表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
コールドスリープから目覚めたら、剣と魔法が「未来の常識」でした  作者: たくみさん
第五章 アイゼン帝国

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

38/50

2:光の城

 空の旅は、30分程で終わり、ヴィンデミアの王都へ到着した。王都の門をくぐり、城をめざす。飛行機で、城まで行けたのだが、オットーがどうしても街並みを見たいというので、王都の外へ飛行機を置き、歩きで城をめざした。

 飛行機は、俺たちを下ろすと、勝手に空に飛んでいった。ジルが呼ぶと、また着陸してくれるそうだ。一家に一機欲しいな。



「ジル様、王都の復興早すぎませんか?」

 民衆の暴動により、相当荒れ果てたらしいが、そんな面影は一切なく、人々は活気に溢れていた。


「これも神の奇跡です。ほんの数時間で瓦礫の山だった物が、元通りの姿になりました。有り難いことです。」


「神の奇跡…。」

 オットーは、真新しい建物が並ぶ町並みをきょろきょろしながら歩いている。俺は…以前の状態が分からないから、ふーんってな感じだ。


「ところで、ジル様は大天使イリス様にはお会いになられましたか?」


「イリス様は、頻繁にお姿を表してくださりますので、私も何度がお会いしています。大変慈悲深いお方で、この世の物とは思えない美しさですよ。」

「ほぇ~お会いしたいな~」

 鼻の下延びてるぞ。


 城の門は解放されており、少々不用心では?と思ったが、王の居ない今、ここは、さながら公園の様に、人々の憩いの場となっているそうだ。

 人々は、ジルの姿を見かけると、気軽に挨拶をしてきて、ジルも笑顔でそれに答えていた。


 城は、白く輝く石材でできていて、外壁の一部は大きなステンドグラスでできており、全ての窓もステンドグラスで埋め尽くされている。

 城の入口には、兵士が居たが、ジルは顔パスで、俺達は一切のボディーチェックもなしで入城した。


 城内は、一般的にイメージされるような、金銀財宝や派手な絨毯、豪華絢爛な調度品で飾られているわけではなかった。床も壁も磨き上げられた純白の石造りで、広大な空間には驚くほど物がない。


 頭上を見上げると、壮麗なステンドグラスが、外からの太陽光を無数の色彩の奔流に変えて降り注がせていた。赤、青、緑、黄金色。光の粒子が空気中を舞い、柱や床に万華鏡のようなパターンを描き出す。その光の芸術は、まるで城全体が巨大な宝箱であるかのような錯覚を起こさせた。


 「……ま、眩しいな。まるで、夢でも見ているようだ」

 オットーが感嘆の声を漏らす。その目には、色とりどりの光が反射して揺れていた。


「高価な調度品なんて一つもないのに、ここまで豪華に見えるなんてな。ステンドグラスで光を飾るって発想がすごい」

 この光景は、俺が知るどの世界の豪華さとも違っていた。彼らは物質的な富ではなく、光と信仰という抽象的な概念を究極まで洗練させて、権威を作り上げているのだ。


 通路を歩くジルも、白い神官服のようなシンプルな装いだが、降り注ぐ光の帯が彼の輪郭を縁取り、まるで本当に神の使いのように見えた。


「この王城は、大天使イリスの神意によって建てられました。私たちの神は、金銀財宝や派手な飾り付けを望まれません。清らかで、全ての人が平等に享受できる光こそが、真の富であると仰っております。」

 ジルは静かに説明する。


 その言葉通り、壁にはヴィンデミアの紋章である「ブドウと翼」が、巨大なステンドグラスとして描かれているだけで、剣や甲冑、肖像画といった武威や歴史を飾るものは一切なかった。


「……なるほど。貴族の廃止といい、この城といい、以前のヴィンデミア城とは大違いだな」


 マニエラ王国が「知恵と貿易」を重んじ、知識や技術という実利に価値を見出しているのに対し、今のヴィンデミア王国は「信仰と光」という精神性を価値の頂点に置いている。

 圧倒的な美しさと、その裏にある強固な信仰心に、俺は自然と背筋が延びる。


 いくつもの光の廊下を抜け、私たちは城の中央にある広間へとたどり着いた。

 その広間の入口には、高さ数メートルに及ぶ、巨大で分厚い扉があった。しかしそれは木製でも金属製でもなく、磨き上げられた巨大な水晶のような半透明な素材でできており、城中のステンドグラスの光を集め、それ自体が輝いているようだった。


「こちらが、大天使イリスの神託を受け、この国を統べるアルトリアス様がいらっしゃる至聖所しせいじょです」


 ジルは扉の前に立ち止まり、静かに言った。

「マニエラ王国では、国王謁見時にはひざまずくのが礼儀と聞きます。ですが、この国ではそのような特権階級の作法は不要です。神は万民の平等を望まれています」


 ジルは一呼吸置いて、手のひらを自分の胸に当てた。

「ただし、神の光に対する敬意は必要です。我々は、神がもたらした平穏と、その御力に感謝を捧げます。あなた方も、我々の作法に従って頂けると幸いです。」

 ジルは、胸に当てた手を静かに下ろし、深くお辞儀をした。


「まず、静かに立ち止まる。そして、心の中で神に感謝を捧げながら、深く一礼してください。畏怖ではなく、感謝と希望の念を捧げるのです」


 俺とオットーは顔を見合わせ、言われた通りにジルに倣った。胸に手を当てて深く一礼する。

 すると、巨大な水晶の扉が、何の音も立てずに内側へとスライドして開いた。その向こう側は、城内で最も明るく、最も光が集中する空間だった。


「さあ、お入りください。神勅の執行者アルトリアス様がお待ちです」

 扉をくぐると、遥か上空から降り注ぐ光の柱の中に、ただ一人の人物が立っていた。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇


読んでいただきありがとうございます。温かい目で見ていただけると幸いです。

 毎日更新予定です。応援して貰えると、モチベアップに繋がります。

応援よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ