6:神の雷
それぞれが、それぞれの仕事をするために、走り出したのに、俺とアトラスは、のんびりお茶を飲んでいた。
「それで、おれは何すれば良いんだ?」
アトラスに尋ねる。
「ルナ…じゃなかった、イリスたちが、今マニエラ王国の国王様と会談中だワン。
それ次第で色々変わってきますので、慌てずにもう一杯お茶でも飲むワン。」
イリスの中の人は、ルナって言うのか…中の人も大変だな。
既にお茶の飲み過ぎで、お腹はタプタプだし、トイレには何回も行った、素振りでもしていようかな。
「わおーーーん、わおーーーーん」
突然アトラスが、遠吠えを始めた。
「ちょ、どうした?!アトラス!」
「着信です。僕の鼻を押してください。」
ちゃ、着信って…アトラスの鼻を押す。少し湿っている。
「よーー、ジン!聞こえるか?」
オットーの声が聞こえる。その声に連動して、アトラスが口をパクパクしている。どうやらオットーの声は、アトラスの口から聞こえるらしい。
「ちゃんと聞こえてるぞ。王様との話はついたのか?」
「おう。王様も帝国のやり方に不満を持っていてな。神も手助けするという言葉が決め手になって、帝国の要請を断り、ヴィンデミアと連合軍を作ることになったぞ。」
「それで、俺はどう動けば良いんだ?」
「アイゼン帝国がヴィンデミアに行軍するためには、巨人が作ったという伝説がある**クロノスの架け橋**を使うしかない。
クロノスの架け橋は、マニエラ王国とアイゼン帝国の国境でもある。
つまり決戦場は、クロノスの架け橋という事だな。ただ、クロノスの架け橋は、マニエラ王国の宝の一つだ。少々の損傷は仕方ないが、破壊したり崩落させることの無いようにと言われている。」
「ふふ、破壊するかしないかは、俺の筋肉に聞いてくれ。」
「いや、冗談では済まんのだわ。本当に頼むよ?」
「あっ、はい。」
「心配だなーーーーー。俺もついて行きたいけど、俺にも仕事あるんだよなーー。」
じゃあしょうがないね。
マニエラ王国にも、神の魔法が使われたらしいから、魔法攻撃の心配はないとのこと。
また、アイゼン帝国は、既に国境を越えたらしく、早急な対処が求められた。
「今タイミングをはかっているから、もう少し待機だ。」
ふーー、またティータイムか…
「ジン様、口をカプカプし過ぎて、喉が乾きました。お水くださいだワン!」
「あいよー」
あのカプカプするのは必要なのだろうか?可愛いから良いけど。
お茶に飽きて、庭園でアトラスと駆けっこをしていると、やっと連絡が来た。
「わおーーーーん、わおーーーーん!」
アトラスの鼻を押して、受信する。着信音変えられるのかな?
「オットーだ。今、正式にマニエラ王国が、帝国に兵の即時撤退を通告したそうだ。現在、連合軍と帝国軍の睨み合いの状態だ。
…ん、ああ、なるほど、分かった。
すまん、今帝国から、マニエラ王国に向けて、宣戦布告がされたらしい。いよいよお前の出番だ、充分注意しろよ。
こっちまでの移動は、アトラスに言えばいいらしい。
ジン、頑張れ!」
「ありがとう。帰ったら神がパーティーをしてくれるらしいぞ。」
「え?!イリス様も来るかな?」
「しらんわ。切るぞ。」
全くあのスケベ爺は…
アトラスに水を飲ませてから、問いかける。
「アトラス、俺を現場に連れて行ってくれ。」
兜をかぶり、戦闘モードに切り替える。アトラスも戦闘モードに切り替わる。ん?ちょっと前に見たときより大きい気がするな。
「さ、ご主人様、背中に乗ってくださいだワン。」
「お、おう。大丈夫か?俺、鎧も着てるし結構重いよ?」
「アトラスにお任せくださいだワン!」
恐る恐る背中に乗ると、子犬の時と違って、すごく堅く、しっかりとした背中だ。鞍などが無いため乗りづらいが、これは体幹を鍛えるトレーニングになりそうだな。足に力を込めれば、姿勢も安定する。
「キャインキャイン…ご主人様、痛いです…」
「ああ、すまんすまん。足に力込めすぎたか。」
「僕の鍛え方が足りなかったワン。」
いかんいかん、気を付けないと…
「それじゃ、行きますよ。酔いに気を付けてだわん。」
視界が歪む感覚を受け、瞬きをする間に、アイゼン帝国と連合軍の睨み合いのど真ん中に居た。アイゼン帝国軍は、どこかの漫画で見たような、ヒャッハーなモヒカンの軍勢だった。独特だな…。
アイゼン帝国のモヒカン兵士は、突然現れた異形の鎧を着た男に驚き、声を失っていた。
「ジン、バカ!こっちだ。」
オットーが慌てた様子で、手招きをする。
「ご主人様、その前に敵にいっちょかましてやりますワン!」
「え、なにすんの?」
「神様に貰った刀を抜いて、空に突き上げるわん。」
俺は、背中に背負っている刀を抜く。そして空に向かって突き上げると、90センチ程だった刀が、伸び始め180位の長さになる。かなりの重さだが、俺の筋肉にはちょうど良い負荷だ。
モヒカン兵士たちはその異様な変形にポカーンと口を開けていたが、次の瞬間、青白い閃光が夜空を裂き、俺の持つ刀に轟音と共に落雷した。
大地が揺れるほどの衝撃が広がるが、俺の全身を包む鎧の加護なのか、その莫大なエネルギーを完全に吸収し、俺に痺れ一つ感じさせない。それどころか、刀身全体が、まるで青い炎を纏ったかのように雷光で脈動しているように見える。
「うわぁぁぁあ、悪魔だ!」「魔界の騎士だ!」「じ、地獄の猟犬!ヘルハウンドがいるぞ?!」
モヒカン兵士達は叫び、数人は腰を抜かし、多くの兵士が恐怖に慄く中、アイゼン帝国軍から数十本の矢が打ち込まれてきた。
「ご主人様、ご安心ください。どっしりと構えて、僕の働きをみてくださいだワン!」
空から降ってきた大量の矢へ向かい、刀から無数の雷の鞭のように、空気を切り裂きながら光の筋となって延びていった。それはまるで、雷が獲物を狩る蛇のように、矢一本一本に絡みつき、全ての矢が、ただの黒い炭となってモヒカン兵士の頭上に降り注いだ。
「すげーーー!!」
「ご主人様、連合軍に向かって鬨の声をあげるわん!」
「なにそれ?!」
「えいえいおーです。えいの時に刀を上下させてください。おーのタイミングで、自軍が応えてくれるわん!」
「ほんとか?!滑ったらはずいぞ?!」
大きく息を吸い、連合軍の元に向かいながら、アトラスの言うとおりにやってみた。
「えい!えい!」
「「「おーーーーーー!」」」
地面が揺れるかのような大音量で、声が返ってきた。
「えい!えい!」
「おーーーーーーーーー!」
「えい!えい!」
「おーーーーーーーーーーーーー!」
オットーの側まで行き、モヒカン兵士たちを睨みつけてやる。モヒカン兵士は、戦々恐々とし、怯えきった目をしている。
「オットーさん!かましてやったぜ!」
「ば、ばかやろう!」
スパーーンと頭を叩かれたが、オットーの顔も連合軍の兵士同様、士気が高まっているのか、高揚していた。
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