5:そして動き出した
「で、補給路を断つとは?」
「アイゼン帝国は、マニエラ王国経由の陸路と、東の海上ルートを、利用して戦場で必要な物資を輸送するはずだ。
物資がなければ、戦線は維持できないし、短期決戦になる。」
「そうは言っても、俺の体は一つなんだぜ?」
「海上ルートは、ジルによる空爆で押さえ込む。」
「あの飛行機、攻撃能力あるのか?」
「あれは、元々王都を空爆するために、ある貴族が作ったものだ。俺が作った兵器で敵海軍を無力化してやる。」
「陸路はどうする?」
「陸路で物資を運ぶ為には、馬が必要だろ?馬なら何とかなるよな、ナノ?」
『お任せください。馬を操りましょう。』
「なんか俺いらない気もするんだが…」
「何言ってるんだ。お前がこの作戦の要だ。鋭気をやしなっておけ。」
「よし、俺たちは退散するとしよう。ジン後は頼んだ。」
「ちょ、ちょっと最後まで指揮して行けよ!」
「俺気が付いたんだよ。神は神秘性があるから、人々から敬われるんだよ。イリスみたいに、ほいほい人前にでるべきじゃない!」
【ごめんなさい、ジン様。お父様は慎み深いお方なのです。】
「慎み深い奴は神にならない気もするが?」
『ジン、ヒビキは、あまり表に出るとボロが出るので、面子を保つために、あまり神として人前に出ないように指導しています。』
「おい!お前はもっと、俺を敬えよ!」
【そうですよ!お父様の事を悪く言わないでください!】
「わ、分かった分かった。喧嘩をするな。俺が後は巧く話しとくから。アトラス、フォロー頼むぞ。」
『お任せくださいだワン!』
「あ、アトラスの事なんて言おう。勝手に犬飼ったら怒られるよな?」
「あー、そういうのあるらしいね…。んじゃ、神からのプレゼントって事にしといて。常に神と交信できる神の使いという事で。実際メイ経由で、本当に連絡は出来るからな。」
「分かった、響さん、一段落したらパーッとやろうぜ!」
「いいね。とっておきの食い物食わせてやるよ。」
「寿司食いてーな。」
「任せとけ。」
響は去り、部屋の扉を開けると、オットーが不安そうな顔で待ちかまえていた。
「む、お前誰だっ!」
突然剣を抜き、切りかかってきた。咄嗟に俺も刀を抜き、オットーの剣を受け止める。
「お、オットーさん!俺だ、ジンだ!!」
兜を被っていたの忘れてた。厨二感満載のラスボスみたいな見通しの悪そうな兜は、被っても視界を一切遮らない。さらにヘッドマウントディスプレイのような機能まで備えている。
兜を脱ぎ、オットーに顔を見せる。
「お、お前なんだその格好は!グレちゃったの?」
「グレてねーわ。神から貰った鎧だ。新しい刀も貰ったぞ。」
俺がさっき使った刀は、オットーからの貰い物だが、響から貰った刀は、超長い野太刀で、鞘に収まってる時は90センチ位だが、鞘から抜くと俺の身長と同じ位の180センチ位に延びる不思議な刀だ。それでいて軽量で丈夫な刀だが、常人に易々と振れる刀ではない。
「その、ヘルハウンドみたいな動物はなんだ…」
「神から貰った。神と対話ができる神の使いらしいぞ。今は、攻撃形態で、ヘルハウンドかもしれないけど、普段は可愛い子犬だぞ。」
アトラスは子犬形態になり、オットーに媚びを売っている。
「ふふ、可愛い子だな。まあ、神からの賜り物であれば、元の場所に戻してきなさい、とも言えないな…」
アトラス撫でながら、オットーは呟く。
「よろしくお願いしますだワン!!
あっ、喋っちゃった。てへへだわん。」
アトラスはドジっ子だな、可愛い奴よ。
「さ、さすが神の使い…。騒ぎになるから、普段は喋らないでおこうね?」
「ワン!」
「それで、神様とはどういう話を?」
俺は、まずアイゼン帝国の補給路を断つこと。ジルは、アイゼン帝国の航路の封鎖。アルトリアスは国民への説明と、マニエラ王国との交渉、防衛と政治面での仕事。そして、俺は皇帝になることを伝えた。
ジルとアルトリアスは、神から同様の説明があったようで、至って平静だったが、オットーには怒られた。
「お前は、そんな危険な事を一人で決めるなと言っていただろう?例え神であろうと保護者の同意なしでそのような事を決めるとは…これは、神に抗議するべきか?!」
「神が一方的決めた訳じゃなくて、俺も同意の上だからさ…」
「お前の気持ちは尊重したい。しかし、生き死にの戦いに行かせるんだぞ?!俺にも説明して欲しかったよ!!」
うーん、これは揉めそうだな…と思っていた時だった、優しい光に包まれて、羽の生えた女性が現れた。
「オットー様、ジン様初めまして。大天使イリスです。」
なんだろ、すごいキラキラしてるし、ドライアイスの煙みたいなのも出て来たぞ…過剰な演出だな。
「だ、大天使イリス様!」
オットーは跪き手を合わせている。
「神が失礼をしたようで申し訳ありません。神が授けた鎧には、加護が与えられており、ジンさんへのあらゆる攻撃は通らないと思います。
しかし、危険がない訳ではありません。子を思う親の気持ちへの配慮が至りませんでした、申し訳ありません。」
イリスは深々と頭を下げた。すごいなこの人、ヒビキとは、気遣いのレベルが段違いだな…。
「そ、そんな頭を上げてください。イリス様にそこまでされては、私の方が恐縮してしまいます。
それと、私はまだ独身です。」
こいつ、何アピールしてんだよ…
「ジン様には、常に神の監視が届くようにいたしますので、どうか…私たちにご協力して頂けませんか?」
「…わかりました。ジン、ヤバかったら神様に助けを求めるんだぞ!」
こいつ、チョロい奴だな…
「わかってるよ。無茶はしない、…あんまり。」
「心配だなーーー」
「ふふふ、オットー様はお優しいのですね。」
「ふふ、そんな事ありませんよ。こいつには、何時も苦労させられています。」
頭をぐりぐりするのやめろ。
「それでは、オットー様、アルトリアスさん、一緒にマニエラ王国に今後の打ち合わせに行きましょう。すでに国王には打診済みです。
ジルさん、神鳥には既に、神の兵器を搭載しています。アイゼン帝国の補給船は、既に港を出港しています。処理をお願いします。」
「はっ!畏まりました。」
ジルは、走って外に向かった。
イリスは、アルトリアスとオットーの手を取り、消えた、オットーの鼻の下を延ばした顔…
ぽつんと、俺とアトラスが残されてしまった。俺は何をすればいいんだ…
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