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アポカリプス・ロジック ――物理の少女と、朱色の獣――  作者: 仁平 浩次
第3章:大阪万博編後編(特殊の少女たち)
10/10

「外科手術(サージカル・ストライク)」

大阪へ向かう前夜。

作戦は、倫理と現実の境界線の上に立っている。

大阪へ出発する前日。夜は、スナ根来ネゴロを交えた作戦の詰めだ。


モニターには、大阪万博の会場図が映し出されている。


 


「いいか、今回の目的は『詩島の野望の粉砕』と、特殊少女ワカバの確保だ」


砂が指示棒で地図を叩く。


 


「だが、無茶苦茶に暴れればいいってわけじゃない。前夜祭の会場には、世界中から要人(VIP)やメディアが詰めかけている」


 


砂は冷ややかな目で全員を見渡した。


 


「ターゲットは、あくまで詩島と特殊少女ワカバだけだ。うっかり流れ弾で他国の大使を吹き飛ばしたり、無関係なパビリオンを破壊してみろ」


 


「俺たちはただのテロリストとして、全世界を敵に回すことになる」


 


「つまり、外科手術サージカル・ストライクね」


 


理花は湿布だらけの指でタブレットを操作し、構造図にラインを引いた。


 


「標的は、詩島が使用する『第3パビリオン』と、その地下にある実験施設のみ」


 


「……『R-5』の使用量は最小限に絞る。建物の構造計算をして、地下施設だけを崩落させるポイントを割り出すわ」


 


「会場にいる人たちの避難誘導はどうする?」


 


雪菜が心配そうに尋ねる。


 


「招待客だけじゃないわ。ウェイターや裏方のスタッフさんたちだって大勢いるのよ」


 


「まず、根来さんが万博のメインスクリーンをジャックして、奴らの一番見られたくない『真実』を流す」


 


理花は淡々と続けた。


 


「会場が凍り付いた瞬間が合図よ」


 


「その隙に客席のバリアを解除して、VIPたちをパニックに陥れて追い出す」


 


「……ステージが空になったら、カナと氷璃、あんたたちの出番」


 


「派手に暴れて、残り物を掃除して、ワカバを救出する」


 


理花は、視線を上げない。


 


「招待客の大半は、体面を気にする政治家や、スキャンダルを嫌う投資家たちよ」


 


「真実が全世界に晒されれば、自分に火の粉が降りかかるのを恐れて、我先に逃げ出す」


 


「……臆病なVIPたちがパニックを起こせば、スタッフもそれに流されて避難する」


 


「それが一番手っ取り早い『人払い』よ」


 



体を鍛え、技を磨き、知恵を絞る。


二か月という時間は、十四歳の少女を「戦士」へと変えるには、十分だった。

次話、ついに大阪へ。

“廃墟じゃない大阪”が、理花の価値観を揺らします。

大阪には美味いもんがいっぱいあるんやで~

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