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コールドスリープから目覚めたら、剣と魔法が「未来の常識」でした  作者: たくみさん
第五章 アイゼン帝国

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7:虚無の霧笛と、運命の架け橋

「オットーさん、ちょっくら、敵の物資を破壊してくるよ。」

「あーーー、まぁ、宣戦布告されてるしな。」


「よし、アトラス!行くぞ!」

 兜のHMDヘッドマウントディスプレイを起動する。右下にミニマップが表示され、目標物がハイライトされる。現在の目標は、敵の食料や軍事物資だ。

 アトラスも角が生えた兜を被っており、俺の視覚情報とリンクしている。


「行きますわーーーん!振り落とされないでねー!!」

 アトラスが地面を蹴ると、数メートル飛び上がり、空中で方角を確認。方向を変え、一直線に飛び出した。敵兵は唖然とするだけで、一切攻撃してこない。

 目前に食料の詰まった装甲馬車を刀で一閃、同時にアトラスが雷を落とし、馬車ごと燃やし尽くす。馬は切り離し、安全な場所へ誘導した。

 そのまま、次の目標まで駆け抜ける。馬車を燃やされ激高した兵士が居たが、アトラスが威力を弱めた雷を武器に落とし、兵士は痺れで武器を落とし、ひっくり返る。


「どけどけーー、邪魔する者は切る!!」

「がぉーーーーー!!」

 俺たちが怒声をあびせると、兵士達は恐慌状態になり、もはや戦いにすらならない。ついでに、モヒカン戦士の髪の毛も、刀でそり落とす。


 最短距離で、戦場を駆けめぐり、全ての物資を灰にした。

 オットーの横に戻ると、再びときの声をあげる。


 元モヒカン戦士達は、自分達の髪の毛が無くなっていることに気が付き、一部の兵士達は、逃走を始めた。それをみて連合軍から雄叫びが上がった。


「前哨戦はこんなもんだろうな。今日の兵士達は斥候や工兵と呼ばれる兵士達で、主力部隊ではない。ジン、油断するなよ。」

 オットーが俺を窘めてくる。まぁ今日の敵兵は弱すぎたしな。


「おし、ちょっくら走り込んでくる。」

 アトラスを引き連れ、走り込みを始めた。


◆◆◆


 その頃、マニエラ王国東の洋上。


 ジルは、イメージが悪いという事で、黒から白に塗り替えられた神鳥ノワールファントムを時速数百キロで飛ばしていた。機体は認識阻害の魔道具を備え、人の目で捉えるのは難しい。


 眼下には、アイゼン帝国軍の海上輸送部隊がいた。大型輸送船が三隻、そしてそれを護衛する戦艦二隻。これがヴィンデミアへの物資輸送を担う海上ルートの全てだ。


「我が主は、本当にこんな兵器を簡単に作ってしまうのだからな……。」


 ジルは操縦席で、ノワールファントムに搭載された『神の兵器』、すなわち「虚無アビス霧笛ホーンド」の起動シークエンスに入った。主から受けた命令は一つ。「輸送部隊を無力化し、航行不能にせよ。ただし、人命は最大限に尊重せよ」。


 機体の下面が開くと、巨大な光沢のある砲口が覗く。


「標的固定。発射。」


 その瞬間、深海の底から響くような、低く、ゾッとするような一瞬の霧笛が鳴り響いた。ノワールファントムから放たれたのは、光でも実弾でもなかった。それは、黒い霧状の波だった。

 波は瞬く間に輸送部隊を覆い尽くす。


 次の瞬間、アイゼン帝国の戦艦、輸送船の全てが、同時に航行を停止した。船のエンジンが停止し、魔導機関が唸りを上げなくなっただけでなく、艦載されている大砲や魔導銃の全てが、ただの鉄くずと化した。


 船上の兵士たちは何が起こったのか理解できず、大混乱に陥る。しかし、誰一人として負傷者は出なかった。ただ、彼らの持つ全ての武器と移動手段が、完全に沈黙させられたのだ。


「任務完了。これにて、海上ルートは完全に封鎖。」


 ジルは冷静にノワールファントムを反転させ、夜明け前の空へと機体を溶け込ませた。



◆◆◆



 俺の相棒アトラスの走る速度は、時速100キロを超えるらしい。流石にそれに付いていくのは無理だったが、アトラスは俺の走る速度に合わせ並走してくる。


「ご主人様、ランニングも良いですが、そろそろ向こうから大物がやってきますわん。」

「大物?」


 アトラスは、急停止した。視界のHMDに警告が表示される。『警告:大規模兵力、超重装甲反応』


 俺たちがいるのは、クロノスの架け橋へと続く緩やかな上り坂の丘の上だ。丘を越えた先、国境線である橋の向こう側から、地響きと共に漆黒の軍勢が姿を現した。


 アイゼン帝国の主力部隊だった。


 前哨戦のモヒカン兵とは格が違う。彼らは全身を黒い重装甲で覆い、手には巨大な戦斧や盾を持ち、一糸乱れぬ隊列を組んでいた。その足取りが大地を揺らし、轟音を響かせている。


 その最前列、開け放たれたクロノスの架け橋の前に、一人の男が立っていた。男は、俺達の存在に気づいているのか、俺のいる方向を見ている。


「あれが、アイゼン帝国軍の主力の指揮官だワン。ザルガス将軍、帝国最強の戦士の一人。強さが正義の体現者みたいな脳筋野郎ですわん。」


 ザルガス将軍は、他の兵士よりも一回り大きく、全身の鎧はより分厚く、肩には獲物の牙のような鋭い飾りがついていた。彼は巨大な戦鎚を地面に突き立て、その威圧感だけで空間をねじ曲げているようだ。


「……まさか、たった一人の騎士に、我が軍の補給路を断たれるとは、随分と小賢しい真似をしてくれたものだ」

 将軍は声を荒げることなく、静かに言った。


「だが、補給路などすぐに再構築する。我がアイゼン帝国が恐れるのは、臆病風と、弱さだけだ。その異形の鎧を纏った騎士よ、貴様が我々の前に立ち塞がる最後の壁か?」


 ザルガス将軍は、剣呑な目でこちらを睨みつける。その視線は、ジンという存在ではなく、ジンの背後にいるであろう「神」に向けられているようだった。


「ジン様、どうしますか?彼の力は、さっきの雑兵とは段違いです。油断はできませんわん。」

 アトラスが低く唸った。


「やることは変わらない。流血は避けたいが、敵を屈服させるには、ヤツの信念を折るしかない。」

 俺は刀を抜き、雷光を帯びさせた。

「アトラス、オットーに伝令だ、アイゼン帝国軍、ザルガス将軍を討つ。」

 アトラスは、それを受けてオットーに伝令を伝えているようだ。仕組みは分からんが、アトラスは口をパクパクさせている、見た目は凄くシュールだ。


「ま、待て。あの橋は、マニエラ王国の宝だ。破壊は許されていない。もし、あの将軍と正面からぶつかれば、橋に甚大な被害が出るぞ。」

 オットーの焦った声が、アトラスの口から響く。


「…じゃあ、俺がやるべきことは一つだ。アイゼン帝国軍を、橋から押し戻す。」

「まさか、橋の上で押し合いを?馬鹿な!そんなこと!」


 俺はアトラスの背中から飛び降りた。兜のHMDに新たな目標を設定する。


『目標設定:クロノスの架け橋、制圧条件:物理的破壊を伴わず、アイゼン帝国軍を後退させる。』


「アトラス、援護を頼む。俺の力を見せてやる。」

「了解ですわん!ジン様の剣技、しっかり見届けるワン!」


 ザルガス将軍は巨大な戦鎚を振り上げ、決戦の幕が開いた。




◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇


読んでいただきありがとうございます。温かい目で見ていただけると幸いです。

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