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3.

「っ。こ、これ……に」

乗れ、と言うんですか。


ライルに乱暴に掴まれ、馬車寄せの広場まで引き摺られた私の前には、馬車とはお世辞にも言えない古びた板敷だけがある、屋根も窓もない、申し訳程度に御者席だけが作られている貧素なものです。


平民の荷物ではなく、私が⁉︎

国の筆頭貴族である、私をこれに乗せるおつもりですか……


「お、う……」


痛みと熱に浮かされながらも、私は頼みの綱であり、公正な王子へと視線を合わせます。


「ほら。王子が甘やかすから、憐れな罪人が勘違いしちゃったじゃないか」


「レヅィ、服従には鞭だけでなく飴も必要です。後、為政者にはお綺麗さも必要ですよ」


「ブレイン、御託はいいよ。ライル?」


「ああ。乗れ」


「い……い、や」


かぶりを振るが、ライルは無用にも私の両手首を後ろで荒縄で括り付け、角にある柵錠に引っ掛けました。


「甘い拘束ではないぞ」

レヅィに問われる前にライルは言う。


「わかっているよ?アデライド公爵令嬢、君にはこれから遠回りをして城に来てもらう。皆に見てもらおうね、憐れな姿を」


「っ。」


震えがきます。

彼らの情けのなさにーー

彼らも国を担う貴族。

若さ故の傍若無人さはありました。

ですが、人前で審議もなく私刑を行い、あまつさえ公爵令嬢を見世物にしようなどと‼︎


怒りが突出し、痛さを凌駕りょうがしようとします。

「あーー」

『しゃべるな』

「ーーーー⁉︎」

「君の見え透いた言い逃れは、いい加減うんざりなんですよ」


「ブレイン、聞いたことのない魔法だ」

ライルが不可思議に問い

「初期の古語魔法ですよ。近い内に当家で古史の研究結果をお知らせしますよ」

「頼もしい側近だな」

王子が笑み

「だからこそ、必要のない膿は出さないと?ね」

レヅィの言葉を合図に一切の言葉を発せなくなった私は弁解の余地なく市街地を引廻されました。


豪奢な血に染まるドレスを着込んだ、耳を食い千切られ、顔を殴打された貴族令嬢。それが、王子の元婚約者の公爵令嬢で王子の恋人の伯爵令嬢を惨殺した。


事実と異なる壮大な作り話を出任せを、王子の側近達は行く先々で話される。

軽蔑と畏怖の対象となっていく私をレヅィが満足気に見下ろすーー。


私が、何をしたとーー


血は固まりこびり付くも、未だ、私は拘束され、怪我も治されることなく無情の時が過ぎてくれるのをただ痛さと共に待つだけでした。




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