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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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高校入学 2

 そんな私の嫌な気持ちは関係なく、高校初日のお決まりの流れは続いていく。

「これから各自、自己紹介をしてもらう。2年に進む際、進路によりクラス替えを行なうが、今年1年は同じクラスメートになる。仲良くなるためにも自分を知ってもらえるように話してください」

 出席番号順で自己紹介が続き、私の番になる。何故か視線が集まっている気がする。特に対応が悪かった天田美津子という生徒の視線が強かった。

「私は高野さくらと言います。隣町の平和台中学校から来ました。お友達をたくさん作って、楽しい高校生活を送りたいと思います。趣味はありきたりですが読書です。よろしくお願いします」

 無難な自己紹介のつもりだったが、美津子からすかさず野次に似た言葉が発せられた。

「おばさんの友達なんて無理、無理」

 その言葉にクラス中が笑いに包まれた。心無い言葉に私は一気に落ち込んだ。私はその言葉を発した美津子のほうに視線を向けたが、ニヤニヤしていた。たった一言でこんなにも心が傷つくものだということを知った。

 この時、担任も何も言わなかった。ここで一言注意してもらいたかったのだが、私はここでクラスの中での孤立を感じた。

 だが、そのような嘲笑にも似た雰囲気の中、自己紹介の際、爽やかな印象だった坂本敦という男子生徒が突然立ち上がり、クラスの中を見渡して大きな声で言った。

「失礼なことを言うな。もし、自分が言われたら嫌な気分になるだろう。言う側は感じないかもしれないが、逆の立場で考えろよ。もう俺たち、高校生なんだ。言って良いこと、悪いことぐらい分かるだろう」

 思いがけない言葉だった。このクラスに私の味方がいた。救われたと思った。落ち込んでいた私の心が一気に明るくなった。まだ自己紹介の最中なので、直接敦にお礼を言うことはできないが、初めて顔を揃えた場で勇気ある発言をした敦に心の中で感謝した。

 生徒からの発言の後だったが、担任からもクラス全員に話があった。

「これから一緒に勉強していく仲間を変な風に言うことは止めなさい。高校生活を充実してくためにも、仲良くやってほしい。坂本、勇気ある発言、ありがとう」

 坂本と担任の言葉にクラスは静まり、問題発言をした美津子はバツが悪そうな顔をしていた。

 自己紹介が終わり、休み時間になった時、私は坂本のところに行き、先ほどのお礼を言った。

「さっきはありがとう。おかげで助かった」

「いや、俺もさっきの様な言葉は嫌なんだ。弟が小児まひにかかり、身体に変形がある。学校でそれをからかわれたことがある。とても許せなかった。高野だっけ、何か言われても気にするな。人の気持ちが分からないやつがいるけど、少なくとも俺は分かるつもりだ」

 敦のその言葉を聞き、私は心強い味方ができたと心の中で喜んだ。

 だが、その様子を見ている美津子は数人の女生徒と面白くなさそうな顔で何かつぶやいていた。


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