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33話「理想郷の完成」

 時空神殿から犬国に戻ったファンは、これまでにない充実感に包まれていた。健太郎との再会は短時間だったが、その喜びは計り知れなかった。


「健太郎に会えたんだ...本当に会えたんだ...」


 城の自室で、ファンは感動を噛み締めていた。


「よかったな、星牙」


 グロウが嬉しそうに言った。


「健太郎さん、とても優しい人でしたね」


 シルフィアも微笑んでいた。


「あなたを大切に思う気持ちが、言葉の端々から伝わってきました」


「うん、健太郎は世界で一番優しい人なんだ」


 ファンの表情は輝いていた。


「そして、今度はもっと長く一緒にいられる方法を見つけるんだ」


 翌日から、帝国の科学者と魔法学者が総力を挙げて次元技術の研究を開始した。


「時空神殿の装置を詳細に分析します」


 帝国科学技術院の院長が報告した。


「安定した次元の扉を作るために、あらゆる手段を尽くします」


「どのくらい時間がかかりそうですか?」


 ファンが尋ねた。


「順調にいけば、1年以内には試作機が完成するでしょう」


「1年か...」


 少し長く感じたが、確実に健太郎との再会に近づいている。


「分かりました。よろしくお願いします」


 研究が進む間、星牙神聖帝国はさらなる発展を遂げていた。


「各地域間の文化交流がより活発になりました」


 文化大臣が報告した。


「星牙祭という統一祭典も大成功でした」


 星牙祭は、ファンの神格化を記念して始まった世界的な祭りだった。各地域の伝統文化が融合した、美しい祭典として定着していた。


「それから、教育制度も完全に統一されました」


 教育大臣が続けた。


「世界中の子供たちが、愛と平和の理念を学んでいます」


「素晴らしいですね」


 ファンが満足そうに頷いた。


「みんなが幸せに暮らせる世界になってきた」


 統一政府の効果で、技術革新も急速に進んだ。


「各地域の技術が融合して、驚くような発明が生まれています」


 技術開発長官のドゥーガンが興奮して報告した。


「空飛ぶ馬車の実用化、魔法と科学を組み合わせた医療技術、瞬間通信装置...」


「瞬間通信装置?」


「はい!世界中どこでも、瞬時に会話できる装置です」


 実際にデモンストレーションを見せてもらうと、確かに遠く離れた都市との会話が可能だった。


「すごいな...健太郎の世界の携帯電話みたいだ」


 ファンが感心した。


 最も重要な成果は、世界から争いが完全に消えたことだった。


「帝国内での犯罪発生率は0.01%以下です」


 治安大臣が報告した。


「そして、この数字もさらに減少傾向にあります」


「なぜそこまで犯罪が減ったんですか?」


「みんなが幸せだからです」


 シンプルな答えだった。


「仕事があり、家族がいて、未来に希望がある。犯罪を犯す理由がないのです」


 確かに、街を歩いていても人々の表情は明るく、子供たちの笑い声があちこちから聞こえていた。


 種族間の差別も、もはや過去の話となっていた。


「オーガと人間の結婚」


「エルフとドワーフのカップル」


「魔物と人間の友情」


 以前なら考えられなかった光景が、今では当たり前になっていた。


「本当に理想的な世界になったな」


 バハムートが感慨深げに言った。


「お前が描いた夢が、すべて現実になった」


「みんなのおかげだよ」


 ファンが謙遜した。


「俺一人では何もできなかった」


 経済面でも、帝国は空前の繁栄を享受していた。


「統一通貨『スター』の安定により、世界経済が活性化しました」


 財務大臣が報告した。


「失業率は1%を下回り、全地域で経済成長が続いています」


「貧困地域も大幅に改善されました」


 帝国の富の再分配システムが効果を発揮していた。


「どの地域も、最低限の生活は保障されています」


「それは素晴らしい」


 ファンが喜んだ。


「誰も飢えることのない世界...」


 環境問題も劇的に改善されていた。


「魔法と科学技術の融合により、クリーンエネルギーが普及しました」


 環境大臣が報告した。


「大気汚染、水質汚濁ともに、統一前の10分の1以下になっています」


「森林も回復傾向にあります」


 自然と人間の共生も実現していた。


「動物たちとの共存も進んでいます」


 確かに、都市部でも野生動物の姿を見ることが多くなっていた。


 芸術や文化も大きく発展していた。


「各地域の文化が融合して、新しい芸術様式が生まれています」


 文化大臣が興奮して報告した。


「星牙様をモチーフにした絵画、彫刻、音楽...素晴らしい作品ばかりです」


 実際、帝国各地で美しい芸術作品が作られていた。


「音楽も新しいジャンルが生まれました」


「『平和協奏曲』という、多種族が一緒に演奏する音楽です」


 オーガの太鼓、エルフの竪琴、ドワーフのハンマー音、人間の歌声が見事に調和していた。


 教育制度も理想的なレベルに達していた。


「世界中の子供たちが、質の高い教育を受けています」


 教育大臣が報告した。


「識字率は99.9%、基礎教育修了率も99.8%です」


「内容も充実しています」


「愛と平和の理念、多種族理解、技術と魔法の融合教育...」


 子供たちは、偏見のない心で様々なことを学んでいた。


「きっと、この子たちが大人になる頃には、もっと素晴らしい世界になるでしょうね」


 シルフィアが微笑んだ。


 医療技術も飛躍的に向上していた。


「魔法治療と科学医療の融合により、ほとんどの病気が治療可能になりました」


 医療大臣が報告した。


「平均寿命も統一前の1.5倍に延びています」


「それは素晴らしい」


 ファンが喜んだ。


「みんなが健康で長生きできるなんて」


 あらゆる面で、世界は理想的な状態に達していた。


「戦争なし、犯罪ほぼゼロ、完全雇用、環境問題解決、文化的繁栄...」


 ゲンクが総括した。


「まさに理想郷の完成です」


「ゲン爺でも、これで終わりじゃない」


 ファンが前向きに言った。


「もっともっと良い世界にしていこう」


「そしていつか、健太郎にもこの世界を見せてあげたい」


 そんな中、次元技術の研究も着実に進歩していた。


「試作機の第一号が完成しました」


 科学技術院の院長が報告した。


「まだ不安定ですが、以前より格段に改良されています」


「テストはできそうですか?」


「はい、来月には実験可能です」


 希望が現実に近づいていた。


 しかし、ファンの心には複雑な気持ちもあった。


「こんなに素晴らしい世界ができた」


 夜、一人で空を見上げながら思った。


「でも、俺の心の一番奥では、いつも健太郎のことを考えてる」


 世界の皇帝として、数億人の幸せに責任を持つ。しかし、個人としては、一人の愛する人に会いたい気持ちが一番強い。


「これでいいのかな...」


「もちろんいいんです」


 シルフィアが現れた。


「愛する人を想う気持ちがあるから、あなたは他の人の幸せも考えられるんです」


「そうかな?」


「そうですよ」


 シルフィアが微笑んだ。


「健太郎さんを愛するその心が、世界中の人を愛する力の源なんです」


「来月の実験が成功すれば...」


 ファンが希望を込めて言った。


「今度は、もっと長く健太郎と一緒にいられるかもしれない」


「必ず成功させよう」


 ディアボロスが約束した。


「我々全員で協力する」


「ありがとう、みんな」


 ファンは仲間たちに感謝していた。


「みんながいるから、俺はこんなに幸せなんだ」


 理想郷が完成した世界で、ファンは次の目標に向かって歩み続けていた。


 愛する健太郎との永遠の絆。それが実現する日も、もうすぐそこまで来ていた。


「健太郎、もう少し待って。今度は、きっと長い時間一緒にいられるからね」


 星に向かって誓うファンの声が、静かな夜に響いていた。


 完璧な世界と、完璧な愛。その両方を手に入れる日が、ついに近づいていた。

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