オークの料理長さんには信念があるのですわ
「料理長、つまらん冗談はやめるウサ」
「ハッハッハ、悪かったブヒ。魔物の料理人たるもの、まずこのギャグをやれと親父の教えでね」
ユーモアのある方なのはわかったけど、包丁持って言わないで欲しかった……!!
「直接会うのは初めてだけど、いつも返ってくる皿がカラで良い食べっぷりだから、ちゃーんとおもてなしがいのある客人として認識してるブヒ」
「お恥ずかしい……」
ラビほど露骨じゃないけどここのご飯美味しいから……! この間の魔界イグアナの丸焼きも結局普通に食べちゃったし。
「いいや、良いことブヒ。先代魔王専属の料理長だった親父も行ってたブヒ。『人間どもめ、さらわれたからって食事も喉を通らぬとは何たる不様さブヒ! そんなんじゃ助けに来た王子様にかわらぬ肌ツヤの笑顔で微笑む事も、ここから逃げ出す為の体力もつかないブヒ!』と」
「「「「「「「「「「そーだそーだ!」」」」」」」」」」
「怒り方がおかしいですわ!」
確かに丁重な扱いされてるのに無駄に悲劇ぶって体力落としてたら、馬鹿みたいだけど! ラビといい料理長の親父さんといい、やっぱりさらわれた女は王子様の救出を待つか逃げるか抵抗するのが義務なのかしら? ご期待に添えなくて悪いけど、特にそんなつもりないし……!
「いつも美味しいお食事をありがとうございます」
「いいって事ブヒ。それが仕事ブヒからね。せっかくだから今日は部屋じゃなくてこっちで食べていくかブヒ?」