5.
「起きろ」
見知らぬ兵に起こされました。
「……?」
ブレインに掛けられた古語魔法は解けている様でしたが水分のない、乾いた唇からは何も発せられませんでした。
歩く様に促されるものの、全身に痛みを感じ、少し動かそうとしても、激痛が走ります。
「っう、ああっ…」
激痛が走るまま、気の立った兵に両腕をそれぞれに掴まれ、早足で訳も分からず連れて行かれます。
「痛っ……っぐ……」
悲鳴も見返られず、酷い有様のまま連れて行かれた先は王の面前でした。
「跪かぬか、王の面前ぞ」
厳しく宰相に言われるも、立てないのです。
力が入らない足では無様に倒れてしまうでしょう。
「良い。そのままで、アデライド公爵令嬢は嘘偽りなく答えよ」
厳かな王の声が響きます。
「っ……あ」
仰せのままに。伝え様にも発せられません。
「ブレイン、乾きと癒しの魔法を」
宰相に言われるままブレインは私に近付き、乾きを無くす魔法だけを掛けました。
潤いは感じられたものの、痛みは変わらず私を苛みました。
「アデライド公爵令嬢、話せるな?」
「はい。」
「酷いものだ。もう少しやりようがあったのではないか」
王が痛ましげに目を細めて下さいます。
「陛下、恐れながらーー」
深妙な顔つきでレヅィールが進み出
「アデライド公爵令嬢は、謝罪を求める我々に対し大した感情もなく「そう、死んだの」と言い放ち、王子だけでなく大広間にいる全ての学生の前で「王族の権威も落ちたものだ」と一刀両断に切り捨てました。日頃から平民等生きる価値もなく、息を吸うだけ無駄な存在であるのだから、所詮、庶子のリリアナ伯爵令嬢を惨たらしく殺した所で罪を言われる事は何らないとーー」
「ああああああっ〜‼︎リ、リリアナ、私達の娘を……うううっう〜っ」
ルシー伯爵夫人が狂乱の悲鳴をあげ、泣き崩れます。
「王……、庶子であれどリリアナは実母を亡くし幼き時より私達の娘として今日まで、今日まで……ううっ……どうか、王、罪なき我が娘の為に遺された私達の為にも正当な裁きを」
夫人を支えながらルシー伯爵は泣きながら訴えます。