お庭デート(わたくし談)ですわ
夕食の後、いつものようにお城の庭で、魔法を披露。
学園で習うような魔法は集中して呪文を唱えて……と良くあるファンタジーらしい動作が要るけど、この傘を出す変な魔法だけは、特に意識しなくても出せる。
「ハッハッハッハ、相変わらずお前の魔法は面白いな、ソフィア」
「そ、そうですの?」
面白がられてるだけとはわかっていても、推しが嬉しそうだと気分がいいので、サービスしてバンバン出しちゃう。お庭が傘で散らかる。魔力が残ってる限りはいくらでも出せそうだけど、あんまり意味はなさそう。ちなみに一定時間経つと消える。
「それで、アビス様。何かわかりましたか?」
「フッ、この俺様を誰だと思っている? 魔の王と書いて魔王と言うのだ! そんな分析は朝飯前だ!」
アビス様がシリアスな顔をしている……! 最近可愛いとばかり思ってたけど、やっぱりキリッとしてるとカッコいいわ!
「……と言いたいとこだが、さっぱりわからん」
思わず古典的にズッコケた。
「どうした急に転んで! 無理をさせ過ぎたか!?」
「い、いえ……」
ギャグのリアクションを大真面目に心配されるとこっちも困るなあ……でも手を差し出して起こしてくれるアビス様優しい。
「まず魔法というのは、魔力さえあればなんでも出せるというものではない。地水火風、闇光。自然界のエネルギーを魔力と引き換えに引っ張り出すものだ」
ドレスの裾の土ホコリを払ってくれながら、アビス様が説明してくれる。よく聞く感じの魔法設定。なんだけど、ゲーム内でこの説明もろくになかったような……。どれだけ開発現場混乱してたのかな……。
「対してお前のはどれでもない物質を出す。これがわからん。レオナルドの奴は剣を出していたが、アレも光のエネルギーを剣の形にしているというだけで、剣そのものを出しているというわけではない。わからん。謎だらけだ」
立ち上がったアビス様が、頬に触れた。優しく払うような動きを見ると、まだ土がついていたらしい。
「だからこそ、知りたくなるのかもしれんな」
微笑みながら、真剣な赤薔薇の瞳が私をじっと見ていた。瞳の宝石を欲しがるみたいに、私もアビス様を見上げてしまう。
アビス様の美しいお顔がこっちに近づいて来てるような……!? ああっ、赤薔薇の瞳が閉じられて……!! わ、私も「推しのドアップだぁ〜♡」とか思ってないで目を閉じるべきかしらー!?