5:核心への一歩と、告白
「さて、どうするか…。最前線で使おうと思ったが、有効半径が5メートルとは…」
『それ以上だと、響の脳が燃えます。』
「王の命令は、なぜそんなに広範囲に作用しているんだ?」
『調べてみたところ、メインサーバーが関連しているようですね。』
「メインサーバーは、動いてないんだろ?」
『メインサーバーは、ヴィンデミアと、ノヴァーレの国境の地下に、存在を確認しました。
メインサーバーのアクセスに必要なキーは、ヴィンデミア王国とノヴァーレの各王が持っています。』
「キー?鍵でも持ってるの?」
『それぞれの王が持つ、王錫がキーとなっているようです。王笏を持ち命令をだすと、メインサーバーを経由して、ナノマシンへ指令出されます。』
「メインサーバーがこの辺りの地下にあるってのも、なんかご都合主義的な物を感じるな…。」
『メインサーバーは、複数個存在していることを確認しています。データ欠損や、物理的な破壊に備え、お互いのサーバーがデータを同期し合う、分散型の冗長構造《RAIDシステム》をとっていました。』
「つまり?」
『本来は、メインサーバー同士で交流していて、障害があったら、相互にデータ共有して、バックアップしていた…みたいな?』
「あーー、まぁなんとなく…」
『個々のサーバーで、馬鹿な命令を出されても、他のサーバーから命令の修正が行われます。
しかし現在、地殻変動や、施設の老朽化により、サーバー間の通信は、壊滅的なダメージを受けています。』
「だからここの王は、やりたい放題できるって事?」
『そのとおりです。
王たちは、この命令を、王の持つ権限、王のみが使える魔法だと認識しているようです。』
「ふむふむ。して?」
『あまり理解していませんか?』
「日本語で頼む」
『まぁとにかく、今後の目標は、メインサーバーを探して、そこに響の厨二魔法を使います。すると一時的に、メインサーバーの権限は、響に移ります。
その間に、メインサーバーの書き換えを行ってください。
実際にそれを行うのは、私になりますね、響は厨二魔法を唱えるだけです。』
「オッケー分かった。書き換える内容は、俺が指示を出す。で、メインサーバーの場所は?」
『国境超えた時の谷の底から行けそうですね。』
「降り方は?」
『谷の渡り方と一緒です。』
「見えない階段か…」
「話はまとまりました?そろそろ晩御飯ですよ?」
「今行くよー」
ルナは早々に、話の理解を諦め、夕食を作っていた。
「国同士が衝突するまでのタイムリミットは?」
『1週間はないでしょう。谷底までは深度にして、800メートル程。そこから200m下にいった地点が目的地です。
谷底には、高濃度の魔素が溜まっており、人間には耐えられない濃度です。』
魔素の過剰な吸入は、体に悪影響で、場合によっては死に至る。
「魔素は、ナノマシンだよな?俺達は無事に辿り着けるか?」
『ナノマシンは制御しますが、濃度が高すぎますし、防御プログラムが存在するかもしれません。
100%の安全は保証できません。』
「分かった。今回ルナは留守番だ。ルナには俺から伝える。」
『了解しました。』
夕食を取りながら、今後の事を話した。俺は戦争終結の為に動くこと。その際、ルナには、待っていてほしいこと。これが終れば、平和が待っていること。
そして、これからの生活のことも話した。
「何故、私も連れて行ってくれないのですか?」
「今回は、危険を伴う。リスクを伴うのは俺だけでいい。」
「そんな、私だけ家でぬくぬくしてろと?私が居ても、役に立ちませんか?!」
「そういう事じゃない。俺は、ルナを危険な目に会わせたくない。君には、家で俺の帰りを待っていてほしい。そして、俺の事を、笑顔で迎えてほしい。」
「え、プロポーズですか!?」
「いや、違うけど…」
でも、俺はルナのことをどう思っている?考えるまでもないか…
「ルナ、俺は…明日も明後日も、1年後も、10年後も…いつまでも、君の笑顔を見ていたい。いつまでも一緒に居たい…」
ルナの手を取り、目を見つめる。
「…分かりました。返事が聞きたければ、絶対帰ってきてください。」
ルナは笑顔でそう言い、目には一筋の涙が溢れる。
そして、いつも通り食事を終え、いつも通り就寝した。
ルナの答えは、俺が役割を終えてから…絶対に帰る。
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