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お母さん、私、恋したよ!  作者: 藤堂慎人
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高校入学 1

「今日から高校生か。青春、楽しむぞ」

 私がそう思いながら高校に進学した。今は高校1年生。

 中学3年生の時、受験学年ということで勉強に明け暮れていた。志望校がある、そこに受かりたいという思いで一生懸命勉強した。

 その甲斐あって無事合格したのだが、入学初日、私は周囲から好奇の目に晒された。

「あの子、本当に新入生? 随分老けた印象ね」

「まさか高校浪人?」

 私にとっては思いもよらない言葉だった。

 中学時代、そういうことを言う人は誰もいなかった。

 でも、鏡を見る時、周りよりも年上に見える。よく言えば落ち着いている、大人っぽいということだろうと自分にも言い聞かせていた。

 周りも受験学年ということで、人の悪口を言う余裕がなかったのかもしれないが、それだけでなく仲の良い友達にも恵まれていたのだ。本音で語れるから悩みは相談できるが、人に対して悪口などは一切言わない。だから受験の悩みについてはお互いに励まし合う状態だった。

 特に仲の良かった友達に翔子がいる。頭も良く、一緒に勉強している時は教えてもらったりもした。

 その翔子は一番の進学校に進んだ。私はもう少し努力すれば行けたかもしれないが、ギリギリで合格した場合、勉強に付いていくのが大変とも聞いていたので、校風などで選んだ。それが今の学校なのだが、周りはどうして私のことを変な目で見るのだろう、ということを感じた。

 教室に入り、クラスメートと顔を合わせる。変な目で見ていた子も同じクラスだった。

 この時点で正式に席は決まっていないので、各自好きなところに座っている。そこに担任の教師がやってきた。

 教卓に立ち、まずはお決まりのセリフが出た。

「みんな、合格おめでとう。このクラスの担任になる大岡だ。よろしく頼む。まずはきちんとみんなの席を決めないといけないが、あいうえお順で決められた出席番号で割り振られたところに座ってもらう」

 ということで担任は番号とそれに基づく席を指定した。私は高野さくらというので真ん中くらいの番号だった。その指示に従い、指定の席に座った。

 この学校は共学だったので、クラスの男女比は同じくらいだ。なるべく男女が上手く並ぶように設定されたが、出席番号の関係で私を変な目で見ていた子がそばに座った。

「初めまして。これからよろしくね」

 私には何の他意も無いので普通に挨拶した。しかし、相手の対応は良くない。返事もないのだ。そして言い放った言葉がひどかった。

「私、おばさんの友達、いらない」

 これまで聞いたことがないひどい言葉だった。高校初日からこれか、という残念な思いが私の心の中で広がった。

 確かに最近、鏡を見ると年相応に見えない自分を感じていた。でも、それは受験勉強の疲れが顔に出ているのだろうというくらいに考えていた。実際、母にそれとなく相談しても同じような答えだったし、受験が終わった後、翔子と会った時にも私の容姿について何も耳にしていない。

 だからこの言葉を聞くまでは、特段、気にしていなかったのだ。


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