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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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治療開始 17

 私の気持ちが少し落ち着いたように周りから観られたようで、主治医の佐々木が再度口を開いた。

「それで先ほどの質問ですが、体調はいかがですか?」

「本当に感じていることを言っていいですか?」

「もちろんです。そのことを伺いたいんです」

「お陰様で良い方向に向かっていますとお話しできれは良いんですが、残念ながらそういう感じではありません。今、みんながいるし、わざわざこういう場を設定したのは、何かあるんでしょう。私も子供じゃないつもりだから本当のことをおっしゃってください」

 私はまっすぐ主治医の目を見ていった。

 その雰囲気に改めてみんなの表情が引き締まった。それは私の強さについてだったのが、これから告げられる話の後は分からない。ただ、私は知らなかったが、他のみんなは現在の私が癌であることを知っている。だからこそ、それを告げられた時の私の反応を心配していた。いくら気丈でも、さすがに癌と告げられたらどんなに心が落ち込むのでは、ということを懸念したのだ。

 主治医も私の雰囲気に押されたのか、どう説明しようかと言い淀む感じがしていた。何度も同様のシーンを経験しているはずだが、未来がある高校生にその希望を打ち砕くような話をしなければならない、という思いが言葉を選ぶ、ということをさせていたのだ。

「先生、私の本当の病気、重篤なものなんですか? 私はウェルナー症候群ということは知っています。それでも私、弱音を吐きませんでした。周りのみんなをこれ以上悲しませたくなかったからです。でも、今、言います。私、辛かった。何で他の人と同じ青春時代という二度と訪れない時期を送れないのか、ということです。夢があります。他の人と同じように青春を楽しみたかった。でも、こんな容姿の私にそれができますか? 今、ここに坂本君がいます。先ほどの話では坂本君の将来の夢のこととも関係があるからと取れる話でしたが、私のことはそのための経験ですか? ・・・こんな状況だから本音を言います。学校でのこと、そして今、毎日のように見舞いに来てくれている坂本君のこと、好きです。私の短い人生で初恋と呼べるかもしれません。坂本君には迷惑だろうけど、私一人の心の中にしまっておければと思っていました。こんな状況じゃなかったら、黙っていました。私、変ですか?」

 みんな言葉を失い、静寂が部屋を満たした。そんな中、坂本が口を開いた。

「・・・高野さん、ありがとう。単にかわいそうといった程度の感情ではここにいないし、しょっちゅう見舞いに来ることもない。さっき高野さんが言ったように、大学入試のことを考えたら志望校から考えて、今から勉強しなければならないと思う。でも、僕の心の中でも高野さんの存在が大きくなっている。だから僕にできることがあれば支えたいと思っている。ここにいるのもそういう意味からだ。最初は確かに、弟のことと重ね合わせて考えたところもあった。でも高野さんの場合、ウェルナー症候群という特殊な病気にもかかわらず、それをおくびにも出さず、明るく生きている。僕はそこに惹かれている。そして今、高野さんの本心を聞いた。これは同情というレベルではなく、改めて自分の本心ということでここにいることを確信した。だから、高野さん、僕を信じて」

 坂本の一生懸命の言葉に私は涙があふれた。それは部屋にいるみんなも同じ思いだった。

「みなさんのお気持ち、分かりました。では、私からもお話しします」

 主治医は私と坂本の話を聞いて、話を長引かせても良くないと判断した。


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