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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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高校生活 1

 退院した次の日から学校に登校した。数日しか空けていないのに随分懐かしい感じがする。

 クラスのみんなは私が検査のために入院したことを知っている。だから私が教室に顔を出した時、いろいろ声をかけてくれた。その中には美津子もいた。

 顔を合わせた時、何か言われるかと危惧したが、検査とはいえ入院後の登校なので、精神的なストレスになるようなことは何も言わない。

「退院、良かったね」

 むしろ喜んでくれるような言葉だった。意外だった。嫌味の一つも言われるかと覚悟していたが、そんなことはなかったのだ。

 坂本もやってきた。

「ちゃんと戻れて良かった。これ、欠席していた時の授業のノート。まだほとんど授業は進んでいないから、これを見ればどういうことをやったか、すぐに分かるよ。クラスのみんなで手分けして作った。すぐに取り戻せるはずだ」

 思わぬ話に私は涙腺が緩んだ。

「おいおい、俺が泣かせているようじゃないか」

「ごめんなさい。みんなの気持ちが嬉しくて」

 そういう話をしている時、担任が教室にやってきた。

「おっ、高野。退院したか。おめでとう。今日からやっと高校生活が始まるな。みんな、仲良くやっていこう」

 この後、時間割通りの授業が始まった。私にとって初めて顔を見る先生もいる。そのため名前も覚えてもらっていない。ぎこちない感じでスタートした授業もあったが、内容は中学時代よりも高度だ。特に数学でそれを感じた。初めて教室で開く教科書はインクの匂いも新鮮で、内容もよく読まなければ授業の話が頭に入ってこない。帰ったら、もらったノートをしっかり読み、早くみんなに追いつこうと心に誓った。たった数日のことなのに、後れを感じたわけだが、まずは勉強に付いていくことを最優先課題とした。

 そういう感じで1週間ほど過ぎた。

 教科によってはまだ今一つ頭に入ってこないこともある。近くの同級生に尋ねることもあるが、坂本に尋ねることもあった。

 最初の頃はそうでもなかったが、そのようなことが続くと美津子の表情が違ってきた。

 退院直後はさすがに控えていた悪口が、少しずつ復活してきたのだ。

「高野さん、もう学校の授業にも慣れた頃でしょう。いつまでも坂本君に話しかけるのは迷惑じゃないかしら」

 ある休み時間にかけられた言葉だ。確かに、何かあると坂本のところに話を聞きに行っていた。それが美津子の癇に障ったのだろうが、私としてはクラス委員長ということで聞いていたつもりだ。

 入学の時から感じていたが、私が坂本に話しかけることに対する妬みがあったのかもしれない。別の見方をすれば、美津子は坂本のことが好きなのかもしれない、と思うようになった。だから、つい口が滑ってしまった。

「天田さん。あなた、坂本君が好きなの? 私が話しかけるのが気に入らないんじゃないの?」

 美津子にとってはストレートな表現だった。その瞬間、美津子は凍り付いたような状態になり、クラスの空気も一変した。

 その直後、美津子は顔を真っ赤にして私の頬を平手で叩いた。

 予期していない行動に、私は転倒した。

 その時、変な手の着き方をし、骨を痛めた感触があった。私はその部位を押さえ、「痛い、痛い」と叫んだ。

その様子を見た美津子は私に言った。

「オーバーなことを言わないで。私はちょっとビンタしただけよ。バランスを崩したくらいで痛いなんて言わないで。私が骨折させたような感じじゃない」

 私たちの周りにクラス中の生徒が集まってきた。私の様子を見た坂本は肩を貸し、言った。

「保健室に行こう」

「坂本君、高野さんは私を悪者にしたいからオーバーに言っているだけよ」

「でも、こんなに痛がっている。保健の先生に診てもらおう。立てる?」

「ありがとう」

 私は坂本の肩を借り、保健室へと行った。


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