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「俺も、それは賛成だ」
なにも言わず、ただ、賛成の意思を示す。
小雪はうん、と頷いて、「ちょっと考えたんだけど」と前置きしてから、
「恋愛を使えないかなって、思うの」
そう言った。
「今しがた、具体的なことは決まってないとか言ってなかったか?」
「あ、それは、二人で決めようってこと。最初に私の意見を言うから」
「分かった」
恋愛、という言葉がちょっと気になったが、反論はしない。
意見があるというのなら、真剣に聞かせてもらおう。
小雪も、努めて真面目な表情で、考えたという案を口にする。
「結婚式、できないかなって」
ん?
「――…………は? え、はあああああああ?」
「な、なにその反応。こっちは真面目に――」
「真面目か? それは真面目なのか? 結婚式って、俺らまだ年齢的には高校生だぞ。恋愛はまだいいとして、なにがどうなったら結婚式なんて言葉飛び出すんだ?」
あまりに突拍子のないことを言われ、反論、というよりお笑いのツッコみを入れるように早口でまくしたてる。が、しかし、小雪の方はどうも本当に真剣だったらしく、心外という表情になっている。
「ちょっと冷静に聞いてくれる?」
浮ついた気持ちなど一切ない、小雪にしては珍しいほど低い声音を発されて、黙る。
俺は反発したい気持ちを抑え、とりあえず耳を傾ける姿勢になった。
「夏希も気付いているかもしれないけど、広木には、好きな人がいたの」
「ああ、それはなんとなく気付いてたぞ」
相手が誰なのかも、な。
「その人の了解は当然必要だけど、もし、広木が――死ぬ、前にその人と結ばれるってことになったら、広木は絶対嬉しいと思う」
死ぬ、という部分を言いたくなさそうにしながらも、小雪は言い切った。
心の中で、そりゃまあそうだろうと同意する。
誰だって好きな人と結ばれたいと思うだろう。失恋や片思いも恋愛の一つ、とは言うけれど、望んでそうしたい人間などいるわけがない。できることなら、誰だって好きな人と一緒になりたいはずだ。
「それで、結婚式、か」
「うん。駄目、かな?」
自信なさそうに、上目遣いで尋ねてくる。
いろいろ説明すべき部分が抜けていた気がしなくもないが、案そのものは理解できた。
たぶん、こういうことだろう。
まず、二つの前提条件がある。
広木には好きな人がいる。
広木は死ぬ前に親御さんに少しでも恩返ししたいと思っていた。
これらを繋げてしまおうということだ。
子供の結婚式を見て、喜ばない親はたぶんいないだろう。広木の好きな相手で、その相手も了解してくれた上でのことならば、尚更だ。広木も嬉しく感じるだろうし、親御さんだって悪い気はしないはずだ。
無理は、出て来る。まず、広木の状態からして、自分の足で歩くどころか言葉を発することができないのだ。そもそも結婚式なんてことができるのかどうか怪しい。やるとしても、普通の結婚式のような盛大なものができるわけがない。
さらに、初雪荘の職員に、明らかに迷惑がかかってしまうということ。そんなことをするとなれば、万一に備えて、医師に必ずその場にいてもらう必要が出て来る。いつ誰が倒れるかも分からないこの初雪荘で、たった一人の入所者のために、そんなことをしている余裕があるのだろうか。
それに、なにより。
「もし、やるとして、それ、俺らが勝手にいろいろやっていいことなのか?」
「それはっ……そう、なんだよね」
小雪は、ぐっと口を閉ざしてしまう。




