4:錬金術の覚醒とポーション革命
朝起きたら、何か使えるような気がしたのだ。けれど、火とか治療とかではないみたい。
すごいモヤモヤする。
「まあ、分からない物を延々と考えていても仕方ない。まだ、朝も早いし、ランニングしてくるか。」
診療所の周りを、ぐるぐる回りながら、何の特性が身についたのか、考えを巡らせるが、全く思い浮かばなかった。
犬のように走り回っていると、ルナから薪割りを頼まれた。斧を使い、薪割りをしながら、また思いを馳せる……。
パッカン、パッカンと小気味の良い音を立てて、薪が割れていく。あっという間に、山のような薪ができあがる。全く疲れなかった。体力は確実に上がってるようだ。
暇になった俺は、ルナの薬品の調合を手伝うことにした。ポーションの作り方を尋ねたところ、大鍋で薬草を、長時間で煮込み、ドロドロになった煮込み汁を、布で濾したものが、ポーションのベースとなる。
このベースに、治療師が魔力を注ぐことで、回復のポーション等様々な薬品が出来上がるそうだ。
「すごく単純な作り方なんだね…。製法を変えたら、質が良くなったりするのかな?」
「昔からこの作り方が基本とされています。私も、以前、製法を改良しようとしたのですが、さほど効果は上がらなくて…結局、元の作り方に戻りましたね。」
「薬草を煮るのは、低温と高温で、何か変わるのか?薬草は、新鮮な方がいい?乾燥させちゃ駄目なの?薬草をすり潰してみるのは…?」
「ちょ、ちょっと待ってください!気になるのでしたら、ベース作りを改良してみても良いですよ?勉強にもなりますので。」
早速、改良に取り掛かった。思いつく調理法で、調理…じゃなくて、調合を試みたが、思ったような効果は得られなかった。
「加熱方法を改良してみるか…。蒸留とかどうかな…いやでも、蒸留器なんて無いみたいだし…うーん、蒸留器って作れたりするのかな…。」
調合室の中を見渡すと、ガラスのフラスコと、ガラス管がある。フラスコにガラスの管を取り付けて、ガラス管を冷やすと簡易的な蒸留器になるかな?勉強不足が悔やまれる……。ガラスの加工なんかも出来ないしな…詰んだか?
フラスコとガラス管を手に、あーでもないこーでもないと悩んでいると、朝の直感が、ふっと降りてきた。俺なら作れる……。
フラスコにガラス管、土台もいるか……理科の実験で使ったアレをこうするようなイメージで……
思いついた材料を一纏めにし、両手を添えると……一瞬の発光と共に、ガラス管が取り付けられたフラスコが現れた。ガラス管の中間部分には、水を流して蒸気を冷却する部分も一体化にした蒸留器だ。多分、こんなのだった気がする。
これが俺の適性?これは錬金術じゃないか?漫画でよく見るやつだ!
早速、蒸留器を使ってみよう。頭に思い浮かべた通りに、装置は稼働した。
錬金術もイメージなのかもしれない。頭に思い浮かべると、足りない情報は、補完されて完成する。ある程度の材料……というか、極端に言えばガラスを作るのも、木材が材料でも問題ない。その分、多めに素材を使う。砂の様な物があれば、少量でも作れたりする。
つまりそんな感じである。知識のない俺には、非常にありがたい仕様だ。メモに使うボールペンなんかを錬金術で作って、時間を潰していると、蒸留が完了した。
ほんのり緑がかった澄んだ液体が完成した。今までのベースは、透明度のない緑の液体だったが…。これ、ただの色水じゃないか?
悩んでいても仕方がないので、ルナに見てもらうことにした。
「ん?響さんどうs…」
ルナが固まってしまった。
俺なんかやっちゃいました系のやつかな?
「これは…とても純度の高いベースです。こ、これに私の魔力を注げば…」
俺の作ったベースは、ルナの手が加えられ、回復のポーションになり、ルナは目を見開く。
「非常にランクの高いポーションです…。私の作ったポーションの数倍の性能がありますね…。そもそも、これを超えるポーションを見たことがありません…。」
その後、ルナに散々質問攻めにされたが、一通り説明が終わる頃には、日が暮れていた。
「なるほど…、響さんの適性は、錬金術だったと…。錬金術の適性を持つ人は、とても珍しいです。使いこなせれば、響さんは独り立ちできますよ」
ルナは嬉しそうに話すが、だけど少し寂しそうに見える。
「薬草を煮出すのに、蒸留器は正解だったから、今度は大型の物を作ろうと思うんだ。ただ材料が足りないから、不用品があったら纏めておいてよ。
あと、独り立ちできるようになったら、俺も診療所の近くに家でも建てようかな」
「いいですね!ご近所さんなら寂しくありませんね!!
粗大ごみも溜まってたので助かります!」
こんなに寂しがりなルナなのに、なんでこんな森の中に住んでるんだ?
夕飯を食べながらルナと他愛のない話をしつつ、今後の事も相談した。
「それと聖水のことも調べて見ようと思うんだ。そもそも聖水ってなんなの?」
「普通の水よりも、魔力を多く含んだ水の総称ですね。遺跡の泉の水は聖水と呼ばれていますが、各地の泉に聖水は存在しています。この診療所は、遺跡から割と近くに存在していますよ。」
「何故、魔力の保有量が違うんだろ。」
「様々な要因があるとされていますが、遺跡の泉は、魔力を含む鉱石が採掘されているそうなので、それも関係しているかもしれませんね。」
なるほど…顕微鏡でもあれば、何か見えるかもしれないな…
早速、粗大ごみで顕微鏡を錬金した。
「あーーー、んんん?」
聖水を顕微鏡で見ると、何か生き物のような……
「んんん…こ、これは……ナノマシン…か!?」
自分に注入された、ナノマシンの姿に酷似している気がするが……そもそもナノマシン自体が、マシンというよりもウィルスとか菌の姿に似ている為、俺の知識では断言できない…。
もしかすると…、俺は、自分の指先を針でつつき、血液を顕微鏡で見てみることにした。……居た。ちゃんと動いている。
人に注入されたナノマシンは、人体から老廃物等、悪影響の無いものを集めて、自己増殖する。ナノマシンにも寿命があるが、世代交代を自分自身で行い、自己進化まで行う。俺の体内のナノマシンも、もしかするとルナの治癒魔法で回復したのか…?聖水と呼ばれる泉に、浸かっていた事で体内に吸収されたのか…、詳しいことは謎だな…。
もしかすると、俺の肉体の変化は、ナノマシンによるものなのかもしれない。錬金術もナノマシンによるものなのか…?
この世界の人々は、皆ナノマシンを持っているのかもしれない。魔法自体がナノマシンによるものかも…でも、ルナは頑張ってダイエットをしているから、ナノマシンの助けを得られていないのか…?
まあ、ナノマシンを直接調べられない現状では、何も確証は得られないな。




