はぁ? 何でこの僕がそんなことしなくちゃならないの?
デュラングにつれられ、着いたそこはゲームやらなんやらでよく出てくる場所だった。
「良くぞ参られた、秋里 初瀬殿、的場 雪杜殿。
余はエリューア・ウィルク・ラーシア。ラーシア王国の国王だ」
一段高い所に据えられた豪奢な椅子に座り、跪かされた僕と雪杜を見下ろす丸々とした中年親z…体格のいい中年男性。
もうわかるだろう…ここは謁見の間。
どうやら国王や有力貴族たちとの顔合わせに連れてこられたらしい。
「わが国は魔族の侵略に非常に損害を負っておる。
勇者殿、貴殿らの力をどうかお借りさせてくれ」
爺さ……デュラングの説明によると、勇者は呼び出されると同時に強大な魔力と『能力』という何かしらの人離れした力が与えられるらしい。
まぁ、人によってそれぞれで、超能力のようなものだったり身体的な能力の向上だったりするようだけどね。
で、だ。
この国王、どう考えてもその『能力』が目当てで召喚したっぽいんだよね…
超能力系だったら大量破壊兵器扱い、身体能力だったら体のいい捨て駒。最悪魔力の貯蔵タンクにすればいい、って感じか。
…っていうか、いくら勇者として力貰ってるとはいえ『魔王討伐』とか一般ピーポーにはどう考えても無理だよね。
「……はい。ですが僕達はまだこちらに呼ばれて間もない身です。
デュラング…さんの言うような『能力』とやらもまだ何かわかっていない…
お手数だと思いますが、しばらくの間ここに逗留させてはもらえないでしょうか?」
雪杜が余計な口を開く前に僕が先に言う。
元々こんな立場だったけどさぁ…雪杜の使えなさがレベルアップしてるってどういうこと!?
え? 世界渡った弊害ですか? どうしてくれるの? 僕の苦労倍増させて何が楽しいわけ? 終いにはキれるよ?
何よりかにより、一番イラつくのは…なんで僕が雪杜のしでかしたことの後始末なんてしなくちゃなんないのか、ってことだよ!
「ふむ……確かに、通りよな。
よかろう。元々そうするつもりではあったが、貴殿らのこのシェーキア城での逗留、及び知識を与えることを約束しよう」
「……ありがとうございます」
王に頭を下げながら隣でぼんやり突っ立っていた雪t…じゃなくて、配下Aのみぞおちにさりげなく肘打ちを加え、強制的に頭を下げさせる。
「初瀬、てめぇ………っ!」
「うるさい。ぼんやりしてるのがいけないんだよ馬鹿。馬鹿なんだから空気ぐらい読め馬鹿。そんなことができないくらい馬鹿になっちゃったの? 馬鹿」
「馬鹿馬鹿言いすぎだっ! ってかもう語尾が『馬鹿』になりかけてる!?」
因みに、当然のことだけど二人にしか聞こえない程度のごく小声だ。
……そのくらいの知性は残ってたんだ…よかったぁ。
「初瀬さん…そりゃひでぇっす」
「あれ? 声に出てた?」
「出てましたよ、『よかった』ってふつーに言うんじゃなくて『よかったぁ』って伸ばしてるところに作為が感じられましたです、はい」
「よくわかったね、その通りだよ」
「酷い……っ!」
あのね、雪杜。
いくらばれてないからってこの場で泣きまねするなよ。
………これからのことを考えると、この国に長居することは危険な気がする。
『能力』がどんなのになるかわからないけど…有益なものだったら即座に縛り付けられそうだ。
帰る方法がないのは見え見えだし…さて、どうしようか。
とりあえず、目下すべきことは……いまいち状況把握が上辺だけしかできてない雪杜へきっちり説明することと、勝手に話を進めやがったことに対するお説教と行きますか♪