魔王城探索ですわ
「普通囚われの女って言ったら、「ここから出しなさい!」ってしつこく見張りに訴えるとか、色仕掛けで油断させて逃げようとするとかするもんウサ。全くそういう要素がないから、部屋の中で死んでんのかと思ったウサ」
酷い言われよう……! お風呂もトイレも部屋に完備されてる至れり尽くせりだから、アビス様との朝夜二回お食事つきデート(だと私が一方的に思い込んでいたい)以外で外に出る必要が無くて……! こんなホテルみたいな部屋、私、ソフィアの実家でもなかったし! もちろん前世でもこんな神立地じゃなかったのだわ!
「ボクは魔界オオウサギのラビだウサ。アビス様不在時は、お前の部屋を見張ってろと申し付けられているウサ」
「部屋の外に自主的に出る発想がなさ過ぎて全然気づかなかった……のですわ」
「オメーやっぱちょっとおかしいウサ」
そうかもしれない……!
「そうね、ちょっとおかしかったから、このお城を見て回りたいと思って」
「なるほど、そう言ってごまかして、脱出の方法を探るウサね?」
「いえ全然、そんな気は全くないのだけど」
そういえば「特に帰りたくも逃げたくもない、そんな理由もない」という意志表示をまだアビス様にキチンとしていなかったかも。ここに住んで、傘魔法の研究に協力するのに異論はないとは言ったけど。でも「全然怪しくないです!」とか言ったら逆に怪しいの一緒で、言ったら逆に疑われるような気が。
「本当お前、変な奴ウサねぇ。別に行ってもいいウサよ」
「えっ、そんなあっさり?」
「その代わりボクも見張りとしてついていくウサ」
「ええ、どうぞ……というか心強いわ」
アビス様を信用してないわけじゃないけれど、命令が行きわたっていない部下とか、個人的に人間を気に入らない魔族もいるかもしれないし。そんな時、自分一人だと心もとない。
「それで、どこに行きたいウサか?」
大きなウサギが二足歩行でピョコピョコ前を歩いてるだけで正直かわいい……! ピコピコ動いてるしっぽにニヤケを隠せない!
「そうね……私よりラビのが詳しいと思うから、あなたのオススメで」
「うーん……キッチンに行くとシェフやコックがニンジン料理を分けてくれるけど、まだお昼前ウサから……騎士団長のところに挨拶でも行くウサ?」