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「アデライド・ダナ・ルドー公爵令嬢‼︎
リリアナ・レイ・ルシー伯爵令嬢殺人の罪で貴様を投獄する‼︎」
学園の大広間は騒然としましたわ。
だって、そうでしょ?
今日は私アデライドとエドワード王子との婚約披露パーティーだったはず。
なのに、王子の怒声に無理やり力づくで跪かされる私。
「何とか言えっ‼︎」
「ぐっ」
王子の右腕でもある、軍閥の名門長子ライルが私の腕を捻り上げます。
淑女に何て事を、これだから野蛮人は。
「この後に及んで、王子を何という目で見るんですか⁉︎
この罪人が‼︎」
王子の腰巾着、学者一族のブレインが口汚く罵る。
「貴方達こそ、この茶番の申し開きをする事ね。
見に覚えのない濡れ衣を着せて私を貶めるなんて落ちたものね、王族の権威も」
「っ。減らず口を」
王子が秀麗な顔を歪ませ手を挙げる。
乾いた音が私達の声を聞き洩らすまいと、静寂が広まる場に鳴り響き、私の頬に熱と苦痛を同時に持たせたわ。
「レヅィ……」
所在無さげに振り上げられたままの王子の手が間抜けね。
「王子の手を汚す必要はありませんよ。下賤な女など私めの掌で十分ですよ」
言ってくれたのは、学生ながら次期宰相の呼び声が高いレヅィール伯爵家子息。
私の唇からは赤い血が流れ、広間を騒つかせるわ。
「私は無実ですわ」
私の預かり知らぬ所で陰謀?
こんな事態になるまで、当家の諜報員を欺き、お父様にも悟らせないなんて。
どこの介入で、王子達は悦に入っているの⁉︎
「アデライド貴様は私が愛するリリアナに執拗な嫌がらせを繰り返し家と派閥の貴族を使い、心身共に憔悴させ、挙句……なぜ、殺したっ⁉︎」
「リリアナ、そう死んだの」
色素の薄い儚げな女。
王子に纏わり付いていたけど、そう死んだの。
歯牙にも掛けていない、大した思い入れもない女が死んだ話を聞かされても
「興味もないわ」
冷めた口調を放った瞬間、王子に殴打されたわ。
短絡的ーー。
顔全体が熱を持ち、鼻からも血が溢れ私の思考をぶれさせる。
耳も熱く波打ち最早、広間の雑多な声を聞き取れなくなり地獄の様な取り巻き達の尋問だけが続くわ。
「王子の問いに答えろ」
「っ」
ライルが乱暴に私の髪を掴み、抑えつけていた頭を引き上げさせる。
「痛そうだな、アデライド公爵令嬢。だが、私達の喪失、リリアナ令嬢の痛みには届かぬよ」
腹黒レヅィが耳元で囁く。
「お前の派閥の貴族の粛清は早々に終わっている。
何、心配するな。お前もすぐに後を追わせてやるぞ」
尊大な口調でレヅィは私を追い詰めてくる。
見に覚えが、ないーー。