「外科手術(サージカル・ストライク)」
大阪へ向かう前夜。
作戦は、倫理と現実の境界線の上に立っている。
大阪へ出発する前日。夜は、砂と根来を交えた作戦の詰めだ。
モニターには、大阪万博の会場図が映し出されている。
「いいか、今回の目的は『詩島の野望の粉砕』と、特殊少女ワカバの確保だ」
砂が指示棒で地図を叩く。
「だが、無茶苦茶に暴れればいいってわけじゃない。前夜祭の会場には、世界中から要人(VIP)やメディアが詰めかけている」
砂は冷ややかな目で全員を見渡した。
「ターゲットは、あくまで詩島と特殊少女ワカバだけだ。うっかり流れ弾で他国の大使を吹き飛ばしたり、無関係なパビリオンを破壊してみろ」
「俺たちはただのテロリストとして、全世界を敵に回すことになる」
「つまり、外科手術ね」
理花は湿布だらけの指でタブレットを操作し、構造図にラインを引いた。
「標的は、詩島が使用する『第3パビリオン』と、その地下にある実験施設のみ」
「……『R-5』の使用量は最小限に絞る。建物の構造計算をして、地下施設だけを崩落させるポイントを割り出すわ」
「会場にいる人たちの避難誘導はどうする?」
雪菜が心配そうに尋ねる。
「招待客だけじゃないわ。ウェイターや裏方のスタッフさんたちだって大勢いるのよ」
「まず、根来さんが万博のメインスクリーンをジャックして、奴らの一番見られたくない『真実』を流す」
理花は淡々と続けた。
「会場が凍り付いた瞬間が合図よ」
「その隙に客席のバリアを解除して、VIPたちをパニックに陥れて追い出す」
「……ステージが空になったら、カナと氷璃、あんたたちの出番」
「派手に暴れて、残り物を掃除して、ワカバを救出する」
理花は、視線を上げない。
「招待客の大半は、体面を気にする政治家や、スキャンダルを嫌う投資家たちよ」
「真実が全世界に晒されれば、自分に火の粉が降りかかるのを恐れて、我先に逃げ出す」
「……臆病なVIPたちがパニックを起こせば、スタッフもそれに流されて避難する」
「それが一番手っ取り早い『人払い』よ」
*
体を鍛え、技を磨き、知恵を絞る。
二か月という時間は、十四歳の少女を「戦士」へと変えるには、十分だった。
次話、ついに大阪へ。
“廃墟じゃない大阪”が、理花の価値観を揺らします。
大阪には美味いもんがいっぱいあるんやで~




