34話「未来への希望」
理想郷が完成してから3ヶ月後、待望の知らせが届いた。
「陛下!やりました!」
科学技術院の院長が興奮して飛び込んできた。
「完全に安定した次元の扉の製作に成功しました!」
「本当ですか!?」
ファンが立ち上がった。
「はい!今度は時間制限もなく、いつでも自由に行き来できます!」
ついに、健太郎と自由に会える日が来たのだ。
「すぐに実験してみましょう」
「準備はできています」
院長が誇らしげに答えた。
「新型の次元装置『永続の門』が完成しています」
時空神殿に設置された新しい装置は、前回のものとは比べものにならないほど洗練されていた。
「これが永続の門ですか」
ファンが感心して見つめた。
美しい銀色の枠で囲まれた扉は、安定した光を放っている。前回の不安定な光とは全く違い、確実性を感じさせる輝きだった。
「愛の力で起動するのは同じですが、今度は一度起動すれば永続的に機能します」
「それに、扉のサイズも自在に調整できます」
技術者が説明した。
「大きな扉も小さな扉も、必要に応じて作れます」
「すごい技術の進歩だな」
バハムートが感嘆していた。
「では、起動してみます」
ファンが装置の前に立った。
健太郎への愛を込めて装置に触れると、美しく安定した扉が現れた。今度は前回よりもずっと大きく、誰でも楽に通れるサイズだった。
「健太郎!」
扉の向こうには、やはり華蔵寺公園のベンチに座っている健太郎の姿があった。
「今度は時間制限がないから、ゆっくり話せるね」
ファンが嬉しそうに扉をくぐった。
「ファン!また来てくれたのか!」
健太郎が立ち上がって抱きしめてくれた。
「うん!今度は長い時間一緒にいられるよ!」
今回は時間に余裕があるので、健太郎の家にも招待された。
「懐かしい...」
ファンが感慨深げに家の中を見回した。
自分のベッド、お気に入りのおもちゃ、健太郎と一緒に撮った写真。すべてがそのまま残されていた。
「ずっと、お前の帰りを待ってたんだ」
健太郎が優しく説明した。
「毎日、この家でお前のことを考えていた」
「健太郎...」
ファンの目に涙が浮かんだ。
「俺も毎日健太郎のことを考えてた」
仲間たちも健太郎の家で温かいもてなしを受けた。
「皆さん、本当にありがとうございます」
健太郎が深々と頭を下げた。
「ファンを大切にしてくださって」
「当然です」
グロウが答えた。
「星牙は俺たちの家族ですから」
「ところで、健太郎さん」
シルフィアが提案した。
「私たちの世界も見てみませんか?」
「え?僕が?」
「はい。ファンちゃんがどんな素晴らしい世界を作ったか、ぜひ見ていただきたいんです」
健太郎は戸惑ったが、ファンの勧めで異世界を訪れることにした。
「すごい...」
犬国の美しい街並みを見て、健太郎は息を呑んだ。
「こんな平和で美しい場所があるなんて」
「ファンが作った世界です」
ドゥーガンが誇らしげに説明した。
「星牙皇帝陛下の偉業です」
「ファンが皇帝...」
健太郎が信じられない様子で呟いた。
「あんなに小さかったファンが、こんなに立派になって...」
街を歩いていると、人々がファンに手を振っている。
「星牙皇帝陛下!」
「お帰りなさいませ!」
「こちらは健太郎様ですね!お会いできて光栄です!」
人々の反応に、健太郎は驚いていた。
「みんな、ファンのことを本当に愛してるんですね」
「はい」
シルフィアが微笑んだ。
「ファンちゃんがいてくれるおかげで、私たちは幸せに暮らせています」
数日をかけて、健太郎は星牙神聖帝国の各地を見学した。
「すごいな...本当に争いがない」
多種族が仲良く暮らしている光景を見て感動していた。
「オーガと人間が一緒に働いている」
「エルフと魔物が友達になっている」
「みんなが幸せそうな表情をしている」
「これが、ファンの理想だったんです」
グロウが説明した。
「種族や出身に関係なく、みんなが愛し合える世界」
「素晴らしい...」
健太郎は心から感動していた。
「ファンは本当に素晴らしいことを成し遂げたんですね」
一週間の滞在の後、健太郎は重大な決断を下した。
「ファン、相談があるんだ」
「なに?」
「僕も、この世界で暮らしたいんだ」
「え?」
ファンが驚いた。
「でも、健太郎の世界には仕事があるし...」
「もう定年退職したんだ」
健太郎が微笑んだ。
「息子たちも独立して、僕一人だけだし」
「それに、ファンがこんなに素晴らしい世界を作ったなら、僕もその一部になりたい」
健太郎の決断を受けて、永住の準備が始まった。
「現代世界での手続きは済ませました」
健太郎が報告した。
「家も息子に譲りました」
「本当にいいの?」
ファンが心配そうに聞いた。
「もちろんだ」
健太郎が力強く答えた。
「ファンと一緒にいられるなら、どこでも幸せだよ」
城に健太郎専用の部屋も用意された。
「これで、毎日一緒にいられるね」
ファンが嬉しそうに言った。
「ずっと夢見ていたことが現実になった」
健太郎が異世界での生活を始めると、新たな発見の連続だった。
「魔法って本当にあるんですね」
初めて魔法を見て驚いていた。
「ドラゴンも実在するなんて」
バハムートとも仲良くなり、時々空中散歩を楽しんでいた。
「健太郎さんも、すっかりこちらの世界に馴染まれましたね」
シルフィアが微笑んでいた。
「皆さんが親切にしてくださるおかげです」
健太郎も幸せそうだった。
健太郎と一緒に暮らし始めてから、ファンの毎日は完璧なものになった。
朝は健太郎と一緒に散歩し、昼間は皇帝としての公務を行い、夕方は仲間たちと過ごし、夜は健太郎と一緒にくつろぐ。
「こんなに幸せでいいのかな」
ある夜、ファンが呟いた。
「当然だ」
健太郎が答えた。
「お前は世界中の人を幸せにしたんだから、お前自身も幸せになる権利がある」
「そうですよ」
グロウも同意した。
「星牙は幸せになるべきだ」
「これからどうしようか?」
ファンが仲間たちと相談していた。
「世界はもう平和になった。健太郎とも一緒にいられる」
「でも、やることはまだまだあるぞ」
ドゥーガンが提案した。
「次元技術をもっと発展させれば、他の世界とも交流できるかもしれない」
「それは面白そうですね」
シルフィアが興味を示した。
「いろんな世界の人たちと友達になれたら素敵です」
「そうだね」
ファンが同意した。
「愛と平和を、もっと多くの世界に広げていこう」
「それから、次世代の教育も重要だ」
バハムートが指摘した。
「星牙の理念を受け継ぐ若者を育てなければ」
「そうですね」
ファンが頷いた。
「俺がいなくなっても、この世界の平和が続くように」
実際、帝国各地で星牙の理念を学んだ若者たちが活躍し始めていた。
「みんな、とても優秀ですよ」
教育大臣が報告した。
「星牙皇帝陛下の教えを心から理解しています」
「よし、新しい目標ができたね」
ファンが前向きに言った。
「多次元世界への愛と平和の拡散」
「そして次世代の育成」
「やりがいのある仕事だな」
グロウが笑った。
「俺たちの冒険はまだまだ続く」
「そうですね」
健太郎も嬉しそうに言った。
「僕も、ファンの新しい冒険に参加したいです」
「もちろん!」
ファンが大喜びした。
「健太郎と一緒なら、どんな冒険も楽しいよ」
夜空を見上げながら、ファンは思った。
「俺、本当に幸せだ」
愛する健太郎と一緒にいて、大切な仲間たちに囲まれて、素晴らしい世界を築くことができた。
「これからも、みんなで一緒に新しい世界を作っていこう」
「ああ、みんなでな」
仲間たちも同じ気持ちだった。
「星牙一家の新しい冒険の始まりだ」
「僕も星牙一家の一員ですか?」
健太郎が嬉しそうに聞いた。
「もちろん!」
みんなが口を揃えて答えた。
「当然だ」
「大歓迎です」
「家族ですから」
星空の下で、新しい家族となった星牙一家は、未来への希望に満ちていた。
小さな犬の大きな愛が、ついに完全な形で実現した瞬間だった。
愛する人も、大切な仲間も、理想の世界も、すべて手に入れた。
そして、これからも続いていく新しい冒険への準備は整っていた。
「未来が楽しみだね、健太郎」
「うん、ファンと一緒なら、どんな未来も素晴らしいものになる」
希望に満ちた会話が、静かな夜に響いていた。
健太郎……ペットに養われている……
35話にまとまる話しじゃなかったよ!
なぜか35話に入れないとと思っていた……
後で書き直したいが読んでくれる要望はあるだろうか……
もっと長い話しになって後編ちょっと変わると思う。
需要があるようなら書き直したい。
評価が奇跡的に1000ptいったら書き直します。
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