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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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両親揃って病院に

 次の日の朝、私が朝食のためにダイニングにやってくると、両親がそこにいた。いつもなら父は出勤している時間なので、私は不思議に思った。

「お父さん、どうしたの? 会社に行かなくていいの?」

「あっ、昨日言っていなかったっけ? 一生懸命やっていたプロジェクトが一段落したので、担当者には1日休暇をくれたんだ。だから今日、俺は休み。家で少しのんびりさせてもらうよ」

「そうか、お疲れ様。昨日、何も聞いていなかったのでびっくりした」

「ごめんごめん。ところでさくら、お前、今日は宿題か?」

「まだ夏休みは十分あるからね。今日は翔子と会うことにしているの。学校が違うので普段なかなか会えないから、この夏休みの内に会うことにしたの。だから食事の後、出かけるね」

「何時ごろ帰るの? 遅くならないようにね」

「うん、分かっている。夕方には帰るつもり。

「そうか、楽しんできなさい。お互い、いろいろ話したいことがあるだろうからね」

 父が優しそうな顔で言った。朝食は簡単に済ませ、私はすぐに家を出た。

 母はそれを確認した後、病院に電話をし、午後に主治医の先生に2人で訪れ、改めて話を聞きたいと予約を取った。

 午後2時ということになった。

 待合室で待っていると約束した時間に呼び出しがあった。父と母は一礼して主治医の前に座った。

「それでご主人にお話しされましたか?」

「はい、昨晩、さくらが休んだ時に話しました。でも、まださくらには何も言っていません」

「そうですか」

「私も直接お話を伺い、さくらにどう話を切り出そうかと思い、やってきました。内容的には分かっていますが、又聞きでないほうが言葉に説得力が出ると思いまして・・・。またさくらに心の負担をかけたくないので、その点、先生とも打ち合わせをした方が良いのではと家内と話しました。だから今日は会社を休んで伺いました」

「なるほど、デリケートな部分がありますからね。私も担当させていただく以上、全力で当たりたいと思いますが、ご両親には私たちではできない心のケアをお願いすることになると思います。そういう意味できちんと話をさせていただいた方が良いと思います」

「それで現在、分かっているところで結構ですが、どういう状態なのでしょう」

「癌の疑いがあることは血液検査で分かっているのですが、詳しい検査をしないと詳細は分かりません。だから検査入院をお薦めしたのですが、結果次第ではそのまま治療のための入院になるかもしれません」

「そこなんです。私が昨日、家内から聞いた時、その時のことを考え、もしそうなった時、さくらに何て言えば良いのか、と悩みました。検査入院だけということであれば、以前にも経験がありますし、夏休みを利用して再度行なう、ということで納得してもらえると思うのですが、検査の後、そのまま治療のために入院となればさくらは精神的にショックでしょう。ただでさえ、同年代の娘との違いを背負っていますので、これ以上負担をかけたくないんです」

「親御さんの気持ち、分かります。私にも子供がいます。置き換えて考えた時、同じ親として思うことは一緒だと思います。こういう仕事をしていると、希望を持ちつつも、現実を見ます。同様のことに直面したご両親の様子もたくさん見てきました。だからさくらさんやご両親のことも分かるつもりです。これまで何かあってもたくさんの事例の一つでしょう、といったことをおっしゃる方もいらっしゃいましたが、私たちも感情がある人間です。しかも私にも子供がいますので、高野さんのお気持ちも分かるつもりです。そのことを前提でお話ししますと、もしそのまま入院ということもあり得るということを事前に告げられ、幸い今、夏休みの期間中だから学校の勉強の進み方にあまり支障はない時期ということで、2学期を元気に迎えられるようにしっかり治しましょう、ということで私のほうからもお話しします。進行状態にもよりますが、ウェルナー症候群というベースがある関係で、難しいところもあるかもしれませんが、一緒にやっていきましょう」

 主治医は2人の目をしっかり見て、力強く言った。その言葉に両親は首を縦に振っていた。

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