5:魔獣との死闘
雪は振り続け、雪かきが捗るかと思いきや、最近魔物が多く、狩猟の手伝いが多く、雪かきどころではない。
オットーから、秘蔵の剣を渡され、複数のグループに別れ、魔物退治に向かった。
オットーから貰った剣…というか、刀だな。これぞ日本刀という見た目をしていた。軽く降ってみたが、適度な重さに、鋭い切れ味、男心をくすぐる逸品でした。
話を戻すが、例年だとこの時期に、魔物は殆ど見られないらしい。この島に生息している大半の魔物は、ほかの動物達と同様に、冬眠をするそうだ。
しかし、俺が以前倒したウルスス含め、本来冬眠している魔物が、この時期になっても森を徘徊している。
冬眠しない理由として、食料が不足している事が考えられたが、コノミが言うには、森の植物は、例年以上に豊かで、食料不足は考えられないとのこと。
更に問題なのが、例年では冬眠明けの春、冬眠前の秋が一番活発らしいが、そのピーク時を上回る数が、報告されている。村には、襲われて死者こそ出ていないが、重症をおった村人がいる。
そんな状況のため、冬の間は、手仕事をのんびりしている狩猟グループが、今年は大忙しなのだ。
「いたぞ、あそこだ…」
「グリムボアか…」
グリムボアは、イノシシのような魔獣だが、サイズが違う。大型車並の大きさだ…。
でかい図体に似合わず動きは早い。高速で突撃してくる、高速で走る自動車並の速さだが、直線的な動きなので躱すのは容易い。しかし木をなぎ倒し、岩を破壊しながら迫ってくる光景は、なかなかに恐怖だ。
グリムボアには、短毛が生えているのだが、この毛が固く、並の剣士ではグリムボアの体を切り裂くのは難しい。
まっすぐ直進してくる暴走車の真正面に立ち、眉間に一突きすれば良いのだが、こいつは死んでも尚、暫く走り続ける。眉間に一突きしたところで、暴走車に撥ねられてお陀仏だ。
どうする…、この刀ならいけるか…
「皆、俺が仕留める。離れてくれ。」
「ジン!いくらお前でも!」
「無茶するな!グリムボアには落とし穴か、罠で動けなくするのが定石なんだ!」
直進しかしてこないので、罠にかけるのは容易いが、そこまで誘導するのが困難だ。
「静かに!気づかれる!大丈夫、殺れる。」
静かに、落ち着いて奴の動きを見定める…。刀は、切れ味は最高だが、横から叩かれると折れやすい。グリムボアに一太刀入れても、奴の圧力をまともに受けると折れる。素早く、閃光のように…けれど渾身の力を込めて…
「散れ、ジンはやる気だ。邪魔になるぞ。」
仲間たちが移動したことを確認した後、すっと立ち上がり、指笛を吹く。
「来い!!かかってこい!!」
グリムボアに怒声をあげ、殺意を向けると、グリムボアは一直線に向かってきた。
圧力が半端ない。潰されそうになる威圧感、高速で向かってきているはずのグリムボアが、まるでスローモーションのように感じる。
あと五メートル…四…三…
グリムボアが、目の前に来るその瞬間、ジンは地面を蹴る。まるで瞬間移動のように、その巨体スレスレに奴の左側の死角に潜り込んだ。
グリムボアは、正面に捉えていたはずの、獲物が突然消えたことに困惑したが、自分の勢いを殺すことはできず、前へ進み続ける。
ジンの全身の筋肉が、躍動する。全力を叩き込む!
地面と水平に、最短距離で振り抜いた。狩人達の目には、何も見えなかったであろう、ジンの渾身の一閃。
グリムボアの全ての足と、胴体は泣き別れとなり、足はジンの左側へ、胴体は足を失って尚、慣性による移動を続け、数メートルと先へと滑走した。
「許せ、お前の命無駄にはしない。今日の晩飯は!角煮だっ!!」
グリムボアの首を、刀で切り裂き、止めをさした。
刀は素晴らしい切れ味だった。グリムボアの足を骨ごと切り裂いたが、刃こぼれ一つない。
「おい、なんだ最後の台詞…格好いいところが台無しになったぞ。」
「いや、腹が減って…」
歓声と笑い声が湧き上がり、ジンはぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。
グリムボアの解体を始めようしたその時、周囲から謎の音が鳴り始める。
「カッカッカッカッ」「シューシューシュー」
二つの音が入り乱れている。
「牙を打ち合う音?この威嚇音は…、グリムボアの群れ?!」
グリムボアは、単独で暮らし、夏の繁殖期に一斉に集まる。今はまだ冬…
「と、どう言うことだ?!」「五、いや九体はいるぞ…」
狩人たちは、慌てふためき、冷静さを欠いている。ジン自身も現在の絶望的な状況に、絶望感を感じていたが、周りで慌てる大人たちの光景をみて、逆に落ち着いてきた。
やるしかない、やるしかないんだ!!
「俺はここで奴らと戦う。こいつらを引き付けるから、オットーを呼んできてくれ!!」
狩人達、少し揉めたが、自分たちには、今ここで出来ることはないと感じたのか、抜け出すタイミングを探っている。
「いくぞ!」
甲高い指笛を吹き、周囲に殺気を撒き散らす。
「お前らの仲間を殺したのは俺だ!文句があるならかかってこい!!」
カッカッカッカッ
牙を打ち鳴らす行為には、牙同士を擦り合わせ、鋭さを増す行為、牙を研ぐ戦闘前に行う行為らしい。
さっきのやつは、俺のことを舐めていたが、今度はこいつら全員本気ということだ。
両手で頬を思いっきり叩き、気合を入れ直す。
「こい!ただではやられねーーぞっ!!」
どんっ!という破裂音のような音が聞こえ、周囲に土煙が上がる。
奴らは単独で行動するが、自分たちよりも強い敵に出会った時、共闘することがあるという。練習した訳でもないだろうに、見事な連携で、敵を圧死させる。
360度全方位から、一斉に俺目掛けて突進してくる。大型車並の巨体、高速での突進を避ける手段は……
ジンは、刀を構え、低く低く構える。
「もっと…もっと低く…」
腰を極限まで下ろし、片膝を地面に付くか付かないかの位置まで下ろし、刀を下段の構えに取る。
この全方位の突進に抜け道はない……抜け道がないなら作れば良い。
まもなくグリムボアの突撃が着弾する。攻撃が、眼の前まで迫った瞬間、ジンは地を這うような最低の姿勢から、刀に全身の力を込める。
狙いは、先頭の一頭の顎と首の境界線。彼は、刀を突き立てるのではなく、下段の構えから一気に垂直に螺旋を描くように斬り上げた。
その超人的な遠心力は、グリムボアの巨体を真横に弾き飛ばすほどの衝撃を生む。
切断の軌跡を通り抜けたジン自身も、グリムボアの分厚い肉塊に衝突し、その衝撃で弾丸のように空へ跳ね上げられた。
グリムボアの上空に飛んだ俺は、そのまま前方に回転し、グリムボアの攻撃の着弾地点から瞬時に離脱する。
背後で、“ドンッ!ドンッ!ドンッ!”と、岩石が爆ぜるような炸裂音が鳴り響く。
振り向くと、先頭の一頭が、横向きに吹き飛ばされた勢いのまま、後続のグリムボアの群れへと突入していた。時速100キロは超えていそうな巨体同士の衝突は、凄まじい破壊力だ。
9匹全ての頭が、エグいことになっている。
息も絶え絶えのグリムボアを、一匹ずつ止めをさし、全ての敵を討伐した。
俺の体も酷いことになっていて、怪我はないものの、切り裂いた体の中を通り抜けたせいで、全身血まみれだ。
ジンは、その場に倒れ込み、森の静けさを全身で味わう。
「あーー、体が血まみれで気持ち悪い…、けど、眠くなってきた…」
グリムボアの上で仮眠を取っていたら、遅れてやってきたオットーに、死体と間違われてワンワンと泣かれてしまった。
抱きついてきたオットーの肩を押しのけ、生きていると説明すると、今度は泣きながら怒られた。
確かに少し無茶だったかもしれないな…もっと安全な手はあったかもしれないが、あの時の俺には他に手段は思いつかなかったしな…
オットーの顔を見て安心したのか、俺は再び睡魔に襲われ、意識を失った。
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