赤い手ぶくろ
黒いマントの孤独な盗賊が、獲物として狙った豪華な馬車で出会ったのは、赤い手ぶくろをはめた一人の幼い少女だった。
隠れ家で、少女は彼が宝を何のために集めたのかを問い、答えのない男に赤い毛糸の手ぶくろを編んで渡す。その温もりに触れた男は、長年の相棒であったナイフを暖炉に捨てる。
これは、一組の赤い手ぶくろが、冷酷な盗賊の孤独な生を終わらせ、多くの子どもたちと共に生きる「暖かさ」へと変えた、愛と更生の物語。
墨をぶっかけたように真っ暗な夜に現れたのは、黒いマントに黒い帽子、革の黒い手ぶくろをはめた男だった。
マントをめくり、腰のナイフを一瞥。
「さて、獲物はおらんかな……」
この姿と刃の光を見れば、どんな勇敢な番犬だって一目散に小屋へ駆け込む。
闇の中で、男は笑った。
カタカタ、カタカタ。
車輪が石畳を叩きながら、一台の馬車が近づいてくる。黒塗りの車体、四頭の馬、金属の車輪。間違いなく金持ちの馬車だ。
ロープで馬を転ばせ、御者を縛り上げ、馬車を止めた。
ところが座席にいたのは、赤い手ぶくろをはめた幼い少女がひとり。
荷台には地味な服がいくつか入っているだけだった。
「……値打ちのありそうなのは、この馬車くらいか」
少女を乗せたまま、男は山奥の隠れ家へ向かった。
少女は親から離れ、知らない家で暮らすはずだったらしい。
「おじさんのほうが面白そう!」と笑っていた。
隠れ家に着くころ、少女はぐっすり眠っていた。
男はそっと抱き上げ、ふかふかの布団をかけた。
どうして自分はこの少女を連れてきたのか、分からなかった。
今さら追い出したり、傷つける気にもなれなかった。
翌朝、少女は宝の山に気づき、目を輝かせた。
「こんなにたくさん集めて、どうするの?」
男は目をぱちくりさせた。考えたこともなかったのだ。
男は三日三晩、宝石と金貨を見つめて過ごした。
そのあいだ、少女は床に転がっていた赤い毛糸で手ぶくろを編んでいた。
小さな指が器用に動き、やがて完成した。
「これでおそろいだね!」
渡された手ぶくろは男には小さすぎた。
それでも胸の奥がふうっと温かくなった。
男は暖炉にナイフを放り込んだ。
火の粉が小さく跳ね、黒いマントの裾を照らした。
男は少女と馬車に乗り、一人ぼっちで暮らす子どもたちを集めてまわった。
そして古いけれど立派な城を買い、みんなで一緒に暮らした。
みんなおそろいの赤い手ぶくろをはめて。
冬の街では今も、赤い手ぶくろの子どもたちが駆け回っている。
お城の暖炉のそばのソファーには、黒いマントが静かにかけられている。
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