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ちゃんと話を聞いてみれば、頭ごなしに否定するほど悪い案、ではないような気はした。だが、まず、前提条件が少しおかしいのだ。
俺は結婚式については、中学時代に一度、母に連れられて行っただけで、それ以上の知識はない。ただそれでも一つ、分かることがある。
主役は、結婚するご両人だということだ。
広木は今、喋れる状態じゃない。つまり、結婚式をやろうとするのなら、やる前に、広木の気持ちを誰かが代弁して、その相手に伝えなければならないのだ。それは本来、他人が介入してはいけない領域だ。誰かが背中を押す、くらいのことはしても、口にするのは本人で、答えるのもその相手本人でなければならないだろう。
それを、他の人間がやってしまってもいいのか、どうか。
広木が喋れない以上、そうしていいのかどうか、分からないのだ。
「でも記録は、残ってる、よ」
数秒黙っていた小雪が、パソコンに目を向けて、言った。
「……あのファイルに、か?」
「うん。一度、広木と二人の時、はっきり聞いたことがあるから」
俺が知らない、ということは俺が初雪荘に来る前の出来事だろう。
読んだからこそ分かるが、小雪のファイルは絶対だ。小雪視点だから、少し偏ってはいるけれど、書いてることに間違いは見当たらなかった。
そこに、広木の気持ちが残っているのか。
「でも、だとしても、本人の許可を取らずに俺らでっていうのは――」
「じゃあ、このまま、何もしないで見送って、それで終わりでいいの?」
「……」
「私は、嫌だよ」
もし他に案があるなら出して、と小雪は付け加える。
ここでぱっと他に良い案でも出てくればいいだのが、そう簡単に出て来るはずがない。
俺だって、小雪と気持ちは同じだ。広木のために、なにかしてやりたい。たとえ数週間の仲でも、友達だったことに変わりはないのだ。小雪や亜希さんほどでなくても、やれることがあるのなら全力で協力したいと思ってる。
「案がないなら、多少無茶でもすぐに行動しないとダメだよ」
「でも、結婚式って、いくらなんでも唐突すぎないか……?」
「そう思うなら、夏希が良い案出してよ」
睨む、までいかないが、キツイ視線を送られた。
少し、瞳に水気があるようにも思える。
小雪は、明らかに焦っていた。
広木はあと一週間もつかどうかという状態だ。気長に考えている暇はない。あと一年は大丈夫と言われていたのにここまで早まったのだ。今回だって、医者の言葉を信用していると痛い目をみる可能性もある。
「……朝食まで、考えさせてくれ」
時間がないのは承知しているが、それでも、勢いで押し切るべきではない。
視線に力を込めて返すと、小雪は渋々といった様子ではあったけど、了解してくれた。




