第9話 恐怖
過去編の我妻美華視点から始まります。
あたし,我妻美華はいつも英くんに救われている。
たしかあたしの初めての記憶さえも英くんに救われる時から始まっている。
たしか,あたしと英くんが4歳か5歳のころ川の下に秘密基地を作った。そこを家にしてママゴトをして遊んでいたときのことだ。
「はい,あなた」
幼い時の美華がたどたどしい様子で水を差しだす。
「カーッ!うまい」
英くんはお父さんのまねをして水を飲みほす。
水を飲み干し終わり少しした後に英くんは突然立ち上がり,
「僕は,ゾウ山に武器を取りに行って来る」
ゾウ山とは像の形をした山で英くんはよく一人で武器という名の枝を取りに行っている。そこにはいつも英くんは美華を置いて行ってしまう。なので美華はいつも一人ぼっちでいるのがあまり面白くない。
「美華も行く」
「ミーちゃんはここで待ってて」
「やっ! いくの! 」
英くんはいつも少し食い下がればいつも結局美華の言うことを聞いてくれる。
「えー!ミーちゃんいつもついて来れないじゃん」
「ついていけるもん!」
「もう仕方ないな。じゃあ,ついて来れるんだったらついてきてもいいよ」
ほらやっぱり折れてくれた。そう思う。
「わかった!」
美華は一人寂しく待つ時間が無くなるのが本当にうれしくて笑う。
「隊長は僕でいいよね」
「うん!」
「じゃあゾウ山に向けて出発進行!! 」
「おおーー」
そういって美華たちは付近にある山に出発した。
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「あれ?」
あたしはふと周りを見渡すとどちらを見ても林が広がっていて一人ぼっちになっていた。
「英くーん! どこいるのー!」
一緒に来ていた英くんの名前を呼びあたりを見渡すが返事はなくただこだまする音が響いて自分の声しか聞こえない。
「どこいるのー?」
あたしはその時まだ英くんは近くにいると思っていたので叫びながら英くんを探して歩き出す。
たしか一緒に武器という名の棒を必死に探していたのだがあたしは全然興味を持てずにどんどん先にいって森の奥に行ってしまったのだろうと思い,どんどん森の奥に入っていく。
それから足が疲れるほど英くんを探して歩き回ったけど全然英くんは見つからない。
「もう疲れたよ!」
そう言って美華は手ごろな木に座り込み,英くんが来ることを待つことにした。
そこから何時間か待った。
だんだんと日が落ちてきれいだった夕やけもすでに消えかけ暗くなっていく。
するうと,このままずっと一人ぼっちなのかもしれないと思い,あたしは急いで山を下り始める。あたしはその時闇におびえて急ぎ過ぎていた。
そのせいだろうか。あたしは思いっきり木の根に足を引っかけてしまった。
「あっ」
そう思わず声が出て,体制を整えようとしたけどもう遅く,転げ落ちる。
「痛ったあ」
激痛に耐えきれずそうつぶやき自分の足を見ると今までしたことのないようなケガをしていた。
なんとか立ち上がり進もうとしたのだが足に力が入らず数歩歩いただけで倒れてしまう。
「あ,う,あーん。あーん。誰かあ 英くん助けてよ」
痛みと寂しさにこらえきれず泣きだし始める。空はもうすでに暗くなっている。それは余計にあたしの不安をあおった。
すると,ガサガサと草木をかき分ける音が聞こえる。おそるおそる音のする方向を振り向く。
すると,
「ミーちゃん大丈夫?ケガしてない?探したんだよ」
そこには手を伸ばした英くんの姿があった。
「英くん?英くん英くん」そう言って美華は英くんに抱き着き,
「もうどこ行ってたの?遅いよ」
あたしは涙ながらにそう言う。
「遅くなってごめん。ほらいこう」
そう言われて美華は立ち上がろうとした。
「イタっ!」
さっき転んだ時にできたのであろう傷が痛みうまく立ち上がれなかった。
「もうしょうがないな」
英くんはそう言いこちらに背を向け座る。どうやら英くんはおぶってくれるようだ。
「ありがと」
あたしはお礼をいっておぶってもらうことにする。
子どもの力では同じ子どもの体とは言えおんぶするのはかなり厳しいのだろう。英くんは「はあはあ」と息を荒げながら山道を必死に降りていく。
そんな英くんが心配になり,
「大丈夫?」
あたしがそう尋ねると
「うん」
そう英くんは頷いた。
その背中はいつもおぶってもらっていた父の背中に比べると頼りない背中ではあるがなぜか安心する背中だったことを覚えている。
それから英くんはあたしと一緒に叱られてくれた。
そうやって美華は英くんに救われた。そんなことが何回も起こってその度に美華は英くんに救われた。
美華はきっといつも救ってくれる英くんに依存してしまっていたのだろう。
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あたし,我妻美華はふと月の光がまぶしくて目を覚ました。
周りを見渡すと病室らしく単一の色で塗りつぶされている孤独で無機質な部屋だ。
美華がこの無機質な部屋にきてもう2週間もいるのにいまだに慣れない。
本当にこの部屋が嫌いだ。この部屋に強制的に押し付けられることで思い出したくはないのだが彼女を思い出させられる。
「はあ」
ふと美華はため息をつきこの2週間何があったのかを思い出すことにする。
「美華 なんで・・?」
美華は加藤がそう言ってから意識を失うまで自分が何をしたのかを全く気が付いていなかった。
ただふと記憶がとび,気が付いたら加藤は蹲っていた。
「どうしたの?」
そう言ってつぶやき近づく。すると,床に赤い液体が広がっている。
「え?血?」
なんで?何が起きたの?誰がやったの?でもさっきまで美華と英くんしかいなかった。あたしがやったの?と美華そんなふうに混乱してしまう。
「君がやったのか」
そう英くんを介抱していた先生こちらを疑うような眼で見てくる。否定しようと思ってもあたしがやった以外に考えられない。
(そんな目で見ないで!あたしはやってない。覚えていないの)
「え?え?え?」
何が起きたのかまったく理解が出来ず後ろに下がり座り込んでしまった。
あれから少し経ち警察や救急隊員がおしよせてきた。
美華はあれから少し考えたのだが何が起きたのかいまだに理解できず茫然自失としていると警察らしい人がおそらく事情聴取をしに来る。
「警察の橋本だ。あなたは我妻美華さんですね。少し質問してもいいかな?」
「はい」
「君がやったってことで間違いないね」
「たしかに美華が刺したかもしれないですけど。美華にはその時の記憶がないんです。あの本当に美華が刺したんでしょうか?」
「なるほど。君もか」
橋本はなにやら考えているようにつぶやく。
「君も?」
「いやなんでもない。記憶がないのかまあいい手を出してもらおうか」
「分かりました」
美華はそう言っておとなしく手を出す。
ガチャそう冷たい音が響き,手に冷たい手錠がつけられた。
パトカーに乗せられてついていった先は国立病院だった。
「ここなんですか」
美華はてっきり刑務所に入れられるものだと思っていたのでここに連れてこられたのが以外で尋ねることにする。
「ああ,君はね。おそらくウイルスに感染している。記憶がとんだのもそれが原因だろうね」
「本当ですか。それならあたしは無罪ってことになるんじゃ」
「あのさ。君は自分が何をしたのか。知らないわけじゃないよね」
そう言われて美華はあの時のことを思い出す。
(そうだよね。あたしが許されるわけないよね)
美華はそう思っていると,その警察官の橋本という男はそれにも続ける。
「いくら君がわざとではないとはいえその罪を払おうとは思わないのか」
美華は確かに許されないことをしたかもしれないと思いそう続ける。
「罪を償うって何をすればいいの」
「そのウイルスの研究に複数の実験体が必要だ。その実験体になってもらう」
「実験体?」
「そう実験体だ。」
「実験体って何をすればいいの?」
「なに,簡単さ。君はとある映像を見てもらえばいい。それだけで君はきっとMVウイルスを発症する。
その結果,ウイルスの発症条件など調べる実験の実験体だ」
美華はウイルスの発症していた時のことを思いだす。
自分のしたことが分からず,自分の体が言うことを聞かず何をするのかわからない。そんな感覚は正直
もう二度と味わいたくない感覚だ。
「いやで・・キャッ」
美華が拒否しようとすると橋本は手錠を突き付けられるように手錠を引っ張られる。
「拒否権があると思うのかい」
「こんなことしてもいいと思ってるの?」
「ここに連れてきた意味が分かってないみた
「何?」
「ここは国立病院だ。つまりこの実験は政府公認なんだよ。それぐらい気付いてくれたまえ」
「・・はい」
美華はそう引き受けるしかなかった。
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「君の部屋がここだ。」
そうやって案内された部屋はただの病室だ。
その部屋には一人少女がベッドの上に座っていた。その少女は入念に手入れされた黒く長い綺麗な髪に,完璧とすら言えるきれいに整った顔,細く美しいスタイル。女の美華ですら見とれてしまうような美人だ。
しかし,彼女はどこかはかなく,触れれば消えてしまいそうな少女だ。
「では私は行くから同じ部屋どうし仲良くしろよ」
そう言って橋本は美華をベッドに繋ぎ止めて出ていく。
美華は突然初めてあった人と二人きりで取り残される。
(えーと何か話をしないと)
ここに何日いるかわからない。このまま気まずくなってしまうわけにもいかないので何か会話を探しだし,
「あの,名前聞いてもいい」
「名前を聞くならば,まずあなたから名乗るのが礼儀じゃないかしら」
「あ,ごめんなさい。あたしは我妻美華。よろしくね」
「白井さやかよ」
さやかはこちらに目も合わせないで冷たい声で答える。
その冷たい声にはさっきすら混じっていそうな声であった。その声に美華は圧倒されて何も話せなくなってしまう。だが,美華は再び勇気を振り絞り,
「あ,あのええとよろしくね」
「ええ」
さやかは端的にそれだけ答えると黙ってしまい,またこの場の雰囲気は凍り付いてしまう。
美華は心がくじけてしまいそうになるが,この凍り付いた雰囲気に耐えきれず,
「趣味とか聞いていい?」
「別にあなたに答える必要はないでしょう」
「じゃああたし高1で同じくらいだけど白井さんは何歳?」
「同じ高1よ」
「じゃあ同じだ。同い年どうし仲良くしようね」
そう美華は仲良くしょうという意思を見せたのだが,
「嫌よ」
さやかはそうぴしゃりと言われてしまう。
「いいじゃん。仲良くしようよ。さやか」
「な,なぜもう下の名前で呼んでくるの?」
「いいじゃん」
そう美華は笑い話しかける。
美華は人の距離を縮めることは得意だ。ただ自分のことを教えて相手のことを教えてもらえるように踏み込む。自分のことを教えることが出来れば相手も安心してくれることが多い。
「嫌よ」
だが美華の奮闘もむなしくさやかはこの言葉も拒絶し,それっきり黙ってしまった。
「・・・・」
美華にとってでさえもここまで拒絶されたことは初めてである。そのせいで黙ってしまった。
それからの実験体としての日々は本当にひどいものだった。
常に監視され常に自分の体調を機械により観察され続けるそれだけでも十分ストレスになるのだがそれだけではない。
ご飯の時以外はすぐに感情を動かせられるビデオを見せられる。
そのビデオ自体はいいのだがたまに記憶がとぶ。気がつくと体中が痛み自分の周りの様子が明らかに変わっている。
それが恐ろしい。
自分の体が自分意思以外で動いているのだ。それが怖くないわけがない。
しかもおそらく発狂しているらしく一回記憶がとぶだけで著しく疲労する。それを一日中見させられ何回も起こる。
(気まずい)
美華はあれから何度もさやかに話しかけようとしたけれど,さやかは今だに美華に心を開こうとしてくれない。
こんな沈黙は甘えにも気まず過ぎるので,美華は何を話そうかといろいろ思案する。
(そうだ。こういう時は恋バナだよね。恋バナの嫌いな女子なんていないはず)
「ねえさやかはさあ好きな人とかいないの?」
「好きな人?」
「うん,いるでしょ。花の女子高生なんだから」
「す,好きな人なんていないわよ」
さやかは焦ったように美華から目をそらして言う。
「いるんでしょ。さやか。そんなに焦っちゃって」
「い,いないわよ。そんな好きな人なんているわけないわ」
「いるんでしょ。ねえ」
そう美華がさやかに聞いてみると
「私には一人好き・・気になる人がいて。その人は部活が一緒で,私は最初その人に冷たく当たっていたけれど,その人はそんな私と友達になってくれた。その時から私は少しずつその人を気になりだしたけれど,その人はまるで私の気持ちを気付いてくれないのよ。ねえ信じられる?私の視線もまるで気付いてくれないのよ。いくらなんでも鈍感すぎるのよ」
美華はさやかがその気になる人のことになると饒舌になったことに少し驚いた。
「うんうん」
しかし美華はさやかがようやく自分のことを話してくれたことを嬉しく思う。
「私はいつも彼からの告白を待ってばかりだった。だから今度もしこの実験が終わって解放されたとしたら今度は私から彼にこの思いを伝えたい。そう思ってるわ」
「うん。すごいね」
さやかはきっと真剣に恋している。それが良く分かったので美華は尊敬のまなざしを向けるとともに美華が頷く。
すると,さやかは自分が話過ぎたのに気付いたのかハッとしたような顔をし,「ご、ごほん」わざとらしい咳ばらいをひとつしてから,
「あなたも私に話させたのだからあなたも話してくれてもいいのではないの?」
「あたしの好きな人か・・」
そうつぶやきながら,美華は加藤のことを思いだす。
「いるにはいる・・・かな」
美華は少し照れて顔を赤くなる。
「どんな人なの?」
さやかは真剣な目をして聞いてくれる。
「幼馴染で,ずっとずっと一緒にいる人だよ。その人はいつもあたしを助けてくれた。そんな彼をあたしは十年以上前からずっと好きだったのよ」
そこで美華は一息入れる。
「でも彼はあたしが今の関係以上になろうとしてもいつもどこか怯えたような表情をするの。だから今まであたしは踏み込んでこられなかったんだ。でもそれじゃだめだそう思ってこの前告白したのよ」
そこで美華はそれ以上先を話したくなく言葉に詰まってしまう。
「本当に?それで結果はどうだったの?」
「返事は聞けなかったの。その前にあたしは・・あたしは英くんを・・殺し・・かけたの」
美華は目に涙をため,言葉をつまらせながら話す。
「それは・・・ごめんなさい」
さやかは閥の悪そうな顔をして謝った。
「ううん。あたしから先に聞いたし,気にしなくてもいいよ」
そう美華が涙をぬぐいながら言う。だがさやかは「でも・・」と言い,いまだに閥の様なママをしたままで気にしているようだ。
「いいの!それよりやっとたくさん話せたね」
そう美華は笑いながら話しかける。
「そうね。私は冷たい態度をとっていたせいで全然話していなかったわね」
さやかはどよーんとでも聞こえてくるような空気を出しながら力が抜けたように背中をベッドの背もたれに体重をあずける。
「だからいいって言ってるでしょ。これからよろしくね」
そう言って美華はさやかに向かって手を伸ばす。
「わかったわ。よろしく」
さやかはそう言ってから手を伸ばし美華の手を握った。
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それから美華とさやかはいろいろなことを話した。
危機的な状況も相まってか,美華とさやかはどんどん仲良くなり,話せないことがないまでの関係までになっていた。
しかし,実験の激しさはますます厳しくなる。
それはストレスとなり溜まっていく。
そして,事件は起きる。
それはたしかあの事件がおきてから一週間くらいたった時の実験がようやく終わった時だっただろうか。
「やっと終わったわね」
そう隣のベッドからさやかが話しかけてきた。
「そうだね。さやかは大丈夫?顔色いつも以上に悪いけど」
さやかは本当に顔色が完全に青くなっているので心配して聞く。
「わたしは大丈夫よ。あなたこそ大丈夫」
さやかのその声は何か今にも消えてしまいそうな危ういものが含まれていそうで心配になる。
「あたしは大丈夫だけど,さやかこそ本当に大丈夫」
「ええ」
さやかはそう言い終えるとふらっとして倒れそうになり頭を押さえる。
「ちょっと大丈夫?」
「大丈夫と言っているでしょう私は疲れているのよ少し黙っていて」
「そんなこといったって・・」
「黙っていてと言っているでしょう。」
さやかはそう叫ぶ。
「・・・」
そのさやかのあまりの迫力に美華は黙ってしまう。
「わたしはもう疲れたのよ。なんなのよ。わたしはやりたくてやったわけではないのよ。それなのに何故その憶えていない罪を償わされることを強制されなければならないのよ。」
さやかはそう言ってのどをひっかき始める。
「ちょっとさやかやめて」
だが駆け寄ろうとしてもベッドにベルトのようなものでつながれており身動きがとることができない。
「なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで・なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?なんで?・・・」
さやかはそう叫んでのどをひっかき続ける。
「これって例のウイルスってやつが発症してるの?ちょっと誰か来なさいよ。さやかは死にかけてるのよ」
美華のその声はむなしく響いているだけで何も起こらない。そうしているうちにどんどんさやかの首の傷は広がっていく。
「お願い。さやか。死なないで。やめてよ。さやか」
そう願うよう叫ぶと,ようやくウイルスの発症が収まったのか自虐行為をやめる。
「う,痛い痛いよ。なにこれ何でこんなに血が出てるの,嫌だ死にたくない。美華ちゃん助けてわたし死にたくない。死にたくないよ」
さやかはそう言ってこちらに向かって手を伸ばす。美華もその手をつかもうとして手を伸ばすが届かない。届くはずがない。
「お願い。誰か。誰か来てよ。誰かさやかを助けてよ」
そう叫ぶとようやく医者や看護師がおしよせてきておそらく治療室へとさやかを連れていく。
「お願いします。誰かさやかを助けてください」
美華はそう祈ることしかできなかった。
それからさやかはもう二度と帰ってこなかった。
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「あ,ああ・・」
そこまで美華はさやかの事を思い出してしまい,発狂しそうになる。
だが美華はそれを必死に抑える。それを許してしまったら美華はさやかのようになりかねないのだ。
「あたしは死にたくない。死にたくないよ」
こんなことが何回も起こり油断をする暇もない。本当に一瞬の油断で死にかねないのだ。
「あたしが何をしたっていうのよ」
何もやってないじゃないか。やりたくてやったわけじゃないのに。
「誰か助けて・・誰か助けてよ」
そうつぶやくとふと美華の頭にはふと加藤の顔が浮かんだ。
「なんで英くんのことを思い出すの」
美華は加藤を殺しかけた。
「あたしは英くんにひどいことをしたなのに。英くんが助けに来るはずがないじゃない。」
そんな当たり前のことなはずなのに美華はなぜか加藤のことを思い出した。
「なんで・・なんであたしは英くんのことを思い出すの」
美華は加藤のことを思い出しながら考える。初めての記憶やずっと一緒に過ごしてきた中学時代やこれまでの高校生活などを思い出す。すると,思い出した記憶からふとわかる事がある。
「そっか,あたしはいつも英くんに助けられてばっかりだったからか。それで,あたしはきっといつもと
同じように英くんに助けを求めてるんだ。」
美華はいつも加藤の助けをすがっていた。だから加藤はいつでも助けに来てくれる。美華はそう思い込んでしまっていた。
そうやって美華は加藤に対して依存していたのだろう。
「でもきっと英くんは助けに来ない。あたしは何をやったか覚えてないわけない。あたしは英くんを殺しかけた。きっと英くんは助けに来ない。」
そうつぶやきながら目から涙がこぼれてくる。
「それに・・英くんはもうあたしのことを嫌いになってしまったよね」
十年以上思ってきた美華の思いはこんなことで終わってしまった。それがとてつもなく悲しい。
「何でこんなことに・・もう嫌だ・もう嫌だよ」
「誰か,誰か助けてよ」
美華のその叫びは誰にも届かず消えていった。
投稿が遅れてしまい申し訳ありませんでした。すこし今忙しいのでしばらく更新速度が落ちます。申し訳ありません。完結までもう少しですのでしばらくお待ちください。




