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コールドスリープから目覚めたら、剣と魔法が「未来の常識」でした  作者: たくみさん
第三章 神の降臨

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1:ヴィンデミアの終焉

 ヴィンデミア王国は、広大な国土を持ち、人口は450万人、農業と手工業を主軸としている国だ。古い貴族制度が残る絶対王政で、魔法を主軸にした騎士団の強さで、近隣諸国の侵略を防いできた。

 国民は、規律正しく、権威に服従的であった。響がナノマシンの使用を制限するまでは…。


 玉座の間にて、国王ガリウスは、苛立ちを隠せずにいた。


「一体どういうことだ!何故兵を引いた!ノヴァーレを火の海にしろと命令したはずだが?!」


 国の最高司令官でもある騎士団長ローゼン・ヴァルガロフは、血と埃にまみれ、膝をついて国王に報告した。


「陛下、お許しください。この戦争は、我が騎士団の意志と無関係に、終結いたしました。


 これは敗北ではございません。敵の強力な攻勢によるものでもありません。我が軍、そしてノヴァーレ軍の双方で、不可解な現象が同時に起こりました。


 命令系統の混乱、兵士の集団離脱……いいえ、それだけではありません。我々の攻撃の要であった魔法が使えなかったのです。戦士の身体強化ポーションはただの水となり、最新鋭の魔導兵器は、全て鉄塊と化しました。


ナノマシンが組み込まれた全ての軍事機能――戦士の身体強化ポーションはただの水となり、最新鋭の魔道具兵器はただの鉄塊と化しました。」


「何故だ!我が王錫の力で、兵士には絶対の忠誠を得ていたはず、そして何故、魔法が使えぬのだ!」


「生活圏で使われる魔法は、使えます。しかし、戦闘時に使われる魔法は、魔導具含め一切使用できません。

 しかし、魔物討伐時には使えたという話があり、その際に使用したポーションも、いつも通り使えたとの報告があります。」


「その理由を聞いているのだ!」


「分かりません。ノヴァーレでも同様の事が起きてるとの報告がシャドウよりありました。」


 シャドウとは、特務観測員つまりは、スパイだ。厨二病っぽい。


重い腰をあげ、国王ガリウスは言い放つ

「ならば条件は同じだ!今すぐノヴァーレに攻め入れ!!」


「へ、陛下…ヴィンデミア王国とノヴァーレ公国の戦争は、ポーションと使えない今、これ以上の継続は不可能です。

 また、王の魔法に関しても、効力は失われており、兵の中には離反する者も現れております。

 無駄に兵を失う事はありません。何卒…何卒、ご英断を!」

 ローゼンは信じていた、己の主君が、理性のある答えを出してくれることを…


 国王ガリウスは、玉座から身を乗り出し、金色の王笏を床に叩きつけた。その振動が、大広間の大理石の床を不吉に揺らす。


「なんと申した?!この王錫はもはや何の意味も持たず、戦争を継続する余を我が愚かだと申しておるのか?!」


「へ、陛下、私は陛下に忠誠を誓っております!陛下が死ねと申されるなら、直ちに陛下から賜ったこの剣で自害いたします。

 しかし、兵を失えば、広大な我が国を維持する術を失ってしまいます。


 何卒、何卒冷静な判断を…」


「そなた思いは分かった。長年そなたは、我に忠義を尽くしてくれた。最後に、そなたの思いを汲もうではないか。」


「で、では…」


「今すぐ、わしの目の前で自害せよ!」


 国王ガリウスの狂気に満ちた命令が、大広間に響き渡った。

 ローゼンの顔から、すべての感情が消えた。彼は王の言葉に絶望しながらも、その命令が、彼の人生の全てを捧げた「主君からの最後の命令」であることを理解した。


 彼は、自分が王を救うことはできないと悟った。しかし、この瞬間まで忠誠を貫いた騎士としての誇り、そして彼が守ろうとしたヴィンデミアの騎士道精神だけは、何者にも奪わせない。


ローゼンは、ゆっくりと立ち上がった。


「御心のままに……陛下」


 彼は衛兵たちを静かに見据え、その視線だけで彼らを押し留めた。誰も動かない。騎士団総長としての威厳が、洗脳から解放された兵たちの心に、未だ強く焼き付いていた。


 ローゼンは、腰の剣、《《獅子の牙》》と呼ばれる愛剣の柄に手をかけた。その剣は、彼が騎士として叙任されて以来、幾多の戦場を共に駆け抜けた、彼の魂そのものだった。


 彼は剣を抜き放つと、切っ先を天に向け、深く頭を下げた。


「我が騎士道精神、我が血潮、我が剣の忠誠、全てはヴィンデミア王国と、国王ガリウス陛下に捧げられたもの。その生涯を閉じることが、最後の忠義であるならば……喜んで」


 ローゼンは、剣の切っ先を反転させ、その鋭い切っ先を自らの心臓の位置に合わせた。

 国王ガリウスは、その狂気の光景にただ満足げな笑みを浮かべていた。


「よし、それでよい。それでこそ我が騎士団長だ!」


 ローゼンは、瞑目した。彼が最後の瞬間に見たのは、狂気に満ちた主君の姿ではなく、彼が守ろうとした、愚かで、しかし愛すべきヴィンデミアの民の姿だったのだろうか。


騎士の最期は、一瞬だった。


 ローゼンは、躊躇なく、その剣を自らの心臓へ深く突き立てた。

 ブシュッという鈍い音と共に、深紅の鮮血が噴き出し、玉座の間の大理石の床を汚した。ローゼンは膝から崩れ落ちることもなく、剣に支えられたまま、ぴくりとも動かなくなった。その顔は、極度の苦痛のあとに訪れる、静かな安堵に満たされていた。

 彼の魂は、忠義を果たし終えた、一人の騎士として、玉座の間を去った。


 国王ガリウスは、血まみれの騎士の遺体を前に、その狂気がさらに深まるのを感じていた。彼は、自らの権威が、いかに血塗られた行為の上にしか成り立たないのかを、理解できていなかった。



 ローゼンが自害してから、まだ数刻しか経っていなかった。

 玉座の間には、依然としてローゼンの血に濡れた遺体が横たわっている。国王ガリウスは、その傍らで酒を呷り、半ば錯乱した状態で自らの判断の正しさをうわ言のように繰り返していた。


 突如として、王城の堅固な石造りの壁を揺るがすような、凄まじい怒号と破壊の音が下層階から響き渡った。


「だ、誰だ?!」

その声には、威厳のかけらも残っていなかった。


 それは、王の支配から解放され、長年の圧政と飢餓に耐えかねた暴徒と化した数万の民衆だった。彼らは松明を掲げ、王家の紋章を打ち砕きながら、地を這う津波のように城内を蹂躙していく。

 さらに絶望的な事態が、玉座の間を守るわずかな近衛兵たちを襲った。

「開けろ!王を道連れにしてくれる!」

 反逆者の咆哮に、近衛兵の一人が剣を落とした。そして、その後に続いたのは、反旗を翻した兵士たちの行進だった。彼らは、昨日まで忠誠を誓っていたはずの王宮の兵服を身にまとい、民衆の群れと一体となって玉座の間へと迫ってきた。


 彼らの顔には、ローゼンが死を選んだときと同じ、諦念と、新たなる狂気が混じり合っていた。彼らはもはや、王を護るための兵士ではなかった。王政という名の重い鎖を打ち砕こうとする革命の尖兵と化していた。

 轟音と共に、玉座の間の巨大な扉が内側から打ち破られた。

 黒煙と松明の炎、そして人々の怨嗟の声が、荘厳な大広間を瞬く間に飲み込んだ。国王ガリウスは、ついに玉座から立ち上がり、震える手で衛兵の剣を掴んだ。彼はもはや王ではなく、ただ怯える老人に過ぎなかった。


「下がれ!この国は、このヴィンデミアは、我のものだ!」


 その弱々しい叫びは、数万の怒りの声にかき消された。

 暴徒の群れの中から、一人の痩せ細った老人が、前に進み出た。その老人は、かつてガリウス王の圧政によって、畑も家も、そして愛する家族も奪われた、王国の最も貧しい底辺の民だった。


 老人の痩せこけた手には、錆びついた一本の短刀が握られていた。それは農作業に使われていた、柄も折れかかった、無骨で取るに足らない刃物だった。

 老人は、幽霊のように、誰も気にとめず、ただまっすぐに王の元に進んでいく。

 そして、その弱々しく、しかし無慈悲な一突きが、喚き散らす威厳も既に失われた絶対君主の心臓を貫いた。ガリウスは、声を上げることすらできなかった。

 絶対的な権力は、一瞬にして消え失せた。


 国王ガリウスは、自分の足元に崩れ落ちるローゼンの遺体を見ることもなく、ただ床に膝をついた。彼の瞳は虚ろで、最後まで、自分が何故、誰に殺されたのかを理解できていなかった。


 血溜まりの中に倒れ込んだガリウスの身体の上に、民衆の暴動が歓喜と怒号となって降り注いだ。


 ヴィンデミア王国の絶対王政は、その夜、血に塗れた剣と、弱々しい短刀によって、終焉を迎えたのだった。

◆◆◆◇◇◇◆◆◆◇◇◇


読んでいただきありがとうございます。

初めて書いた作品なので、ちょいちょいおかしな点があるかもしれませんが、温かい目で見ていただけると幸いです。

 毎日更新予定です。応援して貰えると、モチベアップして、小躍りしますので、☆の応援お待ちしています!


よろしくお願いします!

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