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第3話 告白

これが今日二度目の更新になります。感想よろしくお願いします。

 その後,急いで空き教室に向かったのだが昼食を食べ終わったときにはもう昼休みは終わりかけており結局仕事にとりかかる前におわってしまった。仕方がないので放課後に手伝う約束をしてから教室に戻り授業を受ける。

 

 そしてもちろん午後の授業も、もともとの眠気と昼休みの疲労と相まってさらに眠気が増した中うつらうつらしながら授業を受けていた。

 終礼が終わると今まで必死にこらえていた眠気が急激に襲ってきていつの間にかに眠ってしまっていた。

 

 目が覚めると教室にたった一人でいる。

 時計を見ると午後五時を回っていて,運動部の喧騒が聞こえてくる。

 

 背筋をうーんと伸ばしてしていると,美華に言われていた放課後の美華のクラスの仕事とやらを手伝うと約束していたことを思い出した。


「やっばい,美華に殴られる」


と独り言をもらしながら急いで美華がいる三組へと向かう。


 三組に入ると,美華はたった一人で教室にいた。美華の席は前から二番目の一番左の席らしい。美華はそこに座っている。


「おーい美華」


 声をかけながら近づいてよく見ると美華は眠ってしまっていた。


 起こそうとはおもったのだが美華が本当に気持ちよさそうに眠っていたのでそのまま寝かせてあげることにした。立ったままでいるのもいやなので,美華の前の席に座ることにする。 


(本当にこいつはよく見れば見るほど美人なんだよな)


加藤は美華を横目で見ながらそんなことを思っていると,美華はなんとか起きたようで,目をこすっている。


「悪い。起こしちゃったか」


「うん?おはよう………英くん」


「だから英くんって呼ぶな。」


そう言いながら加藤は美華にデコピンをしながら言う。すると美華はハッとして,


「寝顔………見た?」


真っ赤な顔して言う。


「まあ……見た……けど」


美華があまりに顔を赤くして言ったせいで,何故か加藤の顔も赤くなってしまう。しかし加藤はすぐに落ち着いて,


「だからなんだよ,おまえは起こしに来たときよく俺の寝顔を見てるだろ」


 加藤は今まで気にしたことはなかったが,美華は加藤を起こしに家に来ているときによく寝顔を見られているはずである。

 しかし,美華はいまだに顔を真っ赤にして本当に恥ずかしそうにしながら,


「うるさい,うるさい。見るのと見られるのとじゃ全然違うでしょ」

 


「なんだよ。俺だけ見られるって理不尽じゃないか」


そう言い返すが華麗に無視されてしまった。美華は自分の顔をペタペタと触っている。どうやら自分の顔に何かついてないか確認しているのだろう。


「むー」


そうやって上目遣いで睨むように見てくる。


「なんだよ」


「変な顔してなかった?」


「普通にかわいい顔してたぞ」


美華のいつもと違う弱気な様子がかわいらしく,ついつい本音がでてしまった。


「へ,かわいい?」


美華はもともと赤かった顔を,さらに赤くさせる。


「な,何でもないぞ,それより仕事ってどれだ?」


加藤はそんなふうについつい早口になって言う。

しかし,美華は俺の話を聞いていないようで,


「かわいいって言われた」


と美華は後ろを向いてつぶやいている。美華はすっかり自分の世界に入ってしまっているようだ。美華をこっちの世界に引き戻そうと,背中をつつきながら,


「おーい,美華」


そう美華を呼ぶと美華はまだ自分の世界に入ったままのようで,思いっきりキョトンとした顔をして,


「へ,何?」


「仕事ってどれ?」


「ああ仕事ね。ええとこれを全部切り分けてほしいの」


鞄から取り出された紙束が机の上に置かれる。その紙束はパッと見ただけでもかなりの量があるとわかる。それを見るだけで明らかに大変な仕事であることがわかる。それを見て,ついため息をついてしまう。


「なんでこんなにたまってるんだよ。ほかの人に手伝ってもらわなかったりしなかったのか」


しかし,美華もあははと空笑いをして,


「ごめんね。みんないそがしいらしくて,きのうも遅くまで起きて頑張ったんだけど全然終わんなくて放課後もすぐやろうと思ってたんだけど,寝ちゃってて」


美華は本当に頑張ったらしい。疲れ切っているようだ。


「ええとお願いしてもいいの?」


美華が上目遣いで聞いてくる。そんな顔をされてしまうと大抵の男子は言うことを聞くほかない。


「はあ,わかったよ。手伝えばいいんだろ」


加藤はそうやって渋々といった体で引き受ける。


「ほらため息つかない。幸せが逃げていくよ」


「誰のせいだよ。誰の」

 

 美華が自分の席に座ると俺も早く仕事を始めようと急いで美華の前の席に座り,作業を開始しようとする。


「で,どうすればいいんだ」


「ええと,これをこうやって……………」


美華はスッスッと紙を要領よく切り分けていく。


 すると,美華は切ることに集中しすぎたのか自然と顔が近づいてきている。

 そして,息遣いが聞こえる距離まで近づいてくる。あまいフローラル系の香りが鼻孔をくすぐる。


(近い近い近い近い)


加藤は何とか離れようとのけぞってしまう。そのせいで,美華が何やら説明してくれていたのだが全然頭に入ってこない。


「ねえ,聞いてる?」


加藤が聞いていないのが察したのだろう。こちらを上目遣いで見てそんなことを聞いてきた。すぐ近くで目が合い,ドクンと胸が高鳴る。


「聞いてるけど………ちょっと近いぞ」


「えっ!」


美華はようやく気付いたようで,バッと離れながら,


「ごめん」


「お,おう」


何となく気まずくなり,一時の沈黙が生まれる。だが,早く仕事を始めなければならないので,なんとかその沈黙を打ち破ろうとすることにした。


「さっさと仕事始めるぞ。で?どうすればいいんだ?」


「ええと,これをこうして………て,話を聞いてなかったの?」


「悪かった悪かった。ほら早く始めないといけないし,とりあえず教えてくれよ。」


「なんか適当じゃない?まあいいけど」


美華はもう仕方ないなあとでもいいたげだったが,すぐに説明し始めた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


―――パッと見た感じかなり多そうに見えた紙束だったが二人でかかるとどんどん減っていき意外とすぐにあとすこしという段階になった。

 そろそろ黄昏時のようだ。外を見ると窓から夕陽が入ってきている。部活動をしている生徒などぼちぼち帰り始めている声が聞こえる。どうやら,完全下校時間が迫ってきているようだ。


「そろそろ帰るか」


日が落ちそうになっている様子を見た加藤は黙々とカッターで切り分ける作業をしている美華に話しかける。


「あ,ちょっと待ってあと少しで終わるから。先に準備しといて」


「わかった」


加藤は美華にいわれた通りに自分の教室へと戻り,家に帰る準備を終わらせに自分の教室へと戻ることにした。


 準備を終わらせて美華がいる教室に戻ると美華は窓の外を見ている。何を見ているのか気になり美華の隣に並び加藤も窓の外を覗く。すると夕日が沈みかけていて,美しいオレンジ色の光が雲と雲の隙間から入ってきていてとても美しい。正直この説明では足りず,言葉にはできない美しい景色が広がっている。その景色に思わず見とれてしまい,


「すげー」


加藤は思わずそう声が漏れる。


「うん,きれいだね」


そう美華は感嘆の声を上げる。


「天使の梯子」


加藤は思わず知っている知識を披露したくなりぽつりとつぶやく。


「うん?」


「この光,天使の梯子っていうんだってさ」


 こんな知識を加藤が知っている理由は,アニメで身につけた無駄知識のおかげだ。こんな無駄知識がこういう時に役に立つとは思いもしなかったが。


「天使の梯子か………すごいね」


 それから,しばらく二人とも無言で外の景色を眺めている。すると,美華は突然,本当にじっと目をして,美華が明らかにいつもと違う雰囲気で


「英くん今日は手伝ってくれてありがとね」


「いやべつにどうってことねえよ。どうせかえっても暇だからな。手伝ってるだけだ」


「ううん」


と美華は首を横に振って続ける。


「英くんには小学生のころからいつもいつも迷惑ばっかりかけてるのに,私はいつも素直になれないでその………つい手が出ちゃったり,いらないおせっかいを焼いたり,私は本当にめんどくさい女だと思うの。だけど,英くんはいつも助けてくれる」


「そんなこと………」

加藤は本当に特別なことをしたつもりはないのだ。確かに美華の事はよく手伝ったりはしている。

 しかし,それは昔どうしようもなく心がつぶれそうだった時に救ってもらった恩返しを少しずつ,少しずつでもしようとしているだけだ。

 そのことを何とか伝えてようとしても言葉にできず,中途半端に言葉が詰まってしまった。


「そんなことあるの。だからあの………」


と美華は言葉を詰まらせる。

一時の間があく。

そして,美華は泣きそうになりながら,



「そんなふうにいつもこんな私を助けてくれる英くんがずっと好きだったんだよ」



美華はそう告白した。


 加藤は知っていた。美華の気持ちぐらい………知っていた。


 あんなにわかりやすい接し方をされたらいやでも気づいてしまうだろう。

知っていたから加藤はなんども踏み込もうとしていた。だけど,どうしても踏み込めなかった。なぜなら,過去がいつも加藤を縛り上げてくるから。


どうしても加藤は怖かったのだ。


 人を信じて近づくことが。そして,人に好意を向けることが,それがいくら普通のことだとしても,どうしても怖かった。


でも,また美華のほうから踏み込んできてくれた。


だとしたら,せいいっぱい誠意をもってせめて自分の気持ちを言葉にすべきだろう。今度はこちらから自分の気持ちを伝えるべきだ。


「確かに美華はいつも殴ってきたり,いつもおせっかいやいてきて面倒くさいなとおもうことはある

よ………」


加藤は,美華に告白しようとした。だが,緊張のあまりすこし間があいた。いや,あいてしまった。


「そ,そこまでいわなくていいでしょ」


すると美華はいつも殴られる時のように,何かを握り締め右腕を振りかぶり加藤の腹につきささる。



激痛が走る。



いつものように殴られる時のような痛みではなく,体験したことがないような痛みが腹部から襲ってきて思わず手を腹に当てる。


(何が起きた………?)


あまりの痛みに俺は自分の腹を見る。

すると,さっきまで作業に使っていたカッターナイフが加藤の腹に突き刺さっていた。

そして手にはべたりと血がついており,いまだにドクドクと血が流れ続けている。


いま現実で起きていることが信じられない。



「なに………するんだ………」



加藤は激痛に悶えながら必死に声を絞り出す。



「ふんだ。いくらなんでも言い過ぎたほうが悪いんでしょ!」



その声はいつもと同じ調子でいつもと同じ様子だ。


いつもと同じ過ぎる。

そのいつもと同じ様子が恐怖に拍車を立てる。


「何を言っているんだ………」


「何が?」


美華はキョトンとしている。


「何を言っているんだって聞いているんだよ」


加藤は激痛の中絞り出すように声を荒げる。


「そんなに痛かった?」

美華の様子は何も変わらず,言葉が通じない。


「あ,ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ………」


加藤は叫ぶ。激痛を,そして得体のしれない恐怖をふりはらおうと,


「ねえ,大丈夫」


美華はなぜか心配そうな顔をしてのぞき込んでくる。


「ひ,ひぃぃ………」

加藤は体を引きずりながら必死に離れようとした。


「な,何よ」


美華は何で加藤が怖がっているのか本当にわからないという様子だ。

そうしていると,加藤が叫んだことは思わぬ幸運を呼んだ。


「何をしているんだ。完全下校時間過ぎてるぞ」


そう言いながら加藤が叫んでいた声を聴いていたらしい教師が教室に入って来る。

「だ,大丈夫か」

 加藤が刺されている様子に気がついたのかその教師は駆け寄って介抱される。

 人が来た事ではっていた気が抜けてしまい,血が抜けていたこともあり,徐々に気が遠くなっていく。


「美華,なんで?」


気がどんどん遠くなっていく中,美華が目に入りそんなことが頭の中でこだましていた。そして,ぷつりと意識が飛んだ。


次回も見ていただけると助かります。

次回の更新は明日の予定です。

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