ガイコツ騎士団長さんですわ
騎士団長さんというのは、ここに来た時に見かけた、ガイコツ兵士さん達の中で一番偉い人の事だった。お城の周囲、中庭を見張っているガイコツ兵士さん達の中に、ラビみたいな獣人系兵士がポツポツ生えた野花みたいに混じっている。
「ようラビ、カワイイ見た目だからってお嬢さん専属の見張りに指名されてから、しばらくこっち顔出してなかったけど元気か?」
「ニンジンやるぞー」
「カリカリコリコリボリポリ……」
ああ、ガイコツさん達にラビが餌付けされている! ウサギ!! 私も餌付けしたい……。
「ワシの名前はボンボーン。この城の警備のまとめ役をやっております。以後お見知りおきを」
腕が六本ある騎士団長さんが、うやうやしくおじぎをしてあいさつしてくれた。胸に腕を当てる時、当然だけど三本全部同じ動作をしてるのが面白い。ここのホネホネさん達は、なんとなくマンガのデフォルメっぽい顔つきだからあんまり怖くない。
「しかしワシから一本も取れなくてピィピィ泣いていた坊っちゃんが、こんな美しいお嬢さんを連れて来るとは」
「まぁ、アビス様にも可愛らしい時代があったんですのね」
なんとなく、タマゴの殻を被って泣いている小さなアビス様を思い浮かべる。ピヨピヨ。
「『本気でやれ!』って言うからその通りにするんですが、負けると必ずピィピィ泣くんですよ。それでも毎日毎日挑みかかって来る根性は認めるんですがね、なかなか泣き止まないからなだめるのが大変で。どうしても泣き止まない時の特効薬はやっぱり「魔界イチゴのケーキ」でしたな。うちのシェフ特製のケーキを見せられると、パッと笑顔に変わったものです」
へえ、そんな年季の入った好物だったのか……。
「年寄りの長話をしてしまいましたな」
「いえ、楽しいお話をありがとうございます」
「いいえ、でもそろそろ退散したほうがよろしいかと。あまり放っておくと、どこぞのウサギが兵士の誇りを全部捨てて、ペットと化してしまいそうだしね」
「カリコリポリポリ……」
振り返ると、ガイコツ兵さんたちにニンジンをもらって至福の表情のラビが、ただのウサギの顔で骨張った(文字通り)手に撫で回されていた。