。」


 確かにこんなことを政府がやるとは思えないのが普通だ。しかもこんな大学生を信じられるとは思えない。そんなことを思っていると,


「そこでだ………」


また四宮は少し間をあけてから,


「三日後,人体実験が行われている国立病院に君と志摩の二人で襲撃をかけ,たしかに政府が人体実験をしている証拠とともに,被害者を救い出す」


四宮はそう宣言する。

四宮は政府に反抗するとそう言っているのだ。


いくらこちら側が正義だったとしても裁判で有罪とされればそれはもうすでに有罪だ。そうなってしまえば加藤はもう犯罪者だ。


「でもいくら助けたところでその研究を止めてしまったら美華はそのまま病気のままになってしまうんじゃないですか?」


「薬に関してはもうすでに私が自分自身のために作った薬が出来上がっている。我妻美華さんの病気はす

ぐに治せる」


四宮は俺の問いに即答する。


「それは・・俺が行く必要があるんですか?」


 加藤はそれが恐ろしく情けない顔をしてしまう。

加藤はただの高校生でしかない。恐れても仕方ないのではないのではないか。


「大丈夫,大丈夫だよ。別に君じゃなくてもいいんだよ」


 海鳥という女性が抱き着いてきながら言う。


「な!」


 加藤は突然女性に抱き着かれたことに驚き,固まってしまう。なんというか柔らかいものが加藤の物に当たる。こう突然抱き着かれてしまえば思春期真っただ中の男子高校生には動揺するには十分だった。


「な,なんで抱き着かれたんですか」


「だって君がつらい顔してたから」


そう言いながら海鳥は離れていく。


「はあ」


 加藤は緊張から放たれついため息をついてしまう。


「ごめんな加藤くん海鳥はたまに距離が近すぎることがあるんだよ」


 志摩はそう言う。


「それで俺が選ばれる理由なんてないんですね」


 加藤はもう一度確かめようとそう尋ねると,


「まあ確かに被害者は我妻美華さんだけではないからな」


そう四宮はうなずく。


「それならなんで?」


加藤は友達が少ないが普通の高校生でしかないのだ。だとしたら何も加藤でなくてはならない理由があるはずがない。


「君は普通だよな。普通の童顔,そして身長も170ぐらいと普通どこから見ても普通の高校生。それが理由だ」


「はい?」


 四宮が言っていることはまったく加藤が選ばれた理由になっていないため思わず聞き返してしまう。


「私はおとぎ話に出てくるようなヒーローにあこがれていた。しかし,現実世界にヒーローなんてものは

存在していないことはつまらないじゃないか。」


「ああ,確かに。俺も小さい頃はあこがれたこともありました」


 加藤は四宮が言っていることに同意する。


 ヒーローになりたい。

 それはきっと男子であれば誰でもあこがれてしまうものだ。きっと四宮も男子であることに変わりはなくヒーローにあこがれてしまうのだろう。もちろん加藤自身もそんな気持ちはある。


「何も持っていない普通の高校生が幼馴染を救い出す。そんな英雄伝(キャバルディ)を自分で作りだしてみたくなった。それが普通の高校生である君を一番はじめに選んだ理由だ」


 そう四宮はそう言った。だがすこし矛盾しているところが気になる。


「自分で行こうとは思わなかったんですか?」


 四宮はヒーローにあこがれている。そう言った。だがたしか実際に襲撃するメンバーは加藤と志摩の二人だけであったはずだ。なぜ四宮もヒーローになろうとしないというのはおかしいのではないだろうか。


「まあ私がいけたのであれば一番よかったのだろうが体力が足りない。だが人員は二人以上は必要だ。そこで,人生で一番体力がある時期である高校生を動機がある被害者の知人の中から頼もうと思ったわけだ」


「なるほど,それで俺ですか」


 加藤自身が誘われた理由はある程度納得することができ,そうつぶやく。すると四宮が,


「ある程度納得することができたかな?」


「はい」

加藤がそう言って頷くと四宮は,


「ではもう一度聞く。我妻美華さんを救う気はないか?」


そう初めて会った同じように宣言した。


感想が執筆速度に関わるタイプなせいなのか,書き溜めていた分が少なくなってきてしまっています。ぜひ感想をお願いします。

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