7.
「王よ、お待ち下さい‼︎」
大扉が開け放たれ、大音声で発された言葉に私は熱い涙が込み上げました。
「お父様‼︎」
最早、歓喜の声となりましたわ。
この国きっての力ある筆頭貴族の長ですもの。
頼りになる、そして私にはとことん甘いお父様ですわ。
「不当に囚われておりますの。お父様、どうか私の冤罪を晴らして下さいませ」
衛兵が止めるのも振り切り、お父様は脇目もふらず
私の方まで大股で歩み寄って来て下さいます。
「私の可愛いアデライド、何て事になっているんだ⁉︎」
お父様も、僅かながら癒しの効果が使えますの。
「お父様、全身が痛むのです。どうか」
かつてない程、お父様は怒りの表情となり、次いで心配気な顔となり、私に向けて大きく手を振り上げて下さいます。
「お父ーー」
言い切る事なく私の言葉は、私を心配して下さるお父様の手に寄って激しく打擲されました。
大貴族であるお父様の登場で衛兵の掴む手は緩んでいた為、私は吹き飛び、明滅する視界のまま誰かに助けてもらえる事もなく頭から壁に激突しました。
考える事も出来ず、口から血泡が止め処なく吹き零れ、意識を手放しましたーー
「パフォーマンスであるのなら、大したものですな。
ルドー公爵」
慇懃無礼に呟く宰相。
「王陛下よ。王子、並びにルシー伯爵、ご婦人、宰相閣下、皆々様に此度、我が娘、アデライドが掛けました数々のご迷惑、理不尽な行い、深く悔恨の念を持ってお詫び致します。謝って許されるべくもありません。奪われた命は戻りませぬ。不肖の娘、されど私とは血の繋がりのない亡き妻の連れ子でございます。つきましてはアデライドとは本日付で養子縁組を解除し、自らが忌み嫌っていた庶子として刑を執行して頂きたく。権力欲の強き所は誰に似たのか……。いやはや」
「ルシー伯爵夫妻にとっても、私にとっても今回の事は到底許せる事ではないんだ、ルドー公爵」
「はっ。王子、ごもっともでございます。」
「だが、アデライドが庶子として刑が執行されるのは良い案と言えるだろう。彼女にはリリアナの痛みを少しでも知り、慚愧の念に駆られながら生を終えてほしく思う。彼女には人としての、何か大切なものが欠落しているのだ」