5:ポーションの噂とルナの過去
「響さんのベースで作ったポーションは凄いです!少量でも効果があるので、沢山の人達が助かりますね!」
興奮気味に語るルナ。
街にポーションを売りに行くのだが、貧しい人には、無料で配布するらしい。なんて優しい子なんだ……さすが俺の天使。
「俺も街を見てみたいな。ついて行っていいかな?」
「もちろんです!道中おしゃべりできるし、寂しくないですね!」
そんな訳で、街までリアカーを引きながら、徒歩で向かっていた。無限に収納できる鞄は存在しないらしい。
「錬金術で作れないかな、無限に収納できる鞄」
「無限に物が収納できる鞄ですか?出来たら凄いですけど、世界の法則を乱すような物は、魔法でもありませんし……どうなんでしょうね」
そもそも、無限に収納できる鞄の仕組みを想像出来なかったので、錬成はできなかった。
リアカーを引きながら歩いているわけだが、ポーションの瓶がガチャガチャと煩いし、道の窪みに嵌ったりと不便さを感じていた。これ……木の車輪を、車のタイヤみたいなのにして、ショックを吸収するバネみたいなのを車輪に付けてれば、動かしやすいよな……
そんな事を考えていたら……リアカーが淡い光を放ち、数十本のポーションを材料として、俺の想像したリアカーが錬成された。
「……響さん。しれっと錬成しないでください。売り物が減ってしまったじゃないですか」
「ご、ごめんなさい……。で、でもほら、こんなにスムーズに動くようになったよ!」
車輪は独立して上下に動き、道の窪みや段差も何のその、非常にスムーズな走行を見せていた。
「……まぁ、凄いですね。でも、他の人の眼の前でやると、色々とトラブルに巻き込まれるかもしれません。街に行ったら十分に注意してくださいね」
そうなのだ。街には様々な人がいるし、この世界は今、戦争中らしい。魔物と戦っているのかと思ったら、人間同士の戦いだという。俺の世界でも戦争や紛争が絶えることは無かった……人間は愚かな生き物だな。
錬金術師は希少性もあるが、武器の錬成などにも利用されるため、軍隊へ徴兵された者も居るらしい。俺は争いごとは嫌いなんだ。街ではルナの助手に徹することを約束し、街へと歩みを続けた。
朝出発し、お昼頃には街に到着した。
住人の数は数百人といったところだろうか。決して大きな街ではない。王都まで行くと15万人位の人が住んでるらしい。
早速薬屋へポーションを卸し、その質の良さを薬屋の主に驚かれながらも、詳しいことは企業秘密ということにし、貧困街にある教会へ向かった。
「ルナちゃん……いつも有難う。ルナちゃんの薬のお陰で、先日のお子さんも無事に元気になりました」
教会の神父さんがお礼を言ってくる。
「いえいえ、治療師が病気の方を治療するのは当たり前のことです」
さすが俺の天使。
「ところでそちらの男の方は?え、まさか……」
「ち、ち、ちがいしゅ。こちらの方は、遺跡で倒れていて、私が助けてからのお付き合いで、いえ、お付き合いというのは、そういう意味では無くてですね!今は助手として働いてもらっています!!」
ルナはしどろもどろになりながら紹介してくれた。
「響と申します。忙しいルナさんの身の回りのお手伝いをしながら、助手として働いています」
「あらあら、ルナちゃんに良い人でも出来たのかと思ったのに、残念だねぇ。ルナちゃんはいい子だから、響さんオススメだよ」
「そうですね、ルナさんは素晴らしい女性です。でも今はまだ自分磨きをしている最中なので……」
ルナは真っ赤になりながら、教会に居た治療を待つ人達の診察をしていた。
ルナは俺の天使。可愛らしく魅力的な女性だが、神々しすぎて……俺ごときが手を出して良い存在ではないのだ。
ルナが診察をしている間、俺は薪割りや、教会の椅子なんかの修理をしながら待っていると、いつのまにか日が暮れてきた。
「大変!急いで帰らないと!神父さん、また来週きますので!」
「ルナちゃん、夜道は危ないよ?泊まっていったら?」
「あーー。そうですね、またお世話になります」
夜の森は、野生動物や魔物が出て危ないのだ。俺達は、神父さんのご厚意に甘え、一晩お世話になることにした。
翌朝、ルナは急いで身支度を整え、教会を後にした。
心なし急いでいる様に感じた。
「どうしたのルナさん?何を急いでいるの?」
「響さん御免なさい。今日は、この街に軍隊が来るらしくて……」
俺は争い事が嫌いだが、ルナさんも同じで、特に軍隊を毛嫌いしていた。
「私の両親は、軍医として徴兵されました。そして、帰ってきませんでした……。あの森にある診療所は、両親が残してくれたのです。
戦争は嫌いです!大切な人達を奪っていくから……」
「国は何故、戦争をしているの?」
「最初は、どちらの国のワインが一番かで争っていたらしいです。そのうち、国境を巡る争いになったらしいです。本当にバカバカしい……」
「本当にバカバカしいな……」
ワインなんて、その土地々々の良さがあって、どこが一番という物ではないだろうに……
足早に街をあとにした俺達は、お昼前には診療所にたどり着いた。
慌てて帰ってきた俺たちは、今日はお休みにしようと言うことで、二人でお茶を飲みながら、町で買ったお茶菓子を摘まみながら、たわいのない話に花を咲かせるのだった……。
街を後にして、数日後……
ルナが卸した超高品質のポーションは、街でも話題となり、それは軍へも伝えられた。
瞬く間に傷病兵の間で《奇跡の薬》として広がり、その噂は王都の軍最高司令部にまで届いた。
そして、ポーションの製法は、戦争の行方を左右する《《戦略兵器》》であると認定された。
王都、軍部会議室――
「製作者である治療師ルナ・フォーグナーを、即時、最優先で確保せよ。これは命令だ。機密保持のため、文書による通達は省略。
拒否権は一切ない。」
最高司令官の声が会議室に響き渡る。ルナの善意は、彼女を逃れられない運命の渦へと引きずり込んだのだった。
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