6:白神岳の異変
血まみれで、熟睡していた俺は、コノミに死んでると思われ大泣きされた。大泣きしながら、俺に何かを叫んでいたらしいが、寝てたから分からん。周りの人に聞いても誰も教えてくれない。気になる…
「コノミ…、教えてくれよ。気になって日課が捗らん。」
「ま、まま、また今度言うから!」
赤面しながら逃げていった。
その後、オットーと俺、狩人達とで、今回の件の会議が行われた。
イノシシのような魔獣グリムボアの大量発生は、ここ数十年起きていなかったこと、起こった年には、魔物の大量発生が発生する事が村長の口から告げられた。その大量発生は、『狂乱の波』と呼ばれていた。
「代々の村長が残した覚書によると、前回、狂乱の波が起きたときには、島民の三分の二が死亡したと記してある。」
三分の二が死ぬ…コノミの泣き顔が思い浮かんだ。
「魔物はどこからやってくる?この島は海に囲まれた孤島だ。必ず発生源はこの島の中にある。どこだ?」
「それについても覚書に記されている。この島の中心には、長い間眠り続けている火山がある。名前は白神岳。その火山の火口からまるで、湧き出したマグマの様に、魔物たちがなだれ込んで来たとある。つまり、魔物は白神岳からやってくる。」
「んじゃ、行くか。」
「話が早いな…、まぁ行ってみないことにはな。」
戦力になるのは、俺とオットーだけなので、村人には何も告げず、白神岳に向かう。コノミには怒られそうだが、これが片づいたら気の済むまで怒られてやろう。
「で、やっぱり火口から湧き出ているのか?」
「んー、想像はつかないが、多分そうなんだろうな。」
白神岳は、島民達の信仰の対象であり、普段人が山に入ることはない。毎年、山頂付近にある祠に、供物を納め、祈りを捧げている。山頂には、火口湖が存在し、幻想的な光景が広がっている。
「んー湖には異変はない。底になにかあるか?」
湖の水は、緑色で透明度はない。肉眼で確認するのは困難だ。感覚を研ぎ澄まし、湖の底に意識を集中する。何らかのエネルギーを感じる。
「底に何かあるな。」
「うむ。しかしどう確認したものか…」
湖の水は、強酸性で、あらゆる物を溶かしてしまう。潜って確認するわけにはいかない…
「オットーさん、湖の下ってどうなってるのかな?」
「んーー、マグマ溜まりがあるとか、空洞があるとか言われてるが、誰も答えをしらない。」
「水抜いたら怒られるかな?」
「あーー、村の老人達には怒られそうだな。」
「でも一年に一回しか山頂に人は来ないよな?」
「あ、ああ。一年に一回、冬が終わり、雪が溶け、一番最初に取れた魚と、作物を奉納する。」
「つまり人は、暫く来ていない。湖がなくなっていたと言っても、誰にもバレない。そうだよな?」
「あ、うむ…、前村長は神罰が下ると言ってたが…」
「俺は、神罰を信じない。」
「お、おう。」
俺は足下に転がっていた、漬物石くらいの大きさの石を掴み、渾身の力を込め、湖に投げ込んだ。数メートルの水柱を立て、強酸性の雨がふる。
「やっ、やべ!逃げろ!」
俺たちは慌ててその場から立ち去る。
「おい、お前は考えなしだな!」
「す、すまない…。今までの流れだと、底が抜けるはずだったんだよ。」
「メタ発言はよせ!そういうのは冷める人もいるんだからな!」
「あの火口湖って水深どれ位あるんだ?」
「そんなに深くはないと聞いているが、誰も真実はしらない。」
「石を投げ込んだときに、一瞬底が見えたが、300メートルくらいだと思うんだが…、湖の縁から底が抜けないように掘り進めるのはどうだ?」
「無茶だろ。湖の底を抜かないように余裕を持たせていても、水が浸透してくるかもしれない。無謀だ。」
「俺の筋肉なら、酸にも負けないと思うんだが…」
「お前は、自分の筋肉を過信しすぎだ。もっと筋肉をいたわれ。」
「…すまない、筋肉達。」
「そういう事じゃないんだか…、あ、そういえば⋯」
「どうした?何か居たか?」
「そういえば、山の中腹に封印された入り口があるらしい。酸の雨が降り、人の侵入を拒む…とある。」
「酸の雨とは、浸透してきた湖の水か?雨とは大げさな気もするが。」
「伝承とは、大体大げさなもんだ。よし、行ってみよう。少し下るぞ。」
◆◆◆
「ジン、筋トレの時間だ。」
「おし、まかせろ。ふふふっ、筋肉の笑い声が聞こえる!筋肉たちが喜んでいる!」
「お前、筋トレ中に笑うのやめろ。気色悪い。」
筋肉の声じゃなかったのか⋯。
程なくして岩は撤去され、入口が顕になる。オットーは、火をつけた小枝を投げ込み、可燃性のガスが溜まっていないことを確認した。
「空気もあるみたいだが、鼻を突くような匂いがあるが、とりあえず慎重に進むか⋯」
「分かった。強酸性の雨とやらにも気をつけてくれ。」
とはいえ、上から音も立てずに落ちてくる酸の雨に、どうやって注意すれば良いのか⋯
「気休め程度だが、防寒着を被っておけ。」
洞窟の中は、鍾乳洞のように白い氷柱のようなものがチラホラ見受けられる。棒切で突いてみると、粘性の液体が絡みつき、棒切を黒く変色させ、腐食させる。地面は所々水たまりのような物があり、小さな気泡が湧き上がっている。
「酸の水たまりか⋯注意しろよ⋯」
強い匂いに紛れていたが、次第に獣の匂いを感じてきた。
大きな空洞が現れ、イノシシ型の魔物グリムボア、クマ型の魔物ウルスス、ゴリラのような魔物で灰色の毛が特徴的なシルバーバック等が集団で、円陣を組むように整列していた。
そして、その中心には、人型の何かが鎮座していた。
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