表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/32

その10 連絡先交換

 翌朝、俺は寝惚け眼を擦りながら、学校へと歩いて向かった。

 凜花はいつもの待ち合わせ場所に現れなかった。メッセージも返ってこなかった。

 凜花はちゃんと学校には来ていた。が、俺にはその日、話しかけてこなかった。女子の友達たちばかりと駄弁っていた。

 俺が話しかけようと凜花に近づくと、彼女はタイミング良く、その場から離れるか、そばの女友達に話しかけた。勝手にしろ、と思った。

 放課後、一人でトボトボと下校していると、見覚えのある人影が目の前に現れた。

 時枝璃々珠だった。やはり、黒いゴスロリのドレスを着ていて、相変わらず、彫刻のように無表情だった。

 「こんにちは」と時枝が言った。

 「あんたか」と俺は応じた。

 「例の話は?」と彼女が尋ねてきた。

 「聞いた」と俺は溜息混じりに答えた。

 俺は、昨日おとといの、天使とのやりとりを、かいつまんで話した。時枝は黙って、それを聞いていた。

 「一年後に死ぬ?」彼女はそうオウム返しした。

 「そうらしい」と俺は答えた。「あのオッサンの話によるとな」

 時枝は、目を細めて、俺を見つめていた。  「なんだよ?」俺は少しどぎまぎとした。

 「たしかに――」と彼女は目を細めたままで言った。「何か、黒い影が、あなたの背後に、うっすらと見える……」

 「黒い影?」

 「死の前兆よ」と時枝は言った。「あの天使は、あなたを脅かしているわけではないということ――」

 「もう腹は決めているんだよ」と俺は言った。

 「いい心がけね」と時枝は無表情に答えた。

 「とりあえず、電話番号を交換しましょう」時枝はスマートフォンを取り出した。

 「あいよ」と俺もスマホを、スラックスから出した。もうどうにでもなれ、という心境だった。



 それから二ヶ月ほどが経ったが、時枝からの連絡が入ることはなく、天使が俺の前に姿を見せることもなかった。

 凜花との仲は相変わらずギクシャクとしていた。あいつが怒っているのもせいぜい一、二週間くらいだと思っていたのだが。これまでだって、喧嘩は何度もしてきたけれども、大抵の場合は、彼女は三日もすればケロッとしていたのだ。

 そのまま夏休みに突入してしまった。俺は帰宅部で、凜花とは疎遠になり、かつ友人たちとは遠距離で会うのが億劫だったため、暇を持て余して、ゲームばかりをしていた。

 いくらキャラクターを一生懸命育て上げても、いずれはそのゲームをやらなくなるのだから、時間と労力のムダだよなぁ……とか雑魚敵を倒し、経験値を集めながら考えていた。

 ならゲームはやめて、勉強するか?あるいは筋トレでもするか?とも思うのだが、俺だって最終的には死ぬのだから、ゲームのキャラを育てるのと、結局は同じことだとも思った。

 ただ、自分を育てるのならば、その能力が実社会で活きるのだから、ゲームをするよりかはまだマシなんじゃないだろうか? ゲームのプロや、ゲーム実況のユーチューバーを目指すというのならば、また話は変わってもくるのだろうが……。

 そんなことをぼんやりと考えながら、ある種の虚無観に捉えられながら、キャラクターを広大な平原で走らせていると、不意に俺のスマートフォンが震え始めた。

 「もしもし?」と俺は言った。

 「指令が入ったわ」と時枝が言った。「例の天使からのね」

 とうとう来たか、と俺は息を飲んだ。

 「内容は――」と彼女が言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ