8:悪神?!アラハバキ
強酸の湖の水で全滅させたと思いきや、どうも洞窟の中には何者かが蠢く気配があった。
「山頂から中を覗いてみようか。」
「あ、ああ、そうするか。」
山頂から火口湖があった場所に空いた大穴を、二人は覗き込む。
「水が渦を巻いてるな…」
強酸の水は大きな渦を巻きながら、徐々に水位が下がっていく。
「ん、渦の中心に何かあるぞ。…石像だな。」
石像は強酸の水を吸収し、石像自体の色も変化している。下半身は赤、上半身は緑。次第に二色は合わさり、茶色になった。
「なんか泥人形みたいで、弱そう…。」
「格好悪いしな…」
泥人形は、こちらを凝視し、体色を赤と緑のマーブル状に変化させた。
「んー、そういう事じゃないんだよな。」
再び人形は、こちらを見るが、頭を捻り、変色することなく、酸性水を全て吸収し終わった。
「ん?目の錯覚かな…人形の体、大きくなってる?」
「錯覚ではないぞ、確かに大きくなっている。」
人形は徐々に、徐々に大きくなり、体長は5メートルを超えているか。湖の底から頭が飛び出す勢いで、成長している。
「これ、なんかヤバそうじゃないか?」
「ものすごい魔力を感じるぞ。今の内に攻撃するか…」
お互い目を合わせ、頷くと、穴から飛び出した頭めがけ、斬撃を繰り出す。
その瞬間、地面から大きな手が突き出し、二人の斬撃を防いだ。
『貴様等の世界では、変身中は黙って見ている文化があっただろうが!非常識な奴らだ!!』
「どこの世界線の話をしてやがる!」
「え、そんなのあるのか?」
まぁ、俺の世界の特撮ものや、ラスボスの登場シーンでは、そういうのあるよね。
『我は、アラハバキ。大地の平定を担う者なり。驕り高ぶる人間よ。無に帰すがよい』
「アラハバキと言えば、土着の神だったか?!」
「そんなことどうでも良い!なんとかしてくれ!」
アラハバキは、両手で火口を広げ崩し、俺たちを落とそうとしてくる。崩壊する地面を飛び跳ねながら、アラハバキに切りつけるが、敵は無傷だ。刃は切りつける度に、腐食し始めている。
「こいつ、湖の水吸っただけあって、刀の痛みがはんぱねーぞ!」
「無駄切りするな。やつの弱点を見定めろ。」
白神岳の地形がどんどん変わっていく。山頂の地形が見る見る内に変わっていき、アラハバキの肩が地表から現れている。
「こいつの体は堅いが、瞬きしている目や、関節なんかは少し柔いんじゃないか?!」
「んーーわからん!試してみるか。」
ジンは目を狙い、オットーは肩の関節、指の関節めがけて切りつける。
ジンが目を切りつけた瞬間、先ほどとは違い、明らかな切り込みが入り、そこから緑色の液体が噴出する。
「あっち!液体を浴びた胸当てが、と…溶けてる!」
慌てて胸当てを投げ捨てると、数秒で溶解した。
「オットーさん!気を付けろ!血液は酸だぞ!」
「おうよ!おらっ!!」
オットーは、指を切り裂き、肘、肩と上に上り、片腕を切り落とす。何故か体液が出ていない。それらの部位は、地面に落ちた瞬間に体液が吹き出し、肩からも遅れて噴出した。
「ジン!切り方が荒いぞ!もっと鋭く!素早く!剣が波打っているぞ!」
「お、うっす!」
オットーはただ者じゃない…
再び全神経を集中し、全身の力を一点に集中して…、あ、これがエネルギー操作か、よし試してみるか!
身体中のエネルギー…いや、筋肉に呼びかけ、非常事態だと告げる。闘気を燃やせ…いや、カロリーを使え!燃やせ!
「あっ、後で呑もうと思ってた、自家製プロテインが、丁度良く腰にさしてあったぞ!」
「ご都合主義だな!」
一気にプロテインを飲み込み
「さあ、筋肉たち、栄養だぞ!速やかに吸収して、速やかに燃焼させろ!後のことは考えるな!!今やらなくて何時やるんだ!!」
「お、おい、俺そんな技教えたか?!」
オットーも耄碌したな。
「うぉぉぉぉ!!燃えろっ!!神焔開放!!」
「え?!それ俺の考えた必殺技だったの?!」
オットーは動揺しているが、まぁ良いだろう。
体が軽い!!力が漲る!!
「天衝一閃!!」
ただの縦切りである。
刀はアラハバキの脳天から入り、足の付け根まで切り裂いた。
『ば、ばかな…神に抗う者が…』
アラハバキの体から、体液が溢れ出す
「なんか股ぐらから出てるから、小便みたいだな!」
「お前…台無しだぞ?!」
白神岳は、標高が数百メートル低くなったが、山頂には再び、火口湖が現れた。湖の色は、赤と緑のマーブル状だ。
◆◆◆
「さっき話した通り、荒ぶった神の怒りを鎮めたというシナリオで良いな?」
「そんなもんいらんだろ!悪い奴が居たから倒した!戦いは激しく、山の形も変わっちゃった!で良いだろ。」
「ばかっ!村のババさま達、山を大事にしてるんだよ!俺、怒られたくないんだ!」
「責任ある者は、下の者の失敗をかばって怒られるもんだろ?」
「誤魔化せるなら誤魔化したい!」
「貸し1だぞ?」
「お前、器がちっちぇー!」
白神岳の形が変わるという出来事はあったものの、大きな怪我をした人もなく、今回の騒動は終結した。
オットーは、ババさま達に連行され、俺はコノミに抱きつかれ、泣きながら説教された。怒られはしたけど、悪い気はしなかったので、良しとしよう。
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