8:ヘルマンの最後
ノヴァーレ公国の郊外。ヘルマン侯爵の要塞化された城の地下に、設けられた自室の椅子に座り、その時を待っていた。神勅の執行者アルトリアスから書簡の返信があり、本日がその約束の日。
「今日、私は神を超えるのだ…。」
『神の力を見誤ってるぞ、ヘルマンよ。」
「待ちわびたぞ御光ノ命よ。私が開発した大量破壊兵器は、既に射出の準備を終えている。私が思うだけで、ヴィンデミアにノワール・ファントムは射出され、数分後には、ヴィンデミアは滅びる。」
『それで?貴様は何を言いたいのだ?』
「私を神として認めるのだ。そうだな、破壊神といったとことか?」
『ふふ、神になって何がしたいのだ?』
「私の力を世界に知らしめる。私に逆らう国は、直ちに滅ぼす。御光ノ命の裁きは、私から言わせれば甘い。貴様は神に相応しくない。私が、この国を正しいものへと導いてやろう。」
『我は、貴様と交渉するつもりなど一切ない。貴様の企みを全て試してみよ。特別に、全てを無に帰した後、神罰を与えてやろう。』
ヘルマンは思わずほくそ笑む。抑止力として開発した物に魅力は感じない。使ってこその兵器なのだ。ヘルマンが頭でノワール・ファントムに指示を送ると、轟音を放ちノワール・ファントムは射出された。
「世界よ…私の力に恐れ慄くがよい。」
◆◆◆
数時間悩んだ結果、メインサーバの名前は…メイになった。はいはい、ネーミングセンスありませんよっと。
「メイ、ノワール・ファントムはどうなった?」
【真っ直ぐ王都に向かっています。】
「王都の建物の復旧状態はどうなんだ?」
【王が不在ということもあり、王都の復旧は全く進んでおりません。】
「よし、ならば命令しよう。高圧縮コアに囚われたナノマシン達よ。地表に到着した後、速やかに王都の復旧に取りかかれ、一切の破壊は許さない。」
【了解したとの信号が届きました。王都の復旧に使われるとは、なんと慈悲深いのでしょう…】
「よく言われるよ。着弾までは?」
【あと30秒…20秒…5秒…着弾します。】
着弾した瞬間、半径数キロを覆い尽くす、淡い光が包み込む。光は徐々に収縮していき、光が晴れた部分の建物の修復が完了していた。
『ヘルマンよ、お前の兵器は見事な働きをしてくれた。我はノワール・ファントムを気に入ったぞ。これは贈り物として受け取っておこう。』
ヘルマンは、座っていた椅子から、崩れ落ちそうになる体で、必死に立ち上がり、ノワール・ファントムに命令を送る。しかし、なんの反応も帰ってこない。着弾したはずの高圧縮コアの状況を確認するが、ノワール・ファントム経由で送られてくる情報だったため、それも叶わなかった。
「御光ノ命よ…一体、私の兵器に何をした…。私の兵器は、ヴィンデミアを灰にしたのではないのか…。」
『特別にヴィンデミアの今の状況を見せてやろう。』
ヘルマンの頭部を黒いモヤが覆い尽くすと、次第に現実にしか思えない光景が映し出されてきた。
ヴィンデミアは、完全に復興され、以前のような荘厳さを取り戻していた。唯一取り戻していないのは、そこに住む人々だけだった。
絶望し、声すら発せないヘルマンに、神からの声が届く。
『さて、ヘルマン。贈り物のお礼をせねばな。貴様は、今魔法が使えなくなった。また今までの様に、兵器の開発も出来ないだろう。忙しく働いていたお前への、休暇だ。喜んで受け入れるが良い。』
神からの声は聞こえなくなった。こちらから問いかけても、一切の返事は聞こえてこない。それに、何か今までと違う違和感を感じる。今まで辺りに存在していた物が、全て消えたような感覚…。
そして、地下室を照らしていた明かりが消えた。明かりを照らす魔法を使ってみるが、何も起こらない。体中に鳥肌が立つ、焦りを感じていた。ヘルマンは、ノヴァーレでもトップレベルの魔法使いだった。様々な魔法を使ってみるが、何も起こらない。魔法を使う瞬間感じていた、体を巡る魔素の感覚がない。
研究開発には、魔素を操る感覚が非常に大切であり、それが出来なければ、研究はできない。
自分は、魔素を操れなくなったのか?今まで心血を注いできた、研究ができなくなるのか?俺の自慢の魔法も使えない?俺の存在意義は…。
ヘルマンは、魔法至上主義であり、世に存在した魔法を使えない人々を、嘲笑ってきた。今ヘルマン自身が、その馬鹿にしてきた人々と同レベルにまで落ちてしまった、いや魔法を使えない人々は、他の技能に特化した能力があったらしいが、研究一筋だったヘルマンには、そんな物は存在しない。
彼は、何も出来ない、中年の男に成り果てた。
「俺はこれから、何を生きがいにすればいいんだ…」
◆◆◆
「また一歩平和に近づいたな」
【お父様おめでとうございます!】
『響…私の出番がありませんでしたよ…』
「私も…」
「メインサーバと話が出来るようになってな。名前もメイと付けてやった。」
【私はお父様とお話が出来て幸せです。】
『響、貴方に必要なのはイエスマンではありません。戒めを与える者も必要なのです。』
「物は言い様だな。まぁ、ルナにもメイと話す権限を付与しておく。メイ、仲良くしてやってくれ。」
【ルナ様、初めまして。ナノも今後ともよろしくね。】
『あなた、うまいこと取り入ったわね。』
【ナノなんてお父様の側にいる幸せを味わってるじゃない!ずるいわよ!】
「響さん…お父様って呼ばせてるんですか?」
ルナはジト目で俺のことを見てくる。
「ち、違うんだ…メイがそう呼びたいと言ってきたから!」
「別に私は、響さんが、どんな趣味を持っていても気にしません!でも人のせいにするのは男らしくありませんよ?!」
「め、メイなんとか言ってくれ…」
【お父様…まだお話をするのに慣れていないためか…エネルギー切れです。少しスリープします。お休みなさい…】
「な、ナノお前、メイとの会話も聞こえてたんだよな?!なんとかルナに説明してくれよ!」
『にゃ~ん』ゴロゴロ
「あら、ゴロゴロして可愛いこと、おやつをあげましょうね。」
『にゃー』
俺のイメージがどんどん悪くなる…、神のイメージアップより、俺自身の名誉を回復しないと…
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読んでいただきありがとうございます。
初めて書いた作品なので、ちょいちょいおかしな点があるかもしれませんが、温かい目で見ていただけると幸いです。
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