7:気がついたら王様になってました。
「ナノ・エクリプス・コートか…もう少し仰々しい名前の方が良かったかな?」
『ポーズもいまいち、しっくりしませんでしたね。』
魔法の詠唱についての反省会は終了。仕事に取りかかる。
無事に魔法は発動し、今頃地上の兵士たちは、洗脳が解け、混乱していることだろう。このまま畳みかけるぞ。
「まず、王の権限は削除しよう。国民の意思を排除するような命令はいらん。」
『御意』
「そして、ナノマシンの利用は、人々の安寧を保つのに使われるべきだ!軍事利用者なんて、以ての外だ!!」
『仰せのままに…』
「さっきからなんなの?その口調は…」
『どうも先ほど使った魔法で、メインサーバの最上位権限が、響様に替わったようです。』
「どう言うこと?」
『このメインサーバの管理するナノマシンのキングは、響様と言う事です。』
「そんな権利いらんが…」
『王は我らを見捨てるのですか?!』
「…、よし、お前にも最上位権限を付与しよう。二重王権制とする。」
『今後ともよろしくお願いします。』
そう言うことで、俺とナノは、ナノマシンの王となった。これにより、地上の二国の王が、ナノマシンを操り、国民を洗脳する術はなくなった。
俺たちが、間違いを犯さなければ、二国の平和は約束される。
「ナノ、今後は、俺たちの関係は対等だ。俺が間違った行動をしたら、お前が止めろ。お前の過ちは、俺が止める。」
『元々、運命共同体でしたが。』
「今後は、俺だけの都合を優先するなと言うことだ。」
『分かりました。さぁ、ルナが待ってますよ?お二人の愛に溢れた新生活が始まりますね。』
「よ、よせやい。ルナの返事はこれからだし!」
『微笑ましいですね。』
上の様子も気になるので、早々に帰宅することにした。その前に、この施設は、封印した方が良いだろう。
「ナノ、ここを誰も入れないように塞いでくれ。」
『わかりました。』
施設から出て、階段を上ると、また地面は隆起し、階段ごと土に埋まってしまった。
「さて…登るか…」
『キングに、そんなことはさせられません。あの壁をご覧ください。』
壁は微細な振動を繰り返し、あっという間に、長方形の空間ができた。
『さあ、お乗りください。』
「なんだこれ…」
その窪みに入る。高さも幅もぴったりだ。なんか、蓋をしたら棺桶みたいだな。
再び振動が起こると、ふわっと浮遊感を感じた。浮いてる?緩やかに上昇している。これ、エレベーターか?
『上の岩削り、足下に固めるという作業を、高速で行うことで、その空間はゆっくり上昇していきます。乗り心地はどうですか?』
「揺れも感じないし、悪くない。悪くないが、降りるときにもして欲しかったな。」
『先ほど思いついたので…。失敗しなくて良かったです。』
「失敗する可能性あったの?」
『そのまま埋もれてしまう可能性がありましたね。結果オーライです。』
「俺は安全に暮らしたいと言っただろ?」
ナノは、ちょいちょい俺を実験台にしてくる気がするが…、まぁ、見えない階段を上るよりいいか。
「しかし、このエレベーター遅いな…。上に着くのにどれ位かかるんだ?」
『8時間位ですね。少し岩が硬いです。』
「ナノ…、、、、階段で上がるから止めてくれ。」
『いけません。威厳をもってお待ちください。』
「…せめて、椅子をお願いします。あと、扉は無いのか?目の前が奈落というのは、居心地良くないぞ?」
『我が儘言わないでください。玉座は用意しますので。』
岩でできた、小さな丸椅子が用意された。立派な玉座ですこと…、堅くて尻が痛いぞ…
『スペースの関係です。エレベーターをこれ以上大きくすると、上昇スピードが更に遅くなります。我慢をしてください。』
ナノの仕事は詰めが甘い!
尻がえぐれるように痛み出した頃、ようやく地上に戻ることができた。時間は分からないが、すっかり夜更けになってしまった。
でも気合いを入れて出発したのに、日帰りで帰れてしまった。危ないことも無かったし、少し肩すかしだな。なんなら、最後のエレベーターが、一番辛かった…
ナノに、両軍の状況を訪ねると、国境線沿いに終結しようとしていた軍隊は、完全に居なくなり、国境の番兵すらいない。
「洗脳が解けた人達は、何か違和感を感じないのかな?」
『確証はありませんが、そうするのが当たり前だった、としか認識していないかと。』
「ふむ、そう言えば、ルナは洗脳されてなかったよな?なんなら軍を毛嫌いしていたし。」
『どうも王の魔法の効果が、人によって違うみたいです。魔法を使える人は、その傾向が強いようですね。』
「軍の魔法使い達は、人々の状況を、おかしいと思わなかったのかな?」
『その場の空気に流されてる人も居たでしょうし、軍所属の魔法使いは、高給取りらしいですよ。』
「でも、洗脳されていなかった者も、俺の魔法で軍事行動から離れた訳だよな?俺の魔法は、王の魔法から解放するだけじゃないのか?」
『元々、空気に流されやすい人達は、他の解放された人々の行動に流されただけです。』
「しかし、野心をもって軍に参加していた人や、軍の上層部とかはどうだ?」
『未だ戦争に対して、意欲的に動いている可能性は否めませんね。上層部は、戦闘を継続しようとするかもしれません…』
「そうなると、戦争は終結しないよな…?」
『響が戦争へのナノマシンの利用を制限しているので、例えば、ポーションを戦争目的にしようしても、ただの水になります。魔法も使えません。今までと同じ戦術は使えなくなります。
それでも戦争は続きますか?』
「続くんだろうな…。一旦様子をみよう。」
俺は独裁者になりたい訳じゃない。戦争を続けたい者達の命を奪うことは、ナノの力を使えば容易いだろう。
だが戦争犯罪者は、洗脳が解けた人々の手で、裁かれるべきなのではないか?
俺はただの人間だ。私利私欲に走るただの人間だ。そんな俺が、神の如き力を使うのは、おこがましいのではないか?
俺は、平和に過ごせれば、それでいいのだ。贅沢を言えば、隣に笑顔のルナが寄り添ってくれれば、それでもう満足だ。
さぁ戻ろう、彼女の元に。
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