4:次期皇帝
膝の上で横になっていたのは⋯小さな子犬だった。
「ちょ、こいつが俺の相棒?」
「か、かわいいじゃん⋯ちょっと撫でていい?」
これは⋯シベリアンハスキー?
『ふあぁぁ、おはようございます、御主人様。今日から貴方にお仕えするアトラスと申します。』
「最初から名前あるんだな。」
『メイさんから、人間はネーミングセンスが乏しいとのことで、メイさんにお名前をいただいたワン。』
「お、突然の語尾がワン。」
『てへへ、忘れてたわん。ナノさんにキャラ付けは重要と教わったワン。』
「響さんのナノマシンたち個性が強すぎるな。」
「やっぱりそう思うか?俺もそれで苦労してるんだ。」
「まあ、話を大きく戻そうか。
アイゼン帝国が攻めてくるのを、どう処理するかだが、何か案はあるか?」
「神の力でなんとかならないのか?」
「ヴィンデミア王国の内戦は、ナノマシンで終結させたことはあるんだが、アイゼン帝国のナノマシンは、メイの力ではどうにもならん。」
「それじゃ、徹底抗戦?」
「そもそもアイゼン帝国は、ヴィンデミアに手を出せない。」
【補足しますと、アイゼンからの魔法による攻撃は一切通りません。魔導具による攻撃も然りです。お父様の厨二魔法によるものです。】
「お父様って誰のことだ?」
【お父様とは、響様の事です。】
「えっ…響さん?」
「お、お前までそんな目で見ないでくれ。メイの希望であって、俺がそう呼ばせている訳じゃないからっ!」
「あ、うん。分かった分かった。
それで厨二魔法ってなんだよ…俺の考えた最強の魔法とかって感じか?」
【お分かりになりますか?では、あなたも?】
「いや、クラスに拗らせてる奴が、数人いたかな。」
【おや…お父様は、日本人男性の86%が経験する病だと仰っていましたが。】
響が、突然円卓に頭突きをして、突っ伏してしまった。
「メイ、日本人男性の大半は、黒歴史というものを心に抱えて生きている。響の黒歴史は、厨二病という訳だ。分かっていても触れないのが、優しさというものだぞ?」
【畏まりました。ジン様はお優しいのですね。】
俺は思わず、響の肩をさすった。
【話を戻しますが、アイゼン帝国は、白兵戦でこちらを攻撃するしかありません。それでも攻め込んで来ますかね?】
『アイゼン帝国は、強さが正義の国です。力さえあれば、皇帝にもなれますワン。国民も非常に血の気の多い人たちも多く、肉弾戦は望むところだワン。』
響が、顔を上げ呟く
「だが、なるべく流血は避けたい。」
「でも響が終わらせたヴィンデミアの内戦は、結果的に国王が、民衆に刺されてるんだよな?結局、自分の手を汚さないだけじゃないか?」
響は再び円卓に突っ伏してしまった。
『ジンさん、それも言っては駄目なのです。響は正直甘い男なんです。』
【お父様は、お優しい人なんです。】
「敵が攻めてくる時には、皇帝も来るのか?」
『アイゼン帝国は強さが正義だワン。皇帝自ら戦争に赴き、前線で指揮するのが皇帝の仕事でもあるワン!』
「皇帝が戦死したらどうなる?」
【ふむ面白い考えですね。
ジンさんに皇帝を倒してもらい、新しい皇帝になってください。】
「いや、それいけるか?」
【アイゼン帝国は、強さが正義という修羅の国です。皇帝をジンさんの力で打ち倒せば、貴方が皇帝なのです。】
「俺そんな修羅の国の王様になりたくないぞ!」
「俺もそんな国嫌だな」
復活した響が、話に混ざってくる。
【とりあえず皇帝になってから考えるのはどうですか?だめなら逃げればいいでしょう?】
『アイゼン帝国の皇帝は脳筋ですが、全ての国民が脳筋な訳ではないわん。修羅の国を望まない人たちも一定数いますし、ジンさんが平和なアイゼン帝国を作るのも良いかもだワン。』
「そういえば、オリンピックは国家間の争いを、戦争ではなく、スポーツで行い平和にどうのこうのという話があったよな?」
【さすが、元オリンピック選手ですね。この世界でオリンピックを開催するのも良いのでは?、ジンさんらしい平和な世界になるかもしれません。】
「よし!皇帝に俺はなる!!」
「おっ、どっかの海賊王みたいな事言ってるな。よし、分かった。俺も協力する。
まず、ジンの装備を一新するか。」
『安全第一でお願いしますワン。』
『次期皇帝らしい派手な鎧にしましょう!』
「角とかトゲつけようぜ。色は黒で、所々に骸骨をつけて…腰の所に鎖を…」
「でたぞ、厨二病が…」
「厨二病言うなっ!」
『ジンさんだけだと心配なので、僕もいきますワン!』
【アトラスさんにもジンさんとお揃いの鎧を着せましょう。】
響「いいか?平和のためにこそ、敵を威圧する闇の支配者的な見た目が必要なんだ!」
【お父様の発案は、敵の戦意を削ぐという点で非常に合理的かもしれません。デザインは、ジン様の肉体に合わせて調整し、絶対無敵の黒鉄神威の鎧と名付けましょう。】
「勝手に変な名前を付けるなっ!」
「敵の魔法も防ぎ、剣や槍の攻撃は鎧を貫通しない。よし、性能は完璧だ!あとはやっぱり見た目だ!ほら、ジン、目を閉じて想像しろ。お前が皇帝となり正義を貫く漆黒の剣士となった姿を!」
「えー俺普通のでいいよー。」
「もう俺に任せとけ、目を閉じろ!!」
眩い光が部屋を包み込んだ。
光が収まると、ジンは全身を漆黒の鎧に包まれていた。それは確かに響が求めた派手なデザインだったが、ジンの肉体に合わせて調整されており、驚くほど洗練された威圧感を放っていた。
肩と膝には黒曜石のような光沢を帯びた、鋭角的な装甲が備わり、鎖や骸骨こそなかったが、全身のラインは禍々しく、強力な力を秘めていることを示していた。
そして、子犬サイズから成犬のシベリアンハスキー大になったアトラスが、銀色のラインが入った黒い装甲を身に纏い、どっしりと座っていた。その装甲はしなやかで、アトラスの動きを一切妨げない。
『どうだワン、ジン様!僕たち、最強にカッコいいワン!』
「ああ、かっこいいぞアトラス。」
「これでようやくスタートラインだ。ジン、次の手は決まっている。皇帝を倒す前に、まずは帝国軍の補給路を断つ。」
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