魔界イチゴのケーキは絶品だったのですわ
「うむ、やっぱり魔界イチゴのケーキは美味い!」
そんなに? ケーキもお茶も好きだけれど、推しの意外な好物&ライブ食事映像に夢中で全然手をつけていなかった。私も真似して、ケーキの上の大きなイチゴをフォークで刺して、持ち上げる。
色合いは普通のイチゴより黒っぽいし、粒も大きいけれど、普通に美味しそう。齧ってみると……絶妙な瑞々しさと酸っぱさと甘さで驚いた。
「おいしい!」
それぞれの要素が三位一体のおいしさ! クリームもスポンジもフワッフワのあまっあまで素敵なんだけれど、イチゴをアビス様が最後の楽しみにとっておくのもわかる。
「そうだろうそうだろう! ……しかしお前は、イチゴからいきなり食らうのだな」
「あっ、何か作法に問題がございましたかしら!?」
乙女ゲーではわけのわからない事でバッドエンドフラグが立つこともなくはない。でもアビス様のおいしそうな顔を見てたら真っ先に食べたくなっちゃって。
「いや、俺様でも出来ない事をバクバクッとやってのけるその豪胆、気に入ったぞ! やはりお前は面白い女だ!」
正解選択肢だったみたい。っていうかアビス様のルートなんて最初から存在しないから、選択肢もなにもないか。こんな可愛い人だなんて、ゲームを何周してもわからなかったものね。
「アビス様と~」
「お客人~」
「なかなかいい感じ~?」
去っていったと思ったら物陰に潜んでいたらしい、三人組の女の子達がフワフワ周囲を漂って冷やかしてきた。嬉しいけど恥ずかしい……。
「こ、こら貴様ら、下らん事を言う暇があったら食器を片付けろ!」
「はいはーい」
「は~い」
「いやっは~い」
黙ってしまった私にアビス様も気まずいものがあったのか、偉そうな感じに命令してたけど。あんまり威厳あるオーラは出せていないみたいだった。