プロローグ1
肌色。
水色と白の縞々模様。
指定された部屋――102号室――に入って、真っ先に飛び込んできた色がそれだった。
「んー?」
その肌色と縞々模様の持ち主は、気の抜けた声を発しながらこっちを向いた。
「お?」
視線が交錯する。
「あ、あれれ? えーっと、どちら様?」
肌色と縞々模様の持ち主様は、ベッド上でよっこらせと体を起こしつつ、戸惑いの表情を浮かべた。おそらく、急な来訪者に驚いているからだろう……って、冷静に分析してる場合か!
「ま、前っ、隠してください!」
「へ?」
「上が、バッチリ見えてるんですよ!」
慌てて目を背けながら叫んだ。
肌色と縞々模様の持ち主――俺と同年代と見られる女の子は、どういうわけかパンツしか身に付けていなかった。その状態で起き上がったわけなので、こちらからはバッチリ、見えていた。綺麗な線を描く鎖骨の下、二つの膨らみと、その頂上にある綺麗な桜色をした突起物が!
「お? おおお? ふおおおおおおおおっ!」
彼女自身、そのことに意識がいっていなかったらしく。凄まじいスピードでベッドのシーツを体に巻き付けた。
「外、出てますんで!」
俺は部屋を飛び出し、廊下をダッシュで駆け抜け、叩きつけるようにドアを閉めた。
だらだらと嫌な汗をかきながら、ふう、と一息つく。
「一応、連絡いってるって聞いてたんだが……」
同室が女の子だというのは事前に教えてもらっていた。
この施設は、ある事情から、男女を分けて部屋を与えるようなルールはないのだ。その結果、今日からここで住むことになった俺も当然の如く、既に女子が住んでいる部屋を分け与えられていた。
それについては説明を受け、理解していた。年頃の男と女が同じ部屋で暮らすのだ。かなり緊張していたし、だからこそ、同様に、同室になる女子も同じように緊張して待っているのではないかと想像していた。部屋に入る際にはちゃんとノックしようとか、紳士的な対応を心掛けようとか、いろいろ考えていた。
それなのに、だ。
いざ入室してみたらパンツ以外何も身に付けていない女子がお出迎えときた。
「どうなってんだ……」
大きなため息を吐く。
と、
「えーっと、そこにいるのかな?」
部屋の中から声が聞こえた。
「ん?」
「もう服着たから入っていいよ」
ドアのせいでくぐもっているけれど、よく通る透き通った声が耳に届いた。
俺はもう一度深呼吸をしてから、くるっと方向転換してドアに向き直る。
ガチャリ。
「えーと、失礼します?」
これから自分の部屋になるのに失礼しますってのも変かなと思いつつ、さっきのことが頭から離れないせいで妙に低姿勢のまま改めて入室する。
そこには――
「こんにちは。椎野小雪です。よろしく」
びっくりするくらいの美人さんが立っていた。