3:島での修行と初めての魔物
漁村シーブルックは、島民の数七四名、魚の干物が特産品。それ以外に語るような事もない小さな村だ。 人々は、朝早く漁にでて、昼過ぎには帰港する。昼食を終えると、昼寝をし、目が覚めたら明日の漁の準備に取り掛かる。
女の漁師もいるが、大半は陸地で働き、漁師が取ってきた魚を加工する。自分たちが食べる分の野菜も作っている。
島民の中には、山に入り山菜や、獣などを狩猟する人たちも居た。大きな熊や魔物も居るため、それらを駆除するのも彼らの仕事だ。
村長の仕事は、滅多に来ない不審者への対応だけではない、陸地に残った者達の手伝いをする事もあれば、狩猟の助っ人をすることもある。悪く言えば何でも屋だ。
村民達は、大きな家族のようなもので、村民同士のトラブルもほとんど存在しない。喧嘩しても、酒を飲み交わせば明日には元通り。そんな平和な村なのだ。
そんな村で、剣を学んで、何か意味があるのか疑問に思った。剣よりも、漁や狩猟を学んだ方が、村の役にたつのではないか?そんな事を、オットーに聞いたことがあったが、
「お前は、体ばっかりデカくなって、大人だと思ってるかもしれないが、まだまだ子供だ。子供は、大人の意見を取りあえず聞いておけ。それでも疑問に思ったら聞いてこい、何度でも説明してやる。
いいか、この村には、俺以外に戦える者がいない。もちろん熊を駆除する奴らはいるが、熊よりも恐ろしいのが人間だ。恐ろしい魔物もいる。そんな奴らに対抗出来るのは、この村には俺しかいない。
この村は平和だが、十年近く前だが、海からシーサーペントがやってきた事があった。平和な村にも恐ろしい魔物がやってくる事はある。
お前は、この村の切り札みたいなもんだ。しっかり備えてくれよ?」
「⋯シーサーペントってなんだ?」
「そうだな…海を泳ぐ竜みたいな?少し小さいがな。」
「それ、どうしたの?」
「蒲焼きにして皆で喰ったぞ。非常に美味なんだよ。お前にも喰わせてやりたいな。」
オットーの強さは、計り知れない。走る速さは、俺の方が早いし、泳いでも俺が先を行く。だが剣に関しては、足下にも及ばない。
素振り以外にも、打ち込み稽古や乱取りも行っているが、オットーの体には、一太刀も浴びせられない。
「ジンには、俺が編み出した秘技を伝授したい。編み出したと言っても、俺も使えないんだ。頭の中に存在してるんだが、俺の肉体では使えなかった。そういう技だ。」
オットーは、とても親身に世話をしてくれるし、時には厳しく指導もしてくれる、まるで父親のように。
「おとーさん」とオットーさんて、なんか似てるな……読み方が。
「ふふ」
くだらない事を考え、一人で笑っていると、ご近所さんのコノミが、怪訝な顔で見ていた。
コノミは、おれと同年代らしい。ショートヘアで、元気印の可愛らしい女の子で、ソフトボール部に居そうな感じの子だ。
「どうした、コノミ?また俺の筋肉でも見に来たのか?」
「何言ってるのよ……。剣を持って、不気味に笑っている奴が居るから、誰かと思ったらジンだっただけよ。不審者かと思ったわ」
「ああ、そう……。で、コノミは何してるんだ?」
「私は、山に山菜を取りに行くところよ。」
「一人でか?それじゃ、俺が護衛として付いていこう。」
「必要ないと思うけど、まぁお願いするわ。」
俺は山菜があまり好きじゃない、見た目が食欲そそらない。やっぱり肉が喰いたい。この村は、魚には困らないが、肉は滅多に食べられる物ではない。
ウサギでも居ないかな?
「何キョロキョロしてるの?何か居るの?」
コノミは、少しビビりだ。
「いや、ウサギでも居ないかなと思ってな」
「うさぎさん?飼うの?」
「食べるんだが?」
「…あんな可愛い動物を?食べる?」
なんか睨まれてるが…
「鶏肉とか好きだよな?前採ってきたとき喜んでたし。」
「…人間は罪深い生き物だね。」
そう、人間は罪深い。だからこそ、残さず綺麗に頂くのだ。
「でも、私の目の前でうさぎを狩るのは止めてほしいかな。我儘かもだけどさ。」
「まぁ、そうだな。うさぎは確かに可愛いしな。でもうさぎも美味しいぞ?」
「あ、うん…。覚悟ができたら頂きます。」
うさぎを見かけることはなく、採集ポイントに到着した。
「ここは、私の秘密スポットなんだ。誰にもバラさないでよ?」
「はいはい。周りは警戒しとくから、安心して山菜採りをしてくれ。」
そう言って、剣を取り出し素振りを始めた。
「あんたも素振り好きだねー」
山菜採りをしつつ、俺に話しかけてきた。別に素振りが好きなわけじゃないんだが、落ち着くのかな。
毎日振り続けているだけあり、随分様になってきた気がする。オットー相手には、かすりもしない剣なので、自分がどれだけ上達したのか全くわからな
「コノミは剣使えないのか?」
「あんた、私のことを何だと思ってるのよ。乙女よ?お・と・め!私は剣を使うよりも、王子様に守ってもらいたいの!」
「コノミの身体能力なら、いい剣士にもなれそうだがな。女性剣士も格好いいじゃないか。」
「私は、可愛いって言われたいの!」
これが乙女心というやつか。俺にはわからん。コノミの籠が山菜で一杯になったので、帰ろうという話になった。
「コノミは、この島から出たいと思ったこと無いのか?」
「え、なんで?私は、島生の島育ち、死ぬときも島で死ぬよ。」
「それはそれで凄いな。俺の友達は、早く都会に行って、一人暮らししたいと言ってたな。」
「なんで都会に行きたいの?」
「都会にはなんでもあるからな。遊ぶところも、買い物するところも。あとチャンスもあるかもしれない。」
「へー。私には分からないなー。」
「しっ!!静かに⋯なにかやって来る。⋯獣の匂いがする、魔物か?!」
茂みを掻き分け、ものすごい速さで何かが向かってくる。
「えええ、村長呼んでくる?!」
「動くな!標的にされるぞ!!俺の後ろに隠れろ。」
一人なら逃げ切れるかもしれないが、コノミには無理だ⋯。覚悟を決めろ!音を正面に、剣を構える。この剣は練習用で刃は付いていない。こんななまくら刀で倒せるだろうか⋯
目の前には、三メートルはあろうかという熊が、両手を上げ咆哮をあげる。
心を落ち着ける、オットーさんにはかすりもしないが、こいつは完全に油断している。一太刀浴びせてやる!!
魔物は手を振り下ろすが、俺はそれを躱し、胸元に飛び込んでいく。魔物が大口を開けて、噛みつこうとするその時、口めがけて剣を突き立てる。剣は魔物を貫いた。魔物は蹌踉めき一歩後退したその瞬間、何万回と繰り返した袈裟斬りを放った。オットーの素振りと同じ音が鳴った。空気を切り裂く、凶悪な音がなり、剣は、魔物の肩から斜めに入り、反対の脇の下から鮮血をともない飛び出し、切り裂いた。魔物は崩れ落ちる。俺は、躊躇せず頭に剣を突き立て、とどめを刺した。
「コノミ、立てるか?」
コノミは、無言で首を振る。腰が抜けたか?仕方ない。
俺は、コノミを片手で抱きかかえ、魔物の足を掴み、引きずりながら村まで歩き出した。
「はわわわ、お、王子さま?!」
コノミが小さな声で何か呟いていたが、俺の耳には届かなかった。
◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇
読んでいただきありがとうございます。
初めて書いた作品なので、ちょいちょいおかしな点があるかもしれませんが、温かい目で見ていただけると幸いです。
毎日更新予定です。応援して貰えると、モチベアップして、小躍りしますので、☆の応援お待ちしています!
よろしくお願いします!




